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AAPA連載 VOL.4「ほぐして、つなぐ。からだを動かすコラム」
※このコラムはMAD Cityの入居者に寄稿いただいています。(サムネイル写真/撮影者:木村雅章)
昨年の夏から2015年の1月まで、MAD Cityの運営施設FANCLUBで『ほぐして、つなぐ。からだを動かす時間』と題したクラスをAAPA(上本竜平/永井美里)で行ってきました。
AAPAでは普段、北千住にある「日の出町団地スタジオ」で日々のクラスを行っているので、FANCLUBというスタジオではない場所で定期的にクラスを行うことができたことで、松戸近隣で暮らしている方、MAD Cityに興味を持って訪ねてきてくれた方など、様々な方との新たな出会いがありました。
これまで3回にわたり連載してきましたコラムの最終回になる今回は、クラスを続けてきて感じたこと、気づかせてもらったことについて、改めて書いてみたいと思います。
クラスは朝、早めの時間帯に行ってきました。クラスの日に7階にあるFANCLUBの眺めの良い空間に入ると、からだにスッと、光と風が入っていくような気持ちになります。そしてクラスが始まり、からだにゆったりと呼吸と意識をとおしていくと、朝のまだ重いからだも自然とすっきりと、軽くなっていきます。クラスをMAD Cityでやってみようと思ったとき、まずは日常のなかでクセになってしまったからだの緊張をゆるめて、リラックスする機会にしてもらいたいと思いました。
クラスでは最初に、からだのなかにある呼吸の動きや骨の動き、重さの流れなどを感じてもらうところから始めていきます。たとえば、「手を上にあげる」ということをしてもらうと、多くの人が肩や首回りに力がはいってしまいます。そこでまずは、手を「肩」も含めてあがるように思いっきり引きあげて伸ばしてもらい、手は上にあげたまま、肩の力をぬいてもらう、というワークを行いました。そして講師の私たちは、肩甲骨の動きや重さを感じてもらえるようにサポートしたり、不必要に力が入っている肩の部分に触れることで筋肉の脱力を促したりしていきます。
そうしていると参加者の方が、「こんなところに力が入っていたんだ」と驚くこともあります。そういうときの驚きと、嬉しさが混じったような顔を見ることができると、自分たちも嬉しくなります。自分のからだのことが感覚としてわかったときは、驚きと同時に確かな納得感が表れていて、それがこちらにも伝わってきます。
自分のからだのなかに意識をむけてみる時間をとったあとは、ペアになって相手と触れている状態をキープしながら動いていき、そのままお互い目を閉じて動いてみることを試したりしながら、からだの様々な感覚に意識をとおしていきます。
ペアになる相手が変わることで、人によって返ってくる反応が違うのがおもしろいと言ってくれた方や、逆に人と一緒に動くことで、自分のからだの緊張に気づいたり、自分の人への関わり方の癖に気づいたりした、と言ってくれる方もいました。高校生のときに読んだ本のなかで、「からだはおしゃべりだ」というフレーズがあって、今もそのことをよく思い出します。
言葉ではなくからだを通してお互いのことを感じあい、一緒に動いていくと、不思議とその人とつながっていく、息があっていく、そんな体験をすることがあります。はじめて出会った人であっても、普段から一緒にいる家族や友達や同僚であっても、普段の日常のなかでは使わない「からだの感覚」を通じてコミュニケーションをすることで、いつもとは違った一面が見えてくることが多くあります。
普段なかなか意識することのないからだに丁寧に向き合ってみることで、頭で考えることとは違う「からだの感覚」を通じて気づけることが、ダンスや運動の技術とは関係なく、誰にとってもたくさんあるという事実。その当たり前なんだけど、大事にしたい、おもしろいことに、あらためて触れてもらえるきっかけになれたとしたら、嬉しいです。
一緒にからだを動かした後は、お互いの距離もすこし近くなり、自然に話しやすくなっています。クラスに参加してみようと思ったきっかけなど、色んなエピソードがあって、おもしろいです。クラスの感想も聞かせてもらって、「いつもと違う、からだの動きや感覚を味わうことができて楽しかった」という声を、いろんな方からいただきました。また、「自分では踊っているつもりはないのに、外から見てみたときに皆の動きがダンスになっていて、それが不思議だった」という感想を聞かせてもらったりもしました。
からだを通じた自分の感覚とのやりとりや、人と動きや流れをやりとりしていくことに夢中になっていくと、それが外から見たときに「ダンス」になっていく、というのを感じます。このことが、自分たちが取り組んでいるダンスの魅力のベースになっていて、伝えていきたいと思っていることでもあります。
自分のからだのことを感じていくこと、周りの人や物、場所といったものと自由にやりとりしながら動いていくことが、「ダンス」につながっているという感覚を、これからも様々な場で、いろんな人と共有していけたらと思います。
からだは日々の生活のなかで様々な影響を受けていくので、継続的にからだの緊張をほぐしてリセットすることは、健康としても大切なことです。そしてからだの感覚に意識を向けていくことも、継続的に取り組むことで、より磨かれていきます。
からだを動かすことで、様々な感覚を見つけていくことの面白さや大切さを感じてもらうと同時に、そこから一歩進んで、それを継続することで生まれてくるものの魅力を、多くの人に感じてもらえるように伝えていくことが、今後の課題だと思っています。
FANCLUBでのクラスは2月からはお休みとなりますが、今回の試みを通じて気づいたことをいかして、暖かくなったころにでもまた何か、新たな試みを始めることができたらと思っています。この半年の間、クラスに参加してくれた皆さま、そしてクラス実施をサポートしていただいたMAD Cityの皆さま、ありがとうございました!
MAD Cityでの今後の予定
1月31日(土)、2月1日(日)に行われる「NEW MAD PARADISE」で、AAPAも「オープンスタジオ」として参加します。普段は北千住のスタジオで行っているリハーサルの様子を自由に見てもらったり、質問してもらったり話したり、希望があれば一緒にからだを動かしたり、その場で来ていただいた方とともに楽しむ時間にしたいと思っています。
両日ともに17時~19時に5階のイベントスペースで行いますので、興味のあるかたはぜひ遊びにきてみてください。時間内はいつでも入退場自由です。
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プロフィール
上本竜平|Uemoto Ryuhei
1980年生まれ。2004年に劇場外の舞台空間を企画するAAPA(アアパ/ Away At Performing Arts)を立ち上げ、主に横浜で活動。2007年よりダンスパフォーマンスの創作を始め、国内各地のアートフェスティバルに参加。2011年にはJCDN「踊りに行くぜ!!セカンド」に参加し劇場作品を創作、国内4都市で上演。2013年夏に北千住の団地の店舗テナントをスタジオに改装し、日々のクラスやショーイングを行いながら、「参加するパフォーミングアーツ」としての活動の場を広げている。http://aapa.jp
永井美里|Nagai Minori
1983年生まれ。6歳よりバレエを始め、英国ミドルセックス大学ダンス学部でコンテンポラリーダンスを学び、2006年に卒業。帰国後、2007年よりAAPAの創作活動に参加。現在は北千住の「日の出町団地スタジオ」を拠点に、ダンスの面白さを地域に向けて広く伝えていくために活動中。また港区の保育園へのアーティスト派遣事業のコーディネーターも行っている。http://minori.aapa.jp/
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