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インターンを終えて 武田秀星 後編 「今有る考え方に捕らわれすぎず、何かを発見するために実験を繰り返す」

今年4月中旬までの約5ヶ月間、MAD Cityの運営元・株式会社まちづクリエイティブのインターンとして働いてくれていた東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修士2年の武田秀星さんへのインタビュー記事後編です。前編は以下をどうぞ。

「空き家活用なのか、アーティストを集めたいのか、DIYを普及させたいのか、MAD Cityの全体としての最終目標がよくわからなかった」と武田さん。その後、MAD Cityの仕事に対する考え方はどう変化したのか、武田さんの将来の目標、インターンはどういった方にオススメかなど、MAD Cityスタッフの斉藤がお話を伺いました。

MAD Cityはよくわからない総体そのものでしかない

武田 いろいろなミーティングに参加させてもらいましたけど、どのようなことを考えながらまちづくりを行っているか漠然とわかりつつ、イベントに参加したときにそのアウトプットが見られるという流れは面白かったけれど、わからないことも多くあったんです。

斉藤 それは具体的にどういうこと?

武田 常に新しいことを色々やっている感じで、やっていることに一貫性がないように思えました。部屋を貸しているから不動産管理会社なのかなと思いきやそういうわけでもなく、周りの人たちの支援や企画サポートをして、「古民家スタジオ 旧・原田米店」でクラフトマーケットを、「FANCLUB」で映画上映会手打ちうどん会が開催されていたり…特にイベントは多種多様で全体としてどこに向かっているのかわからなくて。アートやDIY中心なのかなって思っていたけどそういうことでもないのかなと、最初の1ヶ月半くらいまでは思っていました。

斉藤 空き家活用しているけれどそれをゴールにしているわけでもなく、部屋を貸した後のことをメインに考えていて、人を集めているけれど、先着順ではない募集方法をしているし、その場によって集めたい人も変えているとか、最終目標がよくわからなかったということですよね。これってまちづクリエイティブ(以下、まちづ社)が本当によく言われている印象なんです。手広いけど実際何がしたいのとか、何を目指しているのがわからないとよく言われます。

武田 目的はよくわからないけれど一つ一つの手法は面白くて、参加している人たちは楽しそうで、なんとなくまちが良い方向に動いている気はします。

斉藤 MAD Cityは半径500mのエリアなので、その範囲を狭いと考えることもできるけれど、そこで活動している人たちの分、掛け算かつリアルタイムに広がるものだから、わたしは広大なまちだと感じています。全体を掌握することはまずできないし、一つのなにかにまとめるということもできたらすごいけど、困難だろうと考えています。イメージとしては、土を掘れば掘るほど答えが出てくると思っているわけではなくて、他の人が何らかの理由で手を付けていないところを掘ってみている。確証はなくても、柔らかそうなところや、水が出そうなところをとりあえず掘りに行く。掘って出たものをまた使う。実際何をしているかわからないだろうし、自分たち自身も予め用意してある答えはないということですね。

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武田 MAD Cityを他人に説明しづらいです。結局わからないみたいな。

斉藤 空き家活用も手法の一つで、そこから行われる総体こそが求めているもの。最初から計画して答えに向かっているわけじゃなくて、出会う人たちと一緒にあるものを利用していく感じ。といいつつもPR活動をするときは端々を切り売りしていかないといけないので、DIYやっているよとか空き家何件埋めたよとか、そういう出し方をしています。そういうひとつの面に興味持ってきてくれた方は、あれもこれもやっているのはわかったけど、なんでもっと空き家活用なりに注力しないんだろうとか思われていると思います。武田さんはわからないなりに手法が面白いとか、参加している人々が楽しそうとかを肌で感じてくれたんですね。

武田 それは本当そう思いました。イベント以外でも日常的にMAD Cityの事務所に寄ってくれる方とかもすごく楽しそう。コミュニティづくり、っていう意味ではすごい成功しているなと感じます。インターン期間中に色々な人と出会いましたし。たとえば昨年11月に開催されたオープンスタジオ「PARADAISE HOUR」では多くの参加者や関係者にたくさん会いました。

"アーティスト・イン・レジデンス「PARADISE AIR」で開催された「PARADAISE HOUR」。武田さんは一番手前です

“アーティスト・イン・レジデンス「PARADISE AIR」で開催された「PARADAISE HOUR」。ミラン・クンデラの小説「存在の耐えられない軽さ」の勉強会の様子。武田さんは一番手前です

トライ&エラーの仮説検証的まちづくり

斉藤 まちづ社では3、4ヶ月に1回位のペースで社員研修のために合宿に行って、日常業務を離れて大きなテーマを話し合っています。武田君も今年1月末に茅ケ崎での社員研修に参加したんだよね。

武田 はい。そのときのメインテーマはMAD City的まちづくり手法の共有だったと理解しています。そこでの話を聞いてMAD Cityしかり、まちづクリエイティブの手法がようやく見えてきた気がしました。代表の寺井さんは”仮説検証的まちづくり”をしていて、良い意味で”想定外のことが起きるようにしたい”と言っていました。

斉藤 まちづ社では運営拠点がMAD Cityの他にも、TAKEO MABOROSHI TERMINALSAIKYO DIALOGUE LINEなど複数になってきたとあって人員増強しないといけない時期にきています。そういう転換期にあって社員研修では、まちづ社ってどういう会社なのかってことをいつも自問自答しています。社内向けのややナイーブな話もありましたが、ここまで共有できたインターンは武田君が初めてかもしれません。まちづ社の事業の根底まで覗いてもらったような感じかな。そのときに出てきたキーワードが”仮説検証的まちづくり”というわけですね。これってどんなことだと理解しています?

武田 なんかもう研究みたいなレベルかなと思っているんですけど。過去にいろいろやっていた経験とか失敗や成功いろいろ含めて、じゃあ次はこういう手を打ったらもっと良いネットワークができるとか。とにかくトライ&エラーを繰り返していく中で、まちづくりのエッセンスを蓄積していく感じ。答えはやってみるまで分からないから、あえて明確な未来像を設定せず、とにかく今起こっていることに向き合ってまちを良くしていくということなのかなと解釈しています。今有る考え方に捕らわれすぎず、なにかを発見するために実験を繰り返す。MAD Cityにとっては仕組みづくりがDIYだったのだなと思いました。

あえて明確なゴールを設定しない”MAD City的まちづくり”について理解が深まった社員研修。

あえて明確なゴールを設定しない”MAD City的まちづくり”について理解が深まった社員研修。

斉藤 DIYの言葉の定義自体も変わった?

武田 建築でしか考えていなかったので広がりました。寺井さんは”クリエイティブな自治区をつくる”とか言っていましたけど。まちの仕組みから何から全部自分たちでつくるみたいな感覚なのかなと途中で思ってきました。

斉藤 まるごと手作りでその場その場で考えてってことだね。DIYって、最初から設計図を決めてやっているだけじゃなくて、やりながらわかってきたことを取り入れたり、あとでちょっと直したりとか、そういうことが多いと思う。それをまちづくり全体でやってるのかもしれないね。

武田 その一つに建物のDIYがあるってことなんだなと思ってから、しっくりきました。

斉藤 他のエリアのまちづくり事例を参考にはするけど、そのまま取り入れるってことはほとんどしていなくて、その場その場でここにいる人とか、ここで起きてることってのを取り入れているっていう発想もDIY的と言えるかもしれません。

武田さんの将来の目標

斉藤 来年卒業ですが将来はどんな仕事に就きたいと思っていいますか?

武田 就活はハードだけじゃなくソフトも一緒にデザインできるデベロッパーを考えています。設計事務所やゼネコンはハードだけ作るっていう側面があるし、発注受注がしっかりしすぎちゃっている。ハードしか扱えないのはなんか違うなと思っていて。その点デベロッパーは建築の使われ方まで最初から決めてトータルにコントロールできる仕事なので、今はそっちを考えています。

斉藤 インターンに来る前と後とで、考え方は変わっていたりするのかな?

武田 インターンに来てからある某大手デベロッパーの評価が上がっています。アートとかすごい積極的にやっているのことと、本当の意味でまちづくりをやっているのはデベロッパーの中でこの企業だけだと思うので。ビルばっかりやっているイメージがありますが、定期的にイベントやってコミュニティをつなげたり、そういうこともちゃんとやっている。MAD Cityのインターンでそういうところを見る目線ができてきました。

斉藤 就職してどんな仕事したい?

武田 建てるだけじゃなく、どう使われかまで決められる仕事がしたいです。設計だけじゃなくてタウンマネジメントとか。まちにベンチャー企業の誘致したりとか。

斉藤 将来そういうところで一緒に仕事できるといいね。パートナーが必要になったときは、思い出してもらえるような会社でありたいですし。生活面の目標とかは?

武田 自分だけの家具は作ってみたいです。すごい小さい話ですけど。家具とか探していて意外と、これだというのないし。

斉藤 既製品では満足できないわけだね。

武田 本棚買うにしても引き出し作ってみたりとかやりたいです。

武田さんインタビューお疲れ様でした!

武田さんインタビューお疲れ様でした!

MAD City(まちづクリエイティブ)のインターンはこんな人におすすめ

斉藤 最後にMAD City(まちづ社)のインターンはどんな人におすすめしたいですか?

武田 価値観や考え方を広げたいとか刺激が欲しいとか、そう思う人におすすめです。目標を決めて何かやるって結構当たり前になってきてますが、そうじゃないやり方もあるんだなと。あと大学で活動をするだけでは会うことの出来ない色々な考えを持った人が居るし、話してみるとちゃんと考えも聞いてくれていい人たちばかりだと思います。

斉藤 私も学生のときを思い返すと、あまり世間の大人との接点ってあまりなかったからインターンはいい機会だと思う。MAD Cityに暮らす皆さんはすごく優しかったでしょう?

武田 一人の人として意見をちゃんと聞いてくれるし、自分からも話せました。

斉藤 学生の皆さんは、最初は教わるというか、習うことに慣れていると思う。それをどう取っ払ってもっと積極的に参加してもらうためにどうすればいいのか考えています。

武田 学校でも目標立てて計画的にやりなさいよと先生は言いますしね。僕も最初は勉強しようと思っていました。そういうの、どうすれば伝わるんですかね。

斉藤 どうだろう…。インターンで得られるものって箇条書きで持って帰れるものというか、整理されきっているっていう印象があるかもしれないけど、そうじゃないと思っている方が得られるものは多いはず。エッセンスみたいなものを探り当てて、自分で肉付けたものの方が身になるはずですよね。

武田 勝手に出来上がっている普通みたいなものが、そうじゃなくてもいいのかなと思います。当たり前だけど、当たり前じゃなくてもいいのかもなと。ところで僕のような建築系の学生以外にも募集はしているんですか?

斉藤 これまでは比較的建築系の学生さんが多かったけど、まったくのノージャンルで募集しています。今やっていることに対してこれでいいのかなとふと考えることがある人、疑問を感じている人、考えることについて方法を試したい人人、トライ&エラーについて覚悟したい人、そんな人に来てもらいたいですね。さっき武田君も指摘してくれたようにMAD Cityは一種の研究機関であり実験場とも言えるので、多くの価値観に触れられた方がいい。実験といっても適当にやっているわけではなく、様々なことを試して、試したからこそ最適化できるとだろうなということです。ダメっぽいことでも諦めずにやっていこう、そういう精神にちょっとでも共感してくれる人ですかね。

著者プロフィール

funahashi taku

funahashi taku

空き家を魅力的な「まちのコンテンツ」に生まれ変わらせたり、社会的課題解決のツールとして活用したい、そんな観点から書いているブログ「空き家グッド」を運営しています。2015年6月からはMAD Cityのウェブメディア「madcity.jp」に記事をちょくちょく寄稿しています。
http://akiya123.hatenablog.com/

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