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ここ10年間で人口が2万人も増加した流山市のシティセールスは、次のステージ「シビックプライドを育てる」へ
千葉県流山市のシティセールスの取り組みと成果
全国の自治体共通の課題として、人口減少、高齢化の進行、財政状況の悪化などがあります。転出者数を減らし、転入者数を増やす、そして長く住み続けてもらう、住まなくても定期的に交流してもらうためにシティプロモーションやシティセールスに取り組む自治体は2004年頃から増えてきました。例えば千葉県流山市では、共働きの子育て世帯(DEWKs:Double Employed With Kids)をメインターゲットに設定し、働きながら子育て・教育ができる環境の整備を進めてきました。主要駅に駅前送迎保育ステーションを整備して、子供の登園・降園の利便性を高めたり、「母になるなら、流山市」といったキャッチーな言葉で首都圏向けにPR広告を展開したり。その結果、2013年には30代後半・40代前半の人口が団塊の世代の人口を上回り、合計特殊出生率も1.49と、千葉県2位までに上昇しました。(参照記事はこちら)
ターゲットを絞ったマーケティング戦略
2005年から2015年の10年間で人口が2万人以上も増えている流山市。しかも年齢別人口で見ると、30〜40歳代の人口のボリュームが最も多く増えています。なぜこういった成果につながっているのか最も大きな理由として、DEWKsにターゲットを絞ったマーケティング戦略があります。2003年に基礎自治体として初めて「マーケティング室」を設置、シティセールス専任の職員を民間経験者からの公募するなど、今までの行政にはなかった新たな発想を形にしてきました。主な取り組みはこちらのサイトが詳しいので箇条書きで抜粋します。
- 首都圏主要鉄道駅へのPR広告掲出により、都心に通勤・在住する人にアピール
- DEWKS世代が「好む、遊ぶ、食べる」イベントを開催
- テレビ・雑誌等の媒体への情報発信
- フィルムコミッション運営による活性化と情報発信力の強化
- ウェブサイト、メール配信などによる情報発信
- その他、市独自のユニークな手法
子育て世代の人口増加の次の目標は、シビックプライドを育てていくこと
流山市で実際にマーケティング業務を担当されている、流山市メディアプロモーション広報官の河尻和佳子さんによると、人が住居を決めるまでには、まちをの存在自体を知ってもらうこと→実際に訪れてもらってまちを知ってもらうこと→まちのファンになってもらうこと→住む、という4つのステップがあるそうです。
人が住居を決めるまでには、4つのステップがあると思っています。まず1つめは、広告などを通して、市の存在自体を知ってもらうこと。2つめは、実際に訪れてもらって、どんな街かを知ってもらうこと。このきっかけ作りとして、さまざまなイベントを定期的に行っています。そして3つめはこの街のファンになってもらい、4つめで実際に「住む」という決断へと至る。この段階を念頭に置きながら、その時々の目的に見合った企画を展開しています。
知名度や認知度の向上もある程度進み、子育て世代の人口増加も少しづつ実現、次のステージとしてシビックプライドを育てていくことが目標、と河尻さんはおっしゃいます。外向けの施策で転入者を増やした後は、流山市で暮らす人々にまちを誇りに思って住み続けてもらうようにしていく必要があるわけです。
流山市も知名度や認知度の向上はある程度進み、第1ステージとして目標としていた子育て世代の人口の増加は少しずつ実現できてきました。その分、保育園の待機児童数が増加傾向にあるなど、新たに浮上した課題も山積みです。またこれからは第2のステージとして、シビックプライドを育てていくという目標があります。外向けに宣伝しているだけではダメで、流山市で暮らす人々の中に街を誇りに思う気持ちが生まれるように、市民の満足度を上げていく必要がある。
シビックプライドってなに?
では具体的にシビックプライドを育てていくために、どんな取り組みがあるのか。それはこちらの書籍が詳しいです。主な事例として、オランダのアムステルダムの「I amsterdam」キャンペーンがあります。
例えば、まちに他の都市と比較したときに際立つ建築物や歴史や文化があれば、それがまちのシビックプライドになりやすいですが、そういったキラーコンテンツに溢れたまちばかりではありません。アムステルダムも同じでした。わかりやすいランドマークが無いならば、アムステルダムに住む人、来る人をアイコン(都市イメージ)としたコンセプトにしようと考えたことで「I amsterdam」というキャンペーンフレーズが生まれました。(参照記事はこちら)
オランダ・アムステルダムは文化的にも経済的にもさまざまな良さというものを内包しているまちです。シティプロモーションとなると、「私たちは運河を持っています」とか「美術館がいっぱいあります」とか、持っている物を自慢しがちなのですが、実はそういうことをいくら自慢してもしょうがない、とアムステルダムは結論づけました。そして宣言したのが「I amsterdam」。まちを楽しいと思う人たちがいて、ここで事業を興そうという人もいる。そうした人やコト全てがアムステルダムの一部だ、ということで「あなたもアムステルダムを構成する一員。だから誇りを持って“I amsterdam”と言いましょう」というメッセージが込められています。
シビックプライドの育成によるシティプロモーションも
流山市の場合は、主に市外に向けたシティセールスにより定住人口を獲得し、その後は転出者の抑制や、市民一人一人がまちに対して主体的に関わっていくことを促進するためにシビックプライドを育てるフェーズに入っています。しかし、必ずしもシティセールス(またはシティプロモーション)→シビックプライドの育成、という順番である必要はありません。例えばアムステルダムの場合は、「I amsterdam」キャンペーンの後、市民や企業、市民団体が「I amsterdam」のロゴを使い始めることで拡散していきました。つまり、シビックプライドを武器にシティプロモーションを行っていくことで、まちの知名度・認知度向上やイメージアップ、定住人口や交流人口の増加、などにつなげていくという順番になります。ですのでシティプロモーションが先か、シビックプライドが先か、という議論は個別に具体的な議論がありそうです。
「シティプロモーションとシビックプライドと松戸のまちづくり(仮)」イベントを9/11(日)に開催決定
まだ詳細は未定な部分がありますが、今回の記事で扱ったシティプロモーションやシビックプライドをテーマに松戸のまちづくりと絡めたイベントを9月11日(日)に開催します。詳細は以下をご覧ください。
松戸のシティプロモーションとシビックプライドについて考えよう!トーク
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著者プロフィール
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funahashi taku
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空き家を魅力的な「まちのコンテンツ」に生まれ変わらせたり、社会的課題解決のツールとして活用したい、そんな観点から書いているブログ「空き家グッド」を運営しています。2015年6月からはMAD Cityのウェブメディア「madcity.jp」に記事をちょくちょく寄稿しています。
http://akiya123.hatenablog.com/
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