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空き家活用に必要なのは「利用の構想力」!国土交通省が公開した「不動産ストックビジネス事例集」がヒントになる

これからの不動産関連産業は「箱の産業」から「場の産業」へ移り変わる

国土交通省が今年3月発表した「地域の不動産関連事業者向けの不動産ストックビジネス事例集」は、不動産業者やリノベーション事業者のほか、まちづくりや空き家活用に取り組んでいる方々は必見です。一言でいうと、現代の人口減少・超高齢社会の中、不動産に関わる産業は「箱の産業」から「場の産業」へ移り変わっていくことが求められる、という内容です。つまり、不動産ストックはたくさんあるので、それではどうやってその不動産ストックを生活の場として利用するのか、ということです。

本格的な人口減少・超高齢社会が到来する中、不動産に関わる産業も、「箱の産業」として不動産の管理・仲介を担うのみならず、いわば「場の産業」として、 まちづくりとの連携を深め、地域の新たな需要に対応した不動産ストックの再 生・活用に貢献していくことが求められています。(「箱の産業」から「場の産業」 へ)

不動産ストックビジネスの発展と拡大に向けて〜今後の方向性と先進的な取組事例について〜P.1(PDF)

箱の産業から場の産業へ。従来の不動産産業は、不動産単体の管理・仲介で完結していましたが、人口減少や高齢化、空き家の増加などに直面している現代は、面的にまちづくりの視点を取り入れて不動産を核とした新たなサービス・付加価値を提供していくことが必要になってきます。

箱の産業から場の産業へ。従来の不動産産業は、不動産単体の管理・仲介で完結していましたが、人口減少や高齢化、空き家の増加などに直面している現代は、面的にまちづくりの視点を取り入れて不動産を核とした新たなサービス・付加価値を提供していくことが必要になってきます。

不動産ストックビジネスとは?

全国各地で増加している空き家や空き店舗、老朽建物といった不動産ストックを核として、まちづくりの視点を重視した新たなサービス・付加価値を提供するのが「不動産ストックビジネス」です。そして、取組ポイントが3つあって、

  1. 地域の新たな需要の掘り起こし
  2. 人材ネットワークの構築
  3. 資金調達手法の工夫

が重要になります。といっても、具体的にどういうことなのかは実例を見るのが理解の近道です。今回ご紹介するこちらの事例集の中には、カスタマイズ賃貸の第一人者である青木純さんが代表取締役を務める「(株)メゾン青樹」や、廃校を誰にでも開放されたアートセンターにリノベーションさせた「アーツ千代田3331」など、11の先進的な取組事例が紹介されています。

閉校となった中学校をアートに関わるイベントやスペースとしてリノベーションしたアーツ千代田3331。校庭は芝生化されていて、まちに開かれた気持ちの良い空間になっています。

閉校となった中学校をアートに関わるイベントやスペースとしてリノベーションした「アーツ千代田3331」。校庭は芝生化されていて、まちに開かれた気持ちの良い空間になっています。(画像引用元)

事例紹介:丸順不動産(株)の長屋・古家のプロデュース事業

11の事例全てご紹介したいところですがここでは、大阪で大正・昭和期の長屋・古家をまちの財産として再生し、新たな価値を付与することで、物件とエリアの価値向上に取り組んでいる丸順不動産(株)を取りあげたいと思います。

二つの危機

丸順不動産(株)は大阪市阿倍野区昭和町でまちの価値向上に取り組む地域密着の不動産屋です。こうした「まちの価値向上」に取り組むようになった経緯は二つあって、一つは大手不動産流通会社の台頭、もう一つは阿倍野エリア自体の衰退がありました。大手不動産屋が進出してくるにあたっての危機感と、空き家増加といったまちの衰退を目の当たりにして導入されたのがタウンマネジメントの視点です。

古い長屋はまちの財産

古い長屋をまちの財産として捉え、「家賃は安くても良い人に貸したい」というニーズを持つオーナーを対象に、人をひきつける魅力のある人、情報発信力のある人、質の高い仕事や商売をしている人などをテナントとして誘致し、彼ら彼女らに物件を再生してもらうことで、阿倍野エリアの空き家問題の解消とまちづくりに取り組んでいます。

有形文化財に登録された昭和町駅の近くにある四軒長屋。こうした古い長屋をまちの財産と捉え直し、オーナーの理解と協力を得つつ、感度の高いテナントを誘致するという仕事に取り組んでいるのが丸順不動産です。

有形文化財に登録された昭和町駅の近くにある四軒長屋。こうした古い長屋をまちの財産と捉え直し、オーナーの理解と協力を得つつ、感度の高いテナントを誘致するという仕事に取り組んでいるのが丸順不動産です。(画像引用元)

魅力的なテナントを丸順不動産が自ら厳選していることや、SNSを駆使して情報発信をマメに行って感度の高いテナントを集めています。

丸順不動産(株)(ウェブサイト)
丸順不動産(株)(Facebook)
暮らしや商い、地域の価値向上に不動産を活かす(AIA>まちづくりテキスト)

高齢のオーナーと若いテナントの間に立つ通訳者として

不動産をお持ちの方は年配の方が多い、かたやアイデアや行動力はあっても資金力のない若いテナント、その間の溝を丸順不動産が埋めようとしているのも大きなポイントです。資金力のないテナントに対しても、オーナーに改修費用を負担してもらう代わりに、費用回収期間として15年の定期借家契約締結をアレンジするなど、双方のニーズをうまくマッチングする通訳者としての役割を担っています。

空き家、空き室が増加している現代、まちづくり(タウンマネジメント)の視点を持って仕事に取り組んでいる、”エリアをつくる”不動産屋は今後ますます必要とされるのではないでしょうか。

空き家、空き室が増加している現代、まちづくり(タウンマネジメント)の視点を持って仕事に取り組んでいる、”エリアをつくる”不動産屋は今後ますます必要とされるのではないでしょうか。(画像引用元)

利用の構想力が試される

丸順不動産が取り組むタウンマネジメント視点からの長屋プロデュース事業にも言えますが、これからは建物をスクラップ・アンド・ビルドで建てることではなく、利用の構想力を活かしたビジネスが必要になるわけです。不動産ストックをまちのコンテンツとしてどのように利用するか思い巡らせることが大事です。まちの歴史や文化をヒントに、これからのまちのビジョンを実現するため、新しい取り組みが次々と生まれていく/そうあるべき時代になったのではないでしょうか。

場の産業には、従来の建築・住宅分野では扱ってこなかった事柄についての経験や思考法、クリエイティビティが求められます。不動産や建築の専門知識は必ずしも必要はなく、誰かの力を借りればいい。最も必要な力は、生活する場から発想する「利用の構想力」であり、これは職種を問わず持てるもの。誰にも始めるチャンスはあります。

「箱の産業」から「場の産業」へ 人口減時代の住宅産業のカタチ

「箱の産業」から「場の産業」へというフレーズは東京大学大学院教授の松村秀一さんが提唱する概念です。

「箱の産業」から「場の産業」へというフレーズは東京大学大学院教授の松村秀一さんが提唱する概念です。(画像引用元)

MAD Cityが取り組むまちづくり

不動産を管理・仲介するだけでなく、人がまちで生活していく上で必要なサービスや新しい価値を提供していくこと。不動産単体ではなくエリアに着目すること。まちを動かす多様な職種の事業者、幅広い分野の関係者と連携すること。人口減少や超高齢化、空き家の増加などに直面している現代、これからの不動産屋はこうした不動産ストックビジネスに必然的に取り組まざるを得ないと思います。

MAD Cityでは地域ディベロッパーとして不動産の再生とまち全体の価値向上に取り組んでいます。こうしたMAD Cityのまちづくりの取組について、取材や視察でご説明させていただいています。ご希望される方または団体はこちらまで是非ご連絡ください。

取材・講演依頼などのご相談はこちら

(サムネイル画像はこちらのサイトから引用させていただきました。)

(2016/04/04)

著者プロフィール

funahashi taku

funahashi taku

空き家を魅力的な「まちのコンテンツ」に生まれ変わらせたり、社会的課題解決のツールとして活用したい、そんな観点から書いているブログ「空き家グッド」を運営しています。2015年6月からはMAD Cityのウェブメディア「madcity.jp」に記事をちょくちょく寄稿しています。
http://akiya123.hatenablog.com/

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