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呉服、飲食、提灯、工作。松戸の4者が考える、私達にとってのインバウンド

千葉県松戸市は、宿場町として古くから栄えた町。そんな当所にも、インバウンドの波がやってきている。ここで日々、商売をし生活している人たちは、そんな状況をどう考えているのか。

今回は松戸商工会議所の平成30年度千葉県小規模事業者支援提案型事業の「まち創生インバウンドへの取組」として、江戸時代から続く家業を持つ方から、市外からやってきてこの地で店を営む方まで、年齢と性別を超えた4名に集まっていただいた。店舗という定点から町を見つめる彼らの目には、どのような時代の変化が写っているのだろうか。まちづクリエイティブ代表取締役の寺井元一さんを聞き手に、座談会を行った。

Text / Edit:Shun TAKEDA
Photo:Yutaro YAMAGUCHI

【本事業は千葉県小規模事業者支援提案型事業により実施しています】

創業180年の葛西屋商店は、現代の暮らしの中に伝統文化を紡ぐ

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まず参加者の皆さんにM.E.A.R.Lの目的について説明するところからスタート。

今日はこの松戸市でお店を営んでいる皆さんに集まっていただきました。それぞれすでにご面識や交流がしっかりあるわけですが、改めてどんなお仕事をされているか順番に聴かせてもらえますか。

――まず呉服店・葛西屋商店の中山さんからお願いします。

中山 改めまして、中山です。お店は僕で7代目。創業は1839年で、今年180周年を迎えることになりました。昨年父を継いで社長に就任したところなんです。

1839年創業、葛西屋商店の7代目となる中山晃一さん。

1839年創業、葛西屋商店の7代目となる中山晃一さん。

――呉服店としてはどういう形態なんでしょうか?

中山 おそらく松戸市内では一番古いんじゃないでしょうか。呉服を売るのがもちろん本筋なんですが、それを通して和の文化を伝えることも大切にしていて、着付け教室や着物でのお出かけ会もやっています。着物を着る機会を増やすことで、その魅力を知っていただこうと思っているんです。

――文化を伝えるのは、中山さんの代から意識して取り組んでいることなんですか?

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中山 そうですね。父の代はもっと世の中が貧しかったこともあり、着物を所有する喜びが強かった。呉服は高級品ということもあって、買うこと自体の価値を提供できていました。

一方でいまは断捨離など話題の、所有よりもスマートに生活する喜びが強い時代。なので着物を持つ喜びよりも、着て楽しむ喜びの方に注目しているんです。現代の日本人女性でも着物を着てみたい、という方が全体の8割〜9割ほどいらっしゃるんです。でも実際に着ているという方は1割ほど。その乖離をどれだけ減らせるか、ということを考えています。

――なるほどです。いろんな試みをされているとは思うんですが、今の顧客層というのはどんな方たちなんですか?

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中山 呉服店というのは顧客が販売員の年齢と重なってくるものなんですね。父の代の時は、60〜70歳ほどの女性の販売員が多く、お客さんもその年齢層が多かった。今は販売員も代替わりをしまして、若返りを図っています。年齢としては30〜40代。結果、お客様の平均も4、50代になってきましたね。

――販売員と重なる、というのはおもしろいですね。売り手との対話が購買に大きな影響を与える商品なんですね。

中山 そうなんです。ただ呉服店は数自体が減っていて、跡継ぎ問題が解決できず廃業されるところも多い。市場規模自体も20年前は1兆2000億円ほどあったんです。それが今、どれくらいだと思いますか?

――結構減ったということですよね……。半分くらいかな、5000億円あたりでしょうか?

中山 これが今、2800億円ほどまで落ちているんです。ものづくりとしての着物に関する市場がこうなっていくと、技術の継承なども今後途絶えたりしていくのだろうな、と危機感を感じていますね。

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一方で、時代とともに技術のあり方も変わり、インクジェットが着物の世界でも増えてきました。これまでは型友禅や手描き友禅といった技術があったわけですが、インクジェットでも「素敵」「かわいい、着てみたい」という女性もいらっしゃる。職人自体も高齢化で減っているためこれまでの技術は失われてしまうかもしれないけれど、新しい技術で高品質なものづくりを目指す道もあると個人的には思ってます。

例えば伝統的な技術である友禅染めにしても、その歴史は2、300年と着物全体の歴史から見ると最近のもの。新しい技術はどんどん登場していきますし、また着物の着方についても現代の主流は明治以降に浸透したスタイルだったりするんです。

――温故知新のように、技術を変えて価値を残し伝える、ということですね。しかし市場規模がこれだけ落ち込んでいるというのは、単純に商品として売りにくいものである、ということでもありますよね。そこをどう乗り越えていくイメージなのでしょう?

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中山 市場規模は確かに落ち込んでいるんですが、これは同時に競合も多く減っているということなんです。加えて先程お話したように、着物を着てみたい、という女性は根強くいると。そういう方にどう振り向いてもらえるか、です。着やすいものや、絹織物ではなくても、綿やポリエステルなどお求めやすいものもたくさんある。そういった導入編の着物をどう用意するかじゃないでしょうか。あとはお下がりですよね。家のタンスに眠っている着物を、直したり加工したり、ということもできますよね。その活用法についてアドバイスできるお店でもありたいと思っていますね。

――確かに残っている着物があっても、どうしたらいいかわからないという方も多そうですね。

中山 ぜひ相談してもらいたいですね。そして「お出かけ会があるので、今度一緒に着ていきましょうよ」とお誘いして、着物の魅力を語りあうことで、お店としても信頼関係を築いていけるのではないか、と思っています。お直しに関しても、技術のある業者さんや職人さんを多く知っています。このあたりは老舗ならではの強みでしょうか。

おかげさまで売上も昨年は上がりました。これまで置いて売っていたものを、提案型の売り方にする。店自体も入って楽しいお店にどうしたらいいか、というのも考えているところです。

戦後混乱期、女手ひとつの屋台からはじまった家族経営の酒処ひよし

――今日の会場でもあるこの居酒屋、酒処ひよしはいつからはじまったんでしょうか?

日吉七緒(以下、七緒) うちいつからだったっけ? 壁に書いてあるんですよ。うん、昭和24年ですね。私の祖母が戦後に屋台ではじめたんです。祖父が特攻隊で亡くなったそうで、女手ひとつでのスタートだったと聞いてます。

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創業者である日吉ヒチさんの写真。

昭和24年の文字が見える営業許可証。

昭和24年の文字が見える営業許可証。

――七緒さんはずっとお店で働いてるんですか?

七緒 一回働きに出て、30歳くらいから手伝うようになったんですね。3代目の兄の大は、修行に出ていますね。兄が受け継いでから忙しくなったのもあり、手伝うようになったんです。それが10年前くらいですね。

妹の日吉七緒さんは接客と給仕を担当

妹の日吉七緒さんは接客と給仕を担当

日吉大(以下、大) 僕は最初教師になったんですよ。高校卒業した時にバブルが弾けて、まず大学に行きました。それで卒業してから2年間、中学の社会科の先生をやって。24歳になる時に修行も兼ねて勤めに出ました。居酒屋さんで、洋食と和食両方学べたのがよかったですね。

――代替わりしてからの10年で、何か変化はありました?

七緒 まず常連さんがだいぶ変わりましたね。父世代の常連さんはもうお年なのもあって来られなくなり、やっぱり店主に近い若い世代の常連さんが増えました。

 そうそう昔はうちの父が怖いといって、若いお客さんがあまりつかなかったんですよねえ(笑)。

先代から店を継ぎ3代目となった兄・日吉大さん

先代から店を継ぎ3代目となった兄・日吉大さん

七緒 でも今は女性のお客さんも増えました。変なからみ方をする人は追い出すので、安心して来ていただけてます(笑)。「ああ、今日も疲れたなあ」という女性の方が静かに飲んでいられるようなお店だとは思います。

 僕が70歳になったらお店が100周年になるんですよ。とりあえずその一区切りを目指していこう、とは思ってます。

――常連さんが入れ替わったことについて、何かお店の方でも変えた部分はあるんですか?

七緒 メニューはけっこう変わりましたね。父の代はもう少しがっつりというか、お刺身もブツで出したりしていました。今はもう少し繊細になったかな。仕入先もこれまでは主に南部市場だったんですけど、産地からWEBで仕入れてます。特にお魚などは最近は狙ってWEBで仕入れてますよ。鮮度や味もとってもいいんです。

 めちゃくちゃ乱暴にいうと、先代の時はしょっぱくてにんにくの味がする、そういうものが好まれていたんですね。でもそれだけじゃね(笑)。薄味でおいしいものも、これまで好まれていたものも共存させられるようにはしました。例えばよくでるのはオムレツ。中華風なんですけど、それは自分がおいしいなと思ったお店の味があって、参考にしたりしましたね。

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――松戸という町との関わりという部分で、何か感じていることはありますか?

七緒 松戸は古い町なので例えば、旧水戸街道があったよ、船着き場があったよ、そういう土地のものや歴史を活かしたまちづくりがいいんじゃないかな、とは思います。古民家も多いので、それをつぶしてフラットにするよりも、活かしたまちづくりに期待したいですね。

きりもりする兄妹の取材中は、お二人のお母さんである早苗さんがお店を回してくれていた

きりもりする兄妹の取材中は、お二人のお母さんである早苗さんがお店を回してくれていた

――なるほど。ひよしとして、こういう方向性でやっていきたいってことはあるんですか?

七緒 それはもうシンプルで、おいしいものを食べてもらいたい、食べさせたいってことに尽きますね。

 そうだね。親がまだ元気なうちは、まずはしっかり続けていくこと。それでその後、妹と二人になった時にはそれぞれが趣味を大切にしながら暮らしていきたいですね。

松戸唯一の電子工作スペース・工作室アルタイル

――佐々木さんはがらっと業種が変わりますね。

佐々木 デザイナーとして仕事をしながら、工作室アルタイルというお店をやっています。そもそも今回私だけ松戸にゆかりがないんですよね。出身は我孫子で常磐線ユーザーでした。でも松戸には昔から来ていたんです。松戸ってアーケードゲームのメッカで、ゲーセンカルチャーを愛する人間として通ってました。

工作室アルタイルを運営する佐々木のぞみさん

工作室アルタイルを運営する佐々木のぞみさん

――バンダイがあって、プリクラがたくさんはいっているビルがありますよね。

佐々木 私は音ゲーをよくやっていたんですけど、例えば格闘ゲームでも上位ランキングの人がよく来ていたり。このあたりのアーケードゲームファンは、わざわざ松戸のゲームセンターを目指す、という人も少なくなかったと思いますよ。

――そんな側面があったのは意外です! それもあって松戸で?

佐々木 そうですね。今年で5年目に入ります。工作室アルタイルは、レーザーカッターやUVプリンターなどの機器を揃えていて、電子工作を気軽に楽しんでいただける、みんなでシェアするラボみたいな感じです。渋谷のデザイン専門学校に通っていた時に、似たようなお店を使っていたんですけど、スタッフに技術的な知識があまりなくて使いづらくて。その時の経験があるので、うちはそこに注力しています。何かつくりたくて困っていたら、とりあえず持っておいで、というような場所ですね。

――ということは、佐々木さんはビジネスオーナーでありつつ、工作室のお姉さんでもあると。

佐々木 そうなります。例えばレーザーカッターを使いたい、というような人は決して初心者ではないけど専門の機械を使うのにまだ不安を感じる中級者。そういった方のケアもしています。他には、個人でものづくりをする人たちが、販売会やイベントなどの情報交換を行うコミュニティにもなっていますね。

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――デザイナーとしてのお仕事に留まらず、そういった場の運営も行いたいと思ったのはなぜなんでしょう?

佐々木 もともと電子工作室って東京の西側に固まっていて、東側になかったんですよね。材料を持って電車に乗るのも嫌だし、まず自分がほしいなと思ったのが大きいです。あと松戸っていい場所で、上っても下ってもどちらにもハンズがあるんですよね。

――松戸自体にハンズはないけど、近くの駅にハンズがあると。

佐々木 ハンズに挟まれた町なんです(笑)。あと、このあたりだと松戸が新しいことを始める人に、寛容な町だと思うんですよ。これが柏だとそうはならないというか。そういう理由で松戸を選びました。仕事としては場の運営もそうですが、工作室の機械を自分で使って、商品を作りそれを卸すということもしています。

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――工作室であり、製造工場でもあるんですね。

佐々木 まさにそういうことです。あとは平行してデザイナーとしての仕事も続けていますね。

――製造している商品というのは、どういうものになるんですか?

佐々木 アクセサリーパーツがメインですね。その中でも特に売れているのが、ネイルパーツ。これは紙製で、パターンを印刷しレーザーカッターで切ったもの。このネイルパーツは直接爪の上に置いて、あとは樹脂でコーティングするだけで手軽にネイルアートを楽しむことができるんです。これは日本だけでなく、韓国などアジアに向けて売っていますね。

実際に佐々木さんも使っているという商品のネイルパーツ

実際に佐々木さんも使っているという商品のネイルパーツ

――これって大手も似たことをしているんですか?

佐々木 それが調べる限り、ほかはどこもやってないのである意味独占企業ですね(笑)。もともとハンドメイドで雑貨をつくる人のために、もっと大きなサイズのものを販売していたんです。そうしたらネイル関係の方から「ネイルにも使えるから、小さなものもほしい」と言われたのがきっかけですね。

――未知数な需要に刺さったと。

佐々木 最初はまったくネイル業界からの需要なんてものは想定してなかったんですよね。ただ実際に欲しいといわれ、つくってみたらヒットしてしまって。不思議な形で主軸の商品ができてしまいました。

――工作室という場所としても、あるいは一人のデザイナーとしても、佐々木さんは今日のメンバーとは一緒に仕事ができそうですね。

佐々木 ほんとそうなんですよ。自分でつくったデザインパターンで反物や提灯も技術的にはつくれるわけですし。先程からお話を聞いていて、一緒にできそうなアイディアが浮かんでうずうずしてしまってますね(笑)。

享保年間から11代続く八嶋商店が売るのは、商品とその背景にある文化

八嶋 うちは江戸時代からやっている提灯と際物(きわもの)屋です。今でもパッと出ていなくなるような芸人さんのことを「キワモノ」と言うでしょう? 羽子板やお雛様などその時期だけに使われるものを昔の人は際物と呼んでいたんですね。

八嶋商店11代目の八嶋正典さん

八嶋商店11代目の八嶋正典さん

――際物の語源はそこなんですね。

八嶋 そうなんですよ。そんな際物をなぜ提灯屋が扱うかというと、昔は人形や兜って今のようにリアルなものを飾っていたわけじゃないんです。江戸時代の庶民は節句のために高価な物を買うことなんてできないから、紙に絵を描いたものを飾っていた。そんな庶民用の際物は、提灯屋がつくっていました。だから祖父の代までは自分たちの店のことを、際物屋なんて呼んでいたんです。

――お仕事内容やルーツを聞いているだけで勉強になりますね。お店は、八嶋さんで何代目になるんですか?

八嶋 10代目ですね。創業は江戸の享保年間。1720年代ですね。昔は竹を取ってきてそれを割って骨組みをつくり、紙を貼るという提灯づくりの工程全部をやっていたそうです。竹を扱うから屋号は竹澤屋。通りがいいから八嶋商店としてますが、ずっと続いている屋号が実はあるんですよ。

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――八嶋さんが家業を継がれた頃というのは、どんな状況だったんですか?

八嶋 バブル直前くらいですかね。バブルの頃というのは、雛人形などはものすごく売れたんですよ。提灯なんて見向きもされないような時代で(笑)。節句人形をがんがん売っていたのが、高度経済成長〜バブルくらい。でもその頃というのは伝統行事というのが下火になっている頃。なので提灯はあまり恩恵を得られなかった。

逆に今の時代は節句人形は下火になり、そのかわりお祭りなど伝統行事が各地で復活しつつあるので提灯の需要が増えています。提灯の需要が増えているもうひとつの理由は、提灯屋自体が減っていることもありますね。

――ああ、なるほど。つまり葛西屋さんと同じですね。市場は小さくなっても、競合が減っていると。

八嶋 そうそう。あとWEBを使った販売網がそこにうまくはまっている。うちでもWEBサイトを持っているけど、そこを通じての注文というのは少なくない。例えば東北などは特に多いんです。なんでもそちらにはもう提灯屋が残っていないらしく、集落のお祭りを存続させたいから、という理由でいただく注文などもありますね。

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――そもそも提灯の需要って、お祭りや飲食店などになるんですか?

八嶋 その2つがやはり多いですね。まず提灯って個人ではなく、グループ単位で持つもの。コミュニティのシンボルとなるものなので、多少値段がかかっても「顔」となるいいものが欲しい、という需要が根強くあるんです。

――確かに安いからこの提灯にしよう、という選び方はあまりされないものでしょうね。

八嶋 だからこそリペアもしっかり対応しますし、お客さんにちゃんと説明して売っていく必要がある。例えば「こういうお祭りなんですが、どう飾るのがよいですか」なんて質問をいただくこともあります。

――お客さんの側に、使い方に関する知識がない場合が多々あると。

八嶋 お祭りを再興しよう、なんてことは最近多くて、そういう場合に今みたいな質問をいただくことがありますね。提灯屋さんなら知ってるでしょ、と。なので神道全般に関する知識などは必須になってきました。文化を伝承しなければ売れない、という点では中山さんと同じですね。

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――売っているのは提灯や際物でも、その背景にある文化自体も教えていらっしゃると。

八嶋 そうなんです。いただいているお代は、その時の伝統文化に関する語り賃を含んでいるものだと考えてもいいかもしれないなと思っています。

――八嶋さんと中山さんは、業態的にも考え方もかなり通じるところがありますよね。お客さんがかぶっていたりということもあるんですか?

八嶋 ありますね。葛西屋さんからの紹介できました、という人はよくいらっしゃいます。うちは製造販売業。その部分ではアルタイルさんの苦労やおもしろみもわかる気がしますね。思いがけないものが、ひょんなことで売れたり、とかね。

中山 八嶋さんはやっぱり職人さんだと思いますね。僕は仕入れて売る、という意味で商人なんですよ。

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八嶋 ですね。うちは職人が店先でつくったものをそのまま売っている、土産物屋みたいなもんだからね。

――お商売の中心は今も提灯や縁起物を売った売上、ということなんですか?

八嶋 そうですね。お金を得るという意味ではやっぱりそうなります。人形は単価が高いのもあって、提灯と縁起物で半分半分くらいですね。アーティストとコラボして、新しいまねき猫などもつくりました。節句人形はちょっと厳しいですけど、まねき猫などの縁起物や提灯に関しては色んな人とコラボすることができそうです。

アーティスト・松岡マサタカさんとコレボレーションして制作したまねき猫

アーティスト・松岡マサタカさんとコレボレーションして制作したまねき猫

松戸の店主たちから見た、今、町に必要なインバウンド対応

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――松戸でも「そろそろインバウンド向けに何かやろうか」なんて話も聞こえます。これって今までにはない動きだったんでしょうか?

 そもそもインバウンドって言葉自体知ったのが最近だもんね。数年前に爆買いがメディアで話題になった頃かな。

中山 確かにそのくらいからよく聞くようになりましたよね。うちにも外国からのお客さんはちょこちょこいらっしゃって、特にMAD Cityに関連した人たちが連れてきてくれることが多いですね。

佐々木 うちもそのパターンで来てもらえてます。

 物珍しいのかわからないけど、うちはふらっと来てくれる人が意外と多い。多分ちょうどいいんですよ。チェーン店ではつまらなくて、でも気難しそうなおじいさん店主のお店は気が引けるというか。なんてことない町場の居酒屋って感じがラクなんでしょうね。

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――飲食店という、注文して食べれば体験できる業態の強み、というのもあるかもしれないですね。

八嶋 確かにそれはあるかも。提灯がほしいと思っても、どういうものがあるのか、何を買えばいいのかってことをコミュニケーションとるのは、お客さんもこちらもハードルが高いでしょうね。

佐々木 うちは工作室という業態もあって、観光客というよりは近くに在住の外国の方が多いです。日本語はほとんどしゃべれないんだけど、恐らく奥さんが日本人なんだろうなというおじさんがいらっしゃいます。休日になると来てくれて、何か熱心につくっていますよ。

――業態によって来られる方もやっぱり変わっていくんですね。ちなみに、インバウンド向けに何かチャンスがあったらやってみたいことってありますか?

中山 おもしろいなとは思いつつ、正直なことをいえば、やらなくても商売としては困ってないという側面もあります。なので労力に見合うか、ということも考えます。もちろん日本文化を伝承する、という意味ではやらなくちゃいけないなとは思ってるんですけどね。

八嶋 うちも同じで、競合が減ってでも潜在需要は残っているという状況もあるので、今インバウンド向けにがむしゃらにやらなくてもいいのかなとは思います。それ以前に大事なのは、まず発想として松戸に来た外国人観光客をどう捕まえるかではなく、自分たちでどう松戸に来てもらえるかを考えることだと思うんです。

わざわざ松戸に行くことで得られるもの。それを伝えて、知ってもらって、来てもらう。そう取り組んでいくのがいいなあ。

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七緒 英語で対応できるのが一番だと思うんですが、うちは飲食なので注文がわかればなんとかなる。それくらいだとスマホを使った翻訳でも、コミュニケーションがとれるんですよ。先日も外国の方がいらっしゃったんですが、その方は大豆アレルギーがあるということで、醤油と味噌がだめだそうで。

――和食のお店でそれはなかなか大変ですね……。

七緒 そうなんですよ。何を出せばいいか、と思ってお刺身をお塩で食べていただきました。そういうイレギュラーな対応もできます。その意味では外国人だから、日本人だから、という差はあまりないんじゃないでしょうか。困っていたら話しかけてみる。変に気負うつもりもなくって、楽しい思い出づくりのお手伝いができたらな、とは思ってます。

 加えて僕の場合、トライアスロンやってるので、そこで繋がった人たちにお店に来てもらうということはできそうですね。店主と話すために出かける、というのもお店の体験のひとつですから。それにトライアスロンだとランと自転車と水泳の3種目だから、運動好きにはそのどこかで当たるんですよ。そうやって趣味でつながれれば、お店にも気軽に来てもらえそうですし。

――お話を聞いていると、商売として近々に外国人客に向けて対応しなければ、というわけではなさそうですね。それよりも+αの価値づけとしてインバウンド対応の可能性がありそうです

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中山 最近だと海外の方のほうが、日本の伝統文化に詳しいなんてことも多い。そういう方の一助にはなりたいんですよね。その意味では、中長期的に考えていきたいとも思います。

八嶋 あとは行政の交通や観光の担当の方に、正しい情報や歴史を伝えてもらうことも大事ですよね。

――呉服、提灯、飲食という部分では日本文化の魅力を伝えやすいと思いますが、アルタイルではどういうことができそうでしょう?

佐々木 若い女性がうちのターゲットになりつつあるんですが、そう考えた時、例えば外国を自国のように扱うことがトレンドでもあると思うんです。例えば若い女の子の間で台湾や韓国のカルチャーが流行っているのも、ほとんど国内の延長くらいの距離感なのも大きいと思います。なので相互に文化的な交流ができたら、とは思ってますね。

例えば爆買いって、同じものをみんながたくさん買うから話題になったわけですが、実はニッチで売れているものもある。友人でずっとチェコとフランスに毎年買い付けに行ってる人がいるんです。デコパージュというペーパーナプキンなどの図柄を転写する技法でものづくりをしてる人なんですけど、彼女の需要を満たすものがチェコとフランスに根強くあると。

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――絶対数は少なくても、旅の目的が明確な人もいると。

佐々木 そうなんです。彼らの需要をしっかり掘り起こして、しっかりサポートしてあげるとか。あるいはその目的を満たした後の延長上で、思い出をつくって帰ってもらうための工夫はできそうですよね。毎回東急ハンズに寄るんだ、という人がいたら「じゃあ世界堂に一緒に行ってみよう」といった提案はできそうです。

――なるほど。お話を聞いているとみなさんに共通するのは、八嶋さんが話していたような「客を取りに行く」よりも「来ていただいて選んでもらう」形でのインバウンド対応があっていそうですね。

実は皆さんとは引き続き、インバウンドに関連した企画を一緒に考えていきたいと思っているので、また集まっていろいろお話させてください。今日はありがとうございました!

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※本記事はmadcity.jp および M.E.A.R.L の共通記事となります

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