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【PARADISE STUDIO 滞在レポート】 vol.6 AAPA vol.2
松戸駅前のパチンコ屋さんの上で、元ラブホテルの跡地を活用したクリエイティブスペース「PARADISE STUDIO」ここに現在、ダンスユニット、演劇ユニット、藝術大学の研究室という3組が滞在しています。
そんな彼らの日常を彼らの言葉で紹介するPARADISE STUDIO滞在レポート。
vol.6は、劇場外の様々な場所を舞台空間にすることで、現実と舞台の距離(異質さ、あるときはつながり)を形にするプロジェクト、AAPA(アアパ/ Away At Performing Arts)さんのレポートです。
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■ 通勤帰りのMAD City ■
3月になり、「PARADISE STUDIO」での仮住まいの日々が本格的に始まりました。
日中は北千住の自分たちのスタジオにいることが多いので、松戸に帰ってくるときはたいてい夜です。
そして夜の松戸駅西口は、改札のある駅舎からデッキに出てすぐのところで黒服のお兄さんたちが横に並び、
通勤しているであろう人たちの帰りを待っていることが多い。
帰り道なので、こっちを向いて立っている人たちがいるところに、まっすぐ進んでいく人が切れ目なく続くなか、
(多くは声がかけられることはなく)ただすれ違い、通り過ぎていく。
この動きの流れと人の配置の背景セット、松戸西口のビルたちと大きな店舗看板にかこまれた駅前から
伝わってくるのは、どこにでもありそうなものが「何かとそろっている」ということ。
コンビニ、ドラッグストア、ブックオフ、TSUTAYA、ダイエー、100円ショップ、24時間の飲食店、などなど。
好きかどうかという前に、便利だから使う、そういうものが集まっている。
便利で楽に過ごせることが、好きなものを選ぶことができない不自由さとセットになっている、
そんなことを感じさせる動きと配置・・・
とか考えてみたところで、すべては妄想にすぎないので、
結局は、目の前にあるものが何かということよりも、それが好きかどうかだなと思いながら
「PARADISE STUDIO」で寝泊まりする日々を過ごしております。
■ ブラ散歩のMAD City ■
PARADISE STUDIOのあるパチンコ「楽園」ビルまでは、西口デッキをおりて正面の大通りを進むだけなので、
駅から2、3分しか離れていない距離ですが、周りからはデッキで見えた景色の印象とは違ったものも見えてきます。
大通りにつながる横道には、長年通っている常連さんらしき人たちで埋まっているカウンター系の飲み屋さんが並び、
商業ビルや新しいマンションが並ぶ大通りの狭間にある古い一軒家のような建物では
PARADISE STUDIOに滞在しているポーランドから来たパベルさんの作品(スライドショー)展示がやられていたり。
その先の交差点を左に曲がって道沿いに進むと、様々なひとがスタジオとして入居している「古民家スタジオ 旧・原田米店」が。
門構えからして、かなりの歳月を感じます。
MAD Cityスタッフの斉藤さんの案内で、新しいビルに囲まれたなかで見た目以上に奥に長い敷地、
いくつかある建物のなかにも入ることができたのですが、あいにく皆さん不在の時間。
ただ、音響機材、家具づくり、子どものアート教室など、それぞれの創作活動で使われている物たちが
建物のもつ時代性を色濃く感じさせる空間になじんでいる姿、それだけを取り出すように見ることができたのも
良かったです。
さらにすこし裏に入って歩いていくと、「河津桜まつり」が行われている小川に出ます。
川沿いを歩いていると、空気もシンとしているのを感じます。
単に車や人どおりが少ないことで生まれる静かさではなく、水辺が近いことで生まれる空気感。
そこからまたすこし歩くと、さらに大きな川沿い、江戸川の土手に出ます。
土手を上がると、いっきに景色が抜けて、気持ちが良い。
さらに川に近づいてみると、枯草たちに周りすべてを囲われます。
そのさきの景色。
北千住の荒川は人口の川だという話を前に聞きましたが、
この松戸の江戸川の河川敷は、子どものころに遊んだ「探検する」場所の雰囲気が、まだ残っている感じ。
今まで、東京近郊のなかで、いろいろな街に引っ越してきました。
藤沢でのひとり暮らしから始まり、実家の八王子に戻ったあと、横浜、世田谷、相模原、
また都内にもどり、そしていま松戸にきています。
自分がこれまで暮らしてきたなかで多くの時間を過ごした、東京の多摩地域や横浜・湘南地域は、
丘や山が近くにあり起伏を感じる地形でしたが、
東京の東側は起伏がなく、景色としては道と建物が並ぶ平地が、ずっと先まで続いている印象でした。
ただMAD Cityのエリアになる松戸駅の西側は、駅前から江戸川の川辺までの15分ぐらいの距離で
景色や環境がかなり大きく変わるので、地形的な起伏はない平地にも関わらず、
丘や山をのぼっていくときと近い感じがあります。
この感じが、何かおもしろい気がしました。
街の景色や日々の暮らしで気づいた不思議なこと、違和感についてAAPAの創作のなかで話し、
そこから普段は気にかけないことに意識を広げていくことも、これまで多くありました。
ただ今回は、公演のために創作をするというより、「住む」ことについて考えてみる・・という機会なので、
この街から感じたことは頭に置きつつ、次は少しずつ松戸に住んでいる人とも出会いながら、
話を聞かせてもらったりしていこうと思います。
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