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あえて今、MAD Cityから地域通貨の”いろは”を紹介するコラム vol.3

―MAD Cityでは以前、関係者が笑い話で「いつかMAD Cityの地域通貨ができたら面白いかもね?『円』じゃなくて『beer』で!」といった会話をしていたことがありました。というわけでMAD City運営に学生インターンとして関わっている高橋がこのたび、大真面目に地域通貨のことを考えるコラムを書くことになりました。―

前回の記事はこちら

3回目は東京のとある商店街における事例をご紹介します。

助け合いでまちを元気に 東京・中延商店街の場合

東京・品川の中延商店街は、荏原中延駅と中延駅の間にある全長400mあまりの商店街です。周辺は主に住宅で占められており、商店街から1本裏に入るとそこはもう閑静な住宅街になります。個人商店を中心に50店余りが軒を連ね、生鮮食品から日用品に至るまで、生活に必要なものは大概揃っているのでないでしょうか。商店街を行き交う人の中には、カートをひく近所のお年寄りが多く、まさに地域密着型の商店街といえます。

この中延商店街ではじまったのが”街のコンシェルジュ”。商店街近隣に住むお年寄りたちのちょっとした困りごとを、同世代の人々が自分の特技を持ち寄ることで解消しようというユニークなサービスです。このサービスでは対価として品川区内で利用可能な商品券が用いられており、”街のコンシェルジュ”ではこの商品券が地域通貨の役割を果たすわけです。

今回はインターネットで出回っている情報を中心に、このコンシェルジュがどんなものかをご紹介していきたいと思います。

導入の背景

中延商店街周辺では2005年頃の時点で住民の5人に1人が高齢者でした。その後の団塊の世代による一斉退職者なども合わせると、現在その割合はさらに高くなっているのではないでしょうか。商店街としては、地域のこうした状況とマッチした取り組みを行う必要があったわけですね。こうした経緯から、商店街を拠点とした高齢者向けサービスを考案するに至ったのだと思われます。

コンシェルジュの仕組み

まず、このサービスに参加する人は年会費として1000円を払い会員登録をします。その後、利用者は事務局にてコンシェルジュ(=困りごとを解決してくれる人)に支払うためのクーポンを購入します。クーポンは800円で、1時間分の利用料に相当します。コンシェルジュはサービスを提供してくれた人に対して、このクーポンで対価を支払うわけです。

クーポンをもらったコンシェルジュの人たちは事務局に行き、500円分の品川区内共通商品券に交換してもらうことができます。この時に300円の差額が生じますが、これは運営上の事務経費に充てられています。

システムの持続性を保つための負担

上記で述べたように、クーポンを商品券に変える際に300円の差額が発生します。この300円が事務費用となることは既に述べたのですが、問題はこの300円によって誰が損をしたかという点です。それは利用者なのか、コンシェルジュなのか。つまり利用者が1時間500プラス300円でコンシェルジュに依頼をするのと、コンシェルジュが1時間分のサービス提供に対して800マイナス300円分の商品券しかもらえないことと、どちらが損かということです。

しかし、これは1時間分のサービスの内容がどのようなものであったかによって変わってくるので、一概に誰が損をしているとは決められないでしょう。そして1つ確かなのは、利用者・コンシェルジュのどちらかが金銭的な見返りを重要視した場合、このサービスはまず成り立ち得ないという点です。

初回のコラムでも少し触れましたが、地域通貨の果たす役割は一般的に出回っている通貨とは異なっています。これは、通常だと提供したサービスに対してそれに見合う対価を支払うのが合理的な取引の在り方ですが、地域通貨だと必ずしもそうではないということです。つまり今回の例だと金銭的な見返り以外に、サービスの対価となるものがあるということではないでしょうか。

まとめ

今回は中延商店街における”街のコンシェルジュ”がどんなものかを大まかにご紹介しました。ここまで紹介してきたコンシェルジュについて自分なりにざっとまとめると

  • 既存の共通商品券を用いたことで初期の設備にコストがかからなかった。
  • コンシェルジュとなる人は中高年層の人たちということで、高齢者間の新しいネットワークを創り出すことにも繋がる。
  • サービスの対価の中には金銭的な見返り以外に何らかの付加価値が存在する、はず。
  • で、加えて疑問を並べてみると

  • 金銭的な見返り以外でサービスの対価となるものが本当にあるのかないのか。これがはっきりしないと、コンシェルジュはただ搾取されるばかりの立場の人になってしまうんじゃないかな。
  • 使うことが前提の商品券だが、そもそもコンシェルジュは商店街で商品券を使うのか。商店街にある商品がはたして彼らにとって魅力的なのかどうか。

  • コンシェルジュは前回ご紹介したLETSとはシステムこそ異なりますが、どちらも住民間の信頼関係を形成することを目指している点では共通していますね。

    さてこのコンシェルジュ、果たして成果は出たのでしょうか。確かめてみたいところですよね。というのも実はこのコンシェルジュですが、名前を変えたりしながら現在も続けられているようなのです。
    http://www.nakanobu.com/article/0004772.html

    それならば、ということで実際に現地へ行ってみました。”百聞は一見に如かず”です(笑)

    そんなわけで次回のコラムでは実際に現地に行って見聞きしたことをもとに、今回出てきた疑問を解決していきたいと思います。もちろん、コンシェルジュは現在どうなっているのか、上手くいっているのかについても詳しくご紹介していきます。

    では、次回もお楽しみに!




    高橋舜|Takahashi Shun
    90年生れの大学生。
    大学では都市計画を学んでいる。

    とある人物の紹介で松戸に足を踏み入れることに。
    お気に入りは駅前のカレー屋さん。

    サムネイル画像は「おいしい画像屋さん」http://deliciousbusiness.blog.fc2.com/のものを利用しています。

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