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空き家が問題になる理由やリスクはなに?
社会的課題になった空き家問題
今年は「空き家対策元年」と言われているだけあって最近、空き家問題について扱ったニュースをよく目にするようになりました。グーグルで「空き家問題」と検索すると約685,000件出てきます(2015年7月7日時点)。特に今年5月に空き家対策特別措置法が完全施行されてからは、空き家問題が社会的課題の一つとして多くの人たちに浸透してきたと思います。しかし、では具体的に空き家の何が問題なのか?リスクはなにか?といったことはなかなか知らないという方も多いのではないでしょうか。今回は空き家の何が問題なのかをまとめたいと思います。
そもそも空き家問題とは?
空き家の何が問題なのか、それは一言でいうと「外部不経済と機会損失を発生させるから」です。しかし、これじゃなんだかよくわかりませんね。まずは外部不経済のほうから見ていきましょう。外部不経済とは経済学の用語で「市場を通じて行われる経済活動の外側で発生する不利益が、個人、企業に悪い効果を与えること」です。つまり、「空き家の存在が近隣住民など第三者に不利益・損害を与える、地域にもたらされる著しい迷惑」が空き家問題で発生する外部不経済と言えるわけです(参照:自治体の空き家対策に関する調査研究報告書P.7)。より平たく言えば、空き家があることで近隣住民や地域に悪影響を及ぼしていることが問題ということです。「自治体の空き家対策に関する調査研究報告書(平成26年3月発行)」によると空き家のもたらす問題として「雑草・悪臭など衛生環境悪化」「景観の悪化」「不法侵入などによる治安の悪化」「生命・身体への被害のおそれ」が挙げられています。
他にも放火や不法投棄の温床になったり、賃貸住宅の場合は空き家・空き室は経営的に痛手です。そして何と言っても空き家のままにしておくと、建物がどんどん劣化していくことがわかりやすく問題と言えます。屋根から雨漏りや、壁が自然崩落したり、柱が朽ちてきたり、気が付かない内に傷んでいくのが空き家です。これまで空き家問題が深刻化してこなかった日本では、原状回復義務を求めるという慣行が影響してきたのか「人が住むと部屋が傷む」と考えている物件オーナーが多いようです。しかし実際には、人が住んでいた方が日常的にメンテナンスを意識的にしろ無意識にしろ行うので建物の劣化のスピードは抑えられます。そして、まちづくり的な視点から言うと、こうした空き家ばかりのエリアは資産価値が低下し、新しく引っ越してくる人も少なく、まちの活気や魅力が失われてしまいます。
空き家放置で発生する5つの問題とリスク
では具体的に空き家を放置することで発生する懸案と不安を見ていきましょう。これは、積水ハウスの空き家活用サポートサービスのウェブサイトが充実しています。一つ目は建物の老朽化です。物件は入居者がいたほうが傷まないということは、先ほども記述したとおりです。二つ目は植栽や雑草などによる景観の悪化です。庭の雑草などの繁茂は景観もそうですが、衛生害虫の発生や猫などの小動物が棲み着いたり、不衛生を招きます。三つ目は防犯上の不安で、不法侵入や不法投棄の温床になってしまうということです。四つ目は防災上の不安で、屋根や瓦、壁などが崩落または破損して道路を塞いでしまうことでスムーズな避難を妨げるなどのおそれがあります。五つ目は空き家等の適正管理条例とありますが、現在はより上位の空き家対策特別措置法が施行されています。この法律を根拠に自治体による空き家対策の権限が強化され、最終的には行政代執行という強制的に空き家を取り壊すことも可能になりました。
空き家率が30%を超えると自治体財政は破綻する?!
空き家が増加し続けると新しい住民が引っ越して来ず税収も見込めないため最終的には自治体財政破綻という最悪の結果を迎えます。2007年に財政破綻した北海道の夕張市の空き家率は33%、2013年に財政破綻したアメリカミシガン州のデトロイト市の空き家率は29.3%です。奇しくも両自治体は空き家率が30%前後で財政破綻しています。明海大学不動産学部教授の齋藤広子さんは「空き家率が30%を超えると自治体は財政破綻する」といった発言をなさっています(NHKスペシャル「シリーズ日本新生”ニッポン空き家列島”の衝撃〜どうする?これからの家と土地〜」2015年1月10日放送回にて)。現在、日本全国の空き家率は13.5%ですが最近プレスリリースされた野村総研の調査結果によると、住宅の除却や減築、中古住宅流通市場の整備、リノベーション、新築住宅建設の制限などの施策が進まない場合、2033年の空き家率は30.2%と予測しています。これは自治体どころか、国全体が財政破綻するリスクを示した予測になっているとも言えます。
空き家は新しいヒトやコトが生まれるチャンスの芽を潰してしまう
空き家が問題とされる2つ目の理由は、機会損失です。これは、まだまだ使える空き家や土地が有効活用されないことで、本来活用されていれば新しい住民が引っ越してきたり、新しいお店が出来て賑わったり、まちを代表するようなコンテンツに生まれ変わったりするチャンスの芽を潰してしまっているということです。
帰りの電車で、隣の席に麗沢大学教授の清水千弘さん(47)が座った。「活用できる空き家もありますね」。空き家は外部不経済のほか「別の用途に使えば地域が発展したのに、できなかった」という機会損失ももたらす。「資源となる空き家と壊すべきゴミとなる空き家を分別し、機会損失を利益に変える方法を考えるべきです」と清水さん。
空き家増加 自治体どう対応(日本経済新聞)
税負担、撤去費用、相続・・・空き家を所有するリスク
冒頭申し上げたように空き家対策特別措置法が完全施行、放置された空き家に対する指導が強化されることに加え、固定資産税の優遇措置の撤廃といった税制改正もなされました。そして、人口や世帯数の減少や住宅の長寿命化などを背景に、新設住宅着工戸数も徐々に減少に向かうという予測もあります。これからますます空き家を所有することのリスクは高まっていきます。具体的には「特定空き家」に指定されたらペナルティーとして固定資産税の優遇措置からはずされます。さらに「行政代執行」という形で所有者に変わって行政が建物の取り壊しを行うこともあり得るのです。詳しくは以下の記事でもご説明しています。
空き家対策特別措置法の施行で何が変わる?
- 空き家対策特別措置法が完全施行されました 2015年は「空き家対策元年」です。昨年7月に、5年に1度の総務省の調査である住宅・土地統計調査により最新の空き家数や空き家率が公開(全国の空き家数は約820万戸、空き家率は13...more
こうした状態の空き家を相続すること自体が大きなリスクとなります。例えば、いざ相続した空き家を手放そうと思っても兄弟姉妹などで共有相続してしまった場合、共有者全員の合意がなければ売ることも貸すことも壊すことも出来ません。
手をこまねいているうちにも空き家はどんどん荒れていき、行政から要注意物件としてマークされてしまう可能性も高まります。使っていない空き家をこれから相続する、あるいはすでに相続したという場合、適正に管理せずに放置しておくことのリスクはこれまでよりも格段に上がっています。
撤去費用に税負担 空き家相続、高まるリスク(日本経済新聞)
さらに空き家の中でも問題なのは「その他の住宅」の空き家です。こういった空き家は売却や賃貸などで活用される予定がない空き家であるため、管理が行き届かずに老朽化し、景観や環境などの面で周辺地域にリスクをもたらします。全国の「その他の住宅」の空き家は318万戸です。全国の空き家は約820万戸なので約4割が「その他の住宅」の空き家ということになります。そして、こうした「その他の住宅」の空き家数は実は都市部に集まっているのです。さらに日本社会では人口減少と高齢化が避けられません。将来「その他の住宅」空き家になるリスクが高い、「高齢者の単身・2人世帯の住宅」も都市部に集中しています。
MAD Cityにできること−サブリース、空き家管理、情報提供(講演)−
MAD Cityでは空き家などお困りのオーナー様にむけ、空室の家賃保証を実現するサブリース(借り上げ・転貸)を提供しています。MAD Cityが入居者の改装を支援することで、築40年以上の物件でもオーナー様がリスクを負わずにお部屋の価値があがります。対象エリアは松戸駅から徒歩20分程度までと限られますが、ご興味ある方はぜひご相談ください。また、松戸駅前で低額の空き家管理サービスも開始いたしました。さらに、空き家活用に関して講演依頼もお応えしていますので、エリア外の行政およびまちづくり関係者の方はそちらをご検討ください。
空き家に関するご相談はこちら(対象:松戸駅から1.6km圏内)
空き家管理に関するご相談はこちら(対象エリア:松戸駅から1.6km圏内)
講演依頼などのご相談はこちら
著者プロフィール
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funahashi taku
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空き家を魅力的な「まちのコンテンツ」に生まれ変わらせたり、社会的課題解決のツールとして活用したい、そんな観点から書いているブログ「空き家グッド」を運営しています。2015年6月からはMAD Cityのウェブメディア「madcity.jp」に記事をちょくちょく寄稿しています。
http://akiya123.hatenablog.com/
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