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パドラーズコーヒーの心地よさの原点は、ギブアンドテイクの仲間づくりにあった(前編)

京王線幡ヶ谷駅から南に進むと、丘を下るように広がる西原エリア。近年注目されているこの地域だが、パドラーズコーヒーの存在なくしては、ここまで話題になることもなかっただろう。自店舗の運営だけでなく、商店街の理事を務め、新たなお店の誘致にまで動くそのスタイルは、地域全体に風通しのよいムードを生むことになった。

彼らはどのような考えで、お店の経営と地域の課題を結びつけて考えているのだろうか。そして、どうやって考えをともにする仲間を見つけているのだろう。今年、新たに家具と生活雑貨のお店「ブルペン」もオープンさせた共同代表の松島大介さんに、M.E.A.R.Lを運営する株式会社まちづクリエイティブ取締役の小田雄太がお話をうかがった。

Text:Akira KUROKI
Photo:Shin HAMADA
Edit:Shun TAKEDA

 「気持ちの良い関係」から生まれる、お店を越えたチーム感

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小田 今日は松島さんにパドラーズコーヒーのチーム作りや、お店周辺の地域の方たちとの関係性の作り方、つまり広い意味での仲間集めをどう行っているのか聞いてみたいと思ってやってきました。

松島 わかりました。その前にそもそもなんですが、まちづクリエイティブって主にどんなことをお仕事にされているんですか?

小田 まずそこからですよね。僕らの仕事の中でメインになっているのは、千葉県の松戸市を拠点にしたMAD Cityという自治区のようなエリアづくりなんです。そこでは実際に物件を借りて、不動産の転貸をしています。

例えば、オーナーさんにとって思い入れはあるけど、古くなってしまったような物件をまず借り受け、アーティストやクリエイターを誘致してお貸しするんです。そこを彼らがアトリエにしたり、自分たちでDIYでリノベーションしたりして、独自に活動を展開してきます。

すると「なんかMAD City行くとおもしろいことあるよ」っていう噂が広がり、さらにおもしろい人たちが集まってくる。この手法で運営し始めて6年目になるんですが、これまでに80件以上の空き物件の利活用していて、200人以上の移住や、事務所移転を実現しています。

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築100年強の古民家をアーティストやクリエイターのスタジオとして活用。(旧・原田米店)

小田 松戸以外では、JR東日本と協同して埼京線沿線のエリアブランディングとして「SAI-KYO Dialogue LINE」というメディアの立ち上げ、運営を行っています。また、佐賀県武雄市では、MAD Cityの手法を使いながら新しいまちづくりの手法をプロデュースしていますね。そこではガレージを借りてアーティスト・イン・レジデンスを設置したり、野外フェス「TAICO CLUB」のスピンアウトイベントを現地で開催したりしてるんですよ。

松島 へえ~、すごいですね。

小田 僕個人はパドラーズコーヒーが大好きで、コーヒーやお店づくりももちろんですが、地域との関わり方がすごく魅力的だなと思っていて。

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物件の決め手にもなったという、大きな桜が印象的なパドラーズコーヒーのエントランス

松島 小田さんはこの店舗がオープンしたときから、ずっと来てくれてますよね。ありがとうございます。まずチーム作りということでは、まず根本的な考えとして、餅は餅屋じゃないけどそれぞれの自分の得意分野を伸ばすほうがいいと思っているんです。

このお店を作る時も、家具屋さん、水道屋さんとか、直接知り合いにお願いしたり、中学校の同級生を呼んで、ペンキ塗り手伝ってもらいました。遠慮なくお願いすることで、その時のチームができる。僕が彼らに借りをつくることで、彼らが僕になにかを頼んでくれたり、ギブアンドテイクが生まれて、そこからまた仕事が生まれるんです。

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小田 なるほど。

松島 例えば、最近もポートランドから来ているアーティストから「Tシャツを売りたい」と相談を受けました。うちで売る手もあったんだけど、それよりも近くの古着屋さんPALETOWNで売ったほうがいいと思ったので紹介したんですよ。

仕事として考えるとうちで売ったほうが良いわけじゃないですか。だけどアーティストや地域のことを考えたら、PALETOWNで売ったほうがいい。自分だけの利益にしないことが全体をまわすと思っているし、それがお互いにできてきているので、お店を越えた大きなチームのような雰囲気になっている気はしますね。

小田 今のギブアンドテイクのお話は、すごく共感します。ただ、そういったコミュニケーションを嫌がる人もいるじゃないですか。その上で屈託なく素直にやる、という難しさもあると思うんですが。

松島 たぶん引き受けるときに「本当はやりたくない」っていう気持ちが少しでもあると、いい関係性は生まれないと思うんですよね。大事なのは、気持ちよく受けるか、気持ちよく断るかのどっちかにすること。でもそれって日本だと結構難しいところだとも思います。そこはもう見極めですよね。

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小田 僕が感じているパドラーズコーヒー一帯のある種の心地良さは、そういう「気持ちの良い関係」の積み重ねで出来ているような気がします。

松島 なんていうか、僕らも遠慮なく人に頼むから、遠慮なく頼まれたりするんじゃないかな。それが健康的なのかもしれません。

小田 ただ結構失敗することもありますよね?

松島 もちろんありますよ。でもどこかであの人にその借りを返したいなというのは、残りますよね。だから最終的にお互いにギブアンドテイクができたらいいなとは常に考えています。だから何か頼まれると嬉しいし、それに応えたいなと思う。

小田 お互いにいい意味で遠慮がなくなると、友達付き合い以上の関係になりますもんね。確かにそういうところで信頼関係、チーム感って生まれるよなって思います。

重要なのは役割分担とギブアンドテイク

小田 西原商店街のみなさんたちとは、どのような交流があるんですか?

松島 僕が商店街の理事になっているので、会合に月に一回顔を出しています。ここは役割分担で、お店の外でのことは僕が担当していて、お店を守るのは一緒にやっている加藤の役割なんです。僕がなんにもやらなくても、美味しいコーヒーを出す、というコーヒーショップとしての最低限のことは加藤が完璧にやってくれていますね。

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小田 スタッフの中でも役割分担がしっかりとあるんですね。僕たちも、まちづくりに関して現場でハードに動いているのは代表の寺井のほうで、彼のほうが対行政とのコミュニケーションや、いわゆるソーシャルエンゲージメントが得意。反対に僕はクリエイターのチームアップをしたり、ブランディングをしていく担当なんですよ。

松島 そこの切り分けって重要ですよね。その役割分担にも色々な形があると思っていて。例えば、お金持ちの友達みたいな人がいてもいいと思うんですよ。なんかやりたいけど、それがわからなくてお金ならあるという人がいれば、力を借りながらもっとおもしろいことを仕掛けられる。

それこそパドラーズコーヒーも中学の同級生にお金を借りて始めてるんです。それもチームといえばチームですよね。別に一切彼の名前も出てこないし、誰かもみんな知らないけど、確かにそこから始まっている。

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小田 ああ、そうなんですね。

松島 実際その友達にはなんのメリットもないかもしれません。でも関われたってことに喜びを感じてくれていて、今でも感謝しています。

小田 近い話だと、パドラーズコーヒーのデザイン周りは、エースホテルのデザインにも関わったチームがやってるんですよね?

松島 そうですね。テキサス州オースティンのLANDっていうデザインチームなんですが、彼らがたまたま日本に来ていた時、僕が一週間アテンドしてそのお礼にやってもらったんです。なのでお金は発生してません。普通に頼んだらかなりの額だとは思いますね。

小田 そこもギブアンドテイクでなりたってるんですね。「アテンドしてくれたからお礼になんかするよ」っていう。

松島 いや、僕が「お礼になんかしてよ」って頼んで(笑)。

小田 なるほど(笑)。

松島 僕がやったのは、行きつけのお店に案内するようなことですけど、彼らがそこに価値を感じてくれたなら、彼らのスキルでお返してもらえる。だから図々しく「アテンドのギャラはいらないから、代わりデザインお願いできない?」って頼みました。それで、僕が着ていた赤いジャケットにマーカーで書いてくれたのが、後日そのままロゴになったんです。

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松島 あとはさっきの「気持ち良い関係」。例えば、自分の持ってる情報やコネクションって、全部誰かに渡しちゃうと何かを失った気持ちになったりしますよね?

小田 ありますね。

松島 本当におすすめのお店があっても、全部は教えたくないみたいな。実は僕、昔はそれがすごくあったんですけど、なくなったんですよ。

小田 それはどこかのタイミングで変わったんですか?

松島 高校・大学時代にアメリカに住んでいたことが大きいのかな。当時オレゴン州のポートランドで過ごしていたんですけど、そこで出会った人たちって「なんでこんなにしてくれるの?」ってくらい、情報を与えてくれたり、手伝ってくれたりして。そうすると、自然と「彼に何かしてあげたい」って気持ちになる。

小田 それ、すごくいいですね。

松島 そういう粋な友人が増えていく心地よさを知れたので、何かを独り占めするようなことから離れられたのかもしれません。

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後編に続きます。

※本記事はmadcity.jp および M.E.A.R.L の共通記事となります

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