ホーム > 連載・コラム > あえて今、MAD Cityから地域通貨の”いろは”を紹介するコラム vol.1
- ローカルと起業
- 地域通貨
あえて今、MAD Cityから地域通貨の”いろは”を紹介するコラム vol.1
―MAD Cityでは以前、関係者が笑い話で「いつかMAD Cityの地域通貨ができたら面白いかもね?『円』じゃなくて『beer』で!」といった会話をしていたことがありました。というわけでMAD City運営に学生インターンとして関わっている高橋がこのたび、大真面目に地域通貨のことを考えるコラムを書くことになりました。―
僕は2011年の晩夏、千葉県の端っこにある仮想の自治的なエリア「MAD City」に迷い込んでしまった。まあ実際はインターンという立場で、何かとお手伝いしているのです。以来約10ヶ月、この小さなエリアで起こる出来事には驚かされてばかり。中でも印象に残っているのが年配の方々と若者の仲の良さです。
僕が働いているMAD City Galleryという何やらいろいろなことをやっている場所には商店街の年配の人たちがやってきたり、MAD City不動産の入居者たちがやってきたりします。孫と祖父ぐらいの年齢差がある人間が喋ったり、一緒にイベントを企画していたりする。どうも、今時の都心ではなかなか見られない光景ですね。
ざっくりとしていますが、僕の見るところMAD Cityは
こんな場所だと思われます。
そして、こんなMAD Cityの自治度(?)をさらに高めるために、独自につくる仮想の通貨があってもよいのではと僕は考えるようになりました。それでまずはちょっと調べてみたんですが、実際に自治を追求し、地域が独自に通貨を発行する例は世界的にもいくつかみられるんですね。
イタリア・フィレッティーノ
http://www.principatodifilettino.eu/site/
昨年、フィレッティーノというイタリアの小さな街が、政府の政策に反発し、自治を求め、”公国”として独立を宣言した。”公国”では、独自に”フィオリト”という通貨を発行して、完全な独立を目指している。
イラク・クルディスタン地域
http://jp.reuters.com/article/oddlyEnoughNews/idJPJAPAN-22949820110831
クルド人自治区において、湾岸戦争時イラクのフセイン元大統領に反発したクルド人は、政権の支配を離れて独自通貨の発行などを行った。
井上ひさしによる長編小説”吉里吉里人”
http://ja.wikipedia.org/wiki/吉里吉里人
独立を宣言した東北の寒村”吉里吉里国”で、独自の通貨”イエン”を発行し、日本政府に対抗する物語である。
こうした事例は、通貨には自治のシンボルという文化的な一面もあることを示しているのではないでしょうか。
……独自の通貨といえば、全国各地ですでに地域通貨なるものが多く出回っています。もっともこれらは自治の高まりを目的としたものというより、地域のコミュニティ再生や商店街の活性化を目的としているものが多いようですが。では、地域の活性化と、自治性を高める、2つの目的を目指して、MAD Cityにもこうした地域通貨を導入できないものでしょうか。
これから始まるこのコラムでは、仮想の通貨である「地域通貨」がどんなものか、まずは読者の皆さんにご紹介していきたいと思います。
先ほど少しご紹介したものの、いきなりの話題なので”地域通貨ってなんだ?”と思われる方、”なぜ今さらまた地域通貨?”と思われる方、様々な方がいらっしゃることでしょう。
地域通貨とは、簡単に言えば国以外の団体あるいは個人が発行するお金のことを指します。
“え、個人でもお金つくれるんだ”という疑問を抱かれた方、いらっしゃるでしょう。国内には紙幣類似証券取締法という法律が存在しています。この法律は貨幣同等の価値を持つものの発行を原則として禁止しています。
しかし一定の条件の下で、地域通貨等については発行が認められているのです。その一定の条件とは、”流通する範囲を限定する””通貨に有効期限を定める”などといったものです。実際、2003年に北海道の留辺蘂(るべしべ)町という所で地域通貨を発行しようとした際にそのような話題がありました。留辺蘂町の地域通貨は、財務省によって法律に抵触しないため発行を認めるという方針が示されています。
そして、地域通貨と日本円との交換は通常不可能です(例外はあるのですが、それは後ほどご紹介します)。お金の種類が何種類もあると国内の経済に混乱が生じるからということはありますが、そもそも地域通貨を発行する目的が一般に流通しているお金(日本円)と異なっている、ということがいちばんの理由のようです。その目的とはいかなるものなのかも、これから探っていきたく思います。
さてそんな地域通貨、いままで世界各国、日本でも津々浦々で発行されています。ただ地域通貨はいろいろなところでトライされているものなのですがあまりうまくいっているように見えません。流行としても一段落して、むしろ最近は聞かない、という方も多いでしょう。それでは、そんなうまくいっていない地域通貨をうまくいかせることはどうしたら可能なのでしょうか。
というわけでこれからしばらくは、地域通貨がいままでどうやって導入されて使われてきたのか、実際の例を見て考えてみたいと思います。
次回もお楽しみに!
高橋舜|Takahashi Shun
90年生れの大学生。
大学では都市計画を学んでいる。
とある人物の紹介で松戸に足を踏み入れることに。
お気に入りは駅前のカレー屋さん。
サムネイル画像は「おいしい画像屋さん」http://deliciousbusiness.blog.fc2.com/のものを利用しています。
関連記事
あえて今、MAD Cityから地域通貨の”いろは”を紹介するコラム vol.2
- ―MAD Cityでは以前、関係者が笑い話で「いつかMAD Cityの地域通貨ができたら面白いかもね?『円』じゃなくて『beer』で!」といった会話をしていたことがありました。というわけでMAD City運営に学生インタ...more
あえて今、MAD Cityから地域通貨の”いろは”を紹介するコラム vol.3
- ―MAD Cityでは以前、関係者が笑い話で「いつかMAD Cityの地域通貨ができたら面白いかもね?『円』じゃなくて『beer』で!」といった会話をしていたことがありました。というわけでMAD City運営に学生インタ...more
松戸のまちづくりと場づくりを考えた!「地域再生の失敗学」を題材に、松戸を面白いまちにするアイデアトークイベントを開催(後編)
- 前編はこちら 中編はこちら 人と人が刺激を与え合い繋がるための場づくり アイデアトークの二つ目のテーマは「人と人が刺激を与え合い繋がるための場づくり」です。一人でインターネットなどで情報収集するのもいいですが、新しいアイ...more
商店街の空き店舗に新陳代謝を起こすためにできる3つの方策
- 商店街の空き店舗をめぐる現状に対する関心の高さ 先月公開したこちらの記事「商店街の空き店舗が埋まらないのは何故?起業の拠点になりそうでならない、商店街のまちづくりを考える」は、スマホやECサイトが普及した現代の商店街の役...more
ここ10年間で人口が2万人も増加した流山市のシティセールスは、次のステージ「シビックプライドを育てる」へ
- 千葉県流山市のシティセールスの取り組みと成果 全国の自治体共通の課題として、人口減少、高齢化の進行、財政状況の悪化などがあります。転出者数を減らし、転入者数を増やす、そして長く住み続けてもらう、住まなくても定期的に交流し...more
教科書を読みすぎちゃう人のための起業入門1
- —架空の自治エリア「MAD City」を現実にすべく活動している、まちづクリエイティブ代表の寺井が、過去の自分のような無謀な20代に向けて送る起業入門のコラム。寺井本人が起業後に「教科書に書いてないこと」の存...more