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空き家活用

空き家活用プロジェクト「どうすれば松戸でいいお店が生まれるのか」

空き家活用プロジェクト

先日、「空き家をつかったみんなの居場所づくり展」というイベントが開催されました。舞台となった空き家は、オーナーさんの「そのまま空き家にしておくのは勿体ない」「地域のために活用してもらいたい」という強い思いがあり、活用プロジェクトが立ち上がったとのこと。

このプロジェクトは、MAD Cityを運営している株式会社まちづクリエイティブと、株式会社あゆみリアルティーサービスが主導しており、千葉大学大学院園芸学研究科の木下勇研究室などの協力を得て進められているものです。

そして、2月19日~21日に、千葉大学大学院園芸学研究科の「環境造園プロジェクト演習Ⅲ」(担当:木下勇教授・霜田 亮祐准教授)に参加した大学院生・留学生により、課題展示と、「食」「空き家活用」にまつわるトークイベント、などがおこなわれました。今回はそのうち、2月20日のトークイベントの様子をお伝えしたいと思います。

食べられる景観

現地にいらっしゃった大学関係者の方に、空き家プロジェクトに千葉大学の学生が関わることになったきっかけについて聞いてみたところ、以下のように教えていただきました。

千葉大学が取り組む文部科学省の「地(知)の拠点整備事業(COC)」の一環で、実習の課題として、この空き家が取り上げられました。課題は、松戸駅から戸定邸や千葉大園芸学部までの「緑の回廊」の全体計画と、そのルートに位置する、この空き屋をいかに活用するかという2つの提案です。

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展示の風景。路面に面した空き家の土間に、大学院生それぞれの活用プランが張り出されています。

緑の回廊は、千葉大学・市民・松戸市による協働プロジェクトで、戸定が丘公園と千葉大学園芸学部のある戸定が丘の地域一帯の文化や歴史、緑の拠点としての価値を伝える活動だそうです。そして今回の課題を進めるにあたって木下先生が紹介したのが、「食べられる景観」で地域の再生に成功したイギリスの事例だそうです

イギリスの主婦たちの間で、食べることは誰でもできるから、街中の植栽に食べられる植物を植えてみんなで手入れし、ともに料理をして食事する機会をつくることで人と人がつながっていったとのことです。そして植栽を植えても管理が大変なのですが、管理をみんなで分担する必要があることで、むしろそれゆえに持続可能な地域コミュニティを生み出したそうです。

「食」はコミュニケーションツールとして優秀

そんな展示会の流れを受けつつ、NPO法人フードデザイナーズネットワークを運営されている中山晴奈さんをゲストに招き、地域の「食」の課題について、そこに住む地域の人材を育成することで解決していくといった活動の事例紹介をいただきました。

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中山さんによるトーク会場の様子。パネル展示の土間から上がった和室に、展示パネルを使った即席のスクリーンを用意してのトークでした。

中山さんいわく、「食」というのはコミュニケーションツールとして優秀なんだそうです。

たとえば、仮設住宅で生活している人たちは、集落を解体されて狭いところに押し込められていて、震災前と比べて交流したり笑いあえるような機会が減ってしまったそうです。もともとその集落は漁業をやっていて、流通しないワカメの茎を家に持ち帰って漬物にして食べていました。そこで、そのワカメの茎の漬物を持ち寄る場をつくると、みんな漬けかたが違って「何だこれは」みたいな感じで交流が生まれ、久しぶりに盛り上がることができたというエピソードを紹介してくれました。

どうすれば良いお店が生まれるのか

中山さんのトークイベントでは、ケータリング業界の裏事情や、「食」を通じてどんな街おこしをやってきたかなど、面白いエピソードがたくさん出てきました。そのなかでも、今回のテーマの核心に触れた話を紹介します。

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電車を貸し切ってのケータリング、アウトドアウェディングでの特殊なケーキづくり、震災地での地元産品を用いた加工食品の開発など、中山さんが関わってきたさまざまな事例を紹介いただきました。

それは、会場からのある質問でした。素人の発想でいうと、家賃が安くていい物件があって、それを借りた料理人が、接客も得意で料理が上手ければ、飲食店はうまくいくんじゃないかと思ってしまう。でもそうじゃない、って中山さんは言っている気がするが、地域でいいお店を持てる/お店が生まれるためのアドバイスをください、というもの。

料理人は頑固な人から、上手にコミュニケーションをとれる人までピンキリなので、地域の人たちがそのお店を支えてあげられるかどうかが大事だと思います。お店は育つものなので、お店をやっている人が育つだけでなく、お店がみんなに支えられて育つんです。(中山)

お店が頑張るだけじゃなくて、街が残していく努力をしていかないとお店は残らない。地域の人たちがお客になる努力も必要だそうです。さらに、飲食店でただ食事をしてお金を支払うだけでなく、何かアイデアを出したり協力もするためにはどうしたらいいか、という質問にはこんなお答えでした。

それはすごく重要で、お客さんにリピートしてもらえなければ問題があるのだろうと分かるのですが、理由は簡単にはわかりません。一方で、お客さんが我がもの顔に介入しすぎるような状況になると、コミュニティカフェみたいに経済活動として成立しなくなりがち。お店とお客のより良い関係を創るためには、これまでの地域と食とお金のあり方にイノベーションを起こす必要があると思います。(中山)

簡単に「参加」できて、何度も足を運んで「支える」  、 地域の 「居場所」

私は、イベントが終わってから、この話がずっと頭の中に残っています。たしかに、大好きなお店が松戸にできても頑張って通わないと残っていかないですよね。

「食」から話がそれてしまいますが、松戸市役所の近くに「DICOOL」という靴磨きのお店があります。そこで働く安井さんという方の腕が神技で、ボロボロの靴を新品以上に仕上げてくれるのですが、オープンして間もないころはお客が来ないと悩んでいたのです。(幸いなことに、今ではリピーターが増えつづけて忙しく働いていらっしゃいます)

思い返してみると、私も、わざわざ古い靴を持ち出してはお店へ足を運んでお客になる努力をしていた覚えがあります。磨く靴がないときでも、ふらっとお店へ寄ってはカウンター越しに職人技を見せてもらったりして、いつの間にか「居場所」になっていました。

今回の空き家プロジェクトで、「食」とコミュニケーションの可能性に触れることができました。食べることを通じてコミュニケーションが生まれ、地域の人たちが何度も足を運ぶことで大切なお店を「支える」ことが大事。もしかしたら、それはかつての「駄菓子屋」のようなものかもしれないと思いつつ、イベント現場を後にしました。(2016/02/29)

著者プロフィール

higashikubo

higashikubo

2014年3月から松戸に住み始めて、2015年11月に松戸の情報サイト「松戸NOTE」を、プライベートでスタートしています。 普段は、インターネット業界でマーケティングや分析の仕事をしています。 松戸に住んでる人たちが、ちょっと自慢したくなるようなお店やイベントを見つけては取材して記事にしていく予定です。
http://matsudonote.com

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