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古民家スタジオ旧・原田米店アトリエトーク|池田剛介×大山エンリコイサム トーク

9月29日(木)18:00~21:00 / 旧・原田米店奥 古民家

旧・原田米店から、入居アーティストの活動を発信していくシリーズ「旧・原田米店交流会」。
その第一弾のゲストとして、アーティストの池田剛介さんと大山エンリコイサムさんのお二人を迎え、
松戸へ来ることになったきっかけや、スタジオや作品と自身の関わり、
制作に対する意識などについてお話を伺いました。
今回はそのレポートを、写真や映像と共にお届けします。

日時:2011年9月29日(木)18:00~21:00
ゲスト:池田剛介、大山エンリコイサム
司会:寺井元一
会場:旧・原田米店奥 古民家(MAD_Lab.)

1:松戸との関わりについて

寺井:本日のトークゲストは、池田剛介さんと大山エンリコイサムさんです。僕は元々渋谷に壁画ですとか、アートというのかストリート文化というのか、そういう関係の仕事をしていて、その時に、大山さんと出会いました。ストリートカルチャー、グラフィティなどと呼ばれるものは社会問題とも、最新のアートともみなされることがあって、その狭間にいる人が彼かなと思っています。ご本人はグラフィティの人ではないけれど、そこから着想を持ちつつ、先ほどの「狭間」で色々と試行錯誤をされていて、作品も作るし、評論でも活躍なさっている。2010年の春に、根本(松戸駅西口、北側の地域)に壁画を制作する企画があり、大山さんと松戸で一緒するようになったのはそれがきっかけです。

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一方で池田さんは、昨年の松戸アートラインで、ガレージでの展示をしていただいて、それで今でもそこをスタジオに入居いただいています。ご本人はクールな感じに見えるんですが、作品はとてもロマン溢れるものだなあと最初見た時から感じていて、眺めても眺めても飽きないなあ、と。ずっと一緒に何かやりたいなと思っていた人がイベントをきっかけにしてこうやって場所を借りて下さって、松戸に来て下さっているというのがとても嬉しいです。大山さんの方は来月ニューヨークに行かれるということで、松戸から卒業というか旅立つという……

大山:卒業というか「休学」くらいで(笑)

寺井:休学ですね。また戻って来れたらいいね、と聞いているんですけれど、ニューヨークにレジデンスするというのはアーティストにとって素晴らしい経験ですね。それから池田さんの方はちょうど、僕は地元が関西の方で、兵庫へ帰省をした際に彼が大阪の堂島で錚々たる面子のアーティストたちと一緒に展示なさっていて、活躍されているなあと嬉しくなったんですけれども。今日はそんなお二人にじっくりとお話ししていただこうと思います。

 

池田:よろしくお願いします。クールそうに見えて作品にはロマンが溢れる、ということでしたが、本人としてはふつうにロマンティックな人間だと思っています(笑)。ご紹介して頂いたとおり「松戸アートラインプロジェクト2010」の際にこの敷地内にある空間で展示をしまして、その流れで現在もスタジオとして使用しています。もともと屋根のあるガレージで、かなり荒れた状態だったんですが、何となくその場所が気になったんですね。建物としてしっかり空間があるってわけでもないし、かといって外というわけでもなく、建物の内側と外側の中間地帯のような空間でした。

「アートラインプロジェクト」の時の作品が、ガレージ空間に雨を降らす「無人島に降る雨」というインスタレーションです。天井から水滴を落とし、床には4メートル×2メートルくらいの土台があり、天板の上で水滴が多様に形を変えながら動いて、土台の内部にあるタンクに溜まった水をポンプで汲み上げて再び雨にする、という水の循環を用いた作品でした。

池田剛介「無人島に降る雨」マグネットポンプ、撥水加工材、他・3600×1800×3000mm・2010年
 

その後、ちょうどこの作品を展開したいと思っていたタイミングに、さきほど寺井さんから紹介してもらった「堂島リバービエンナーレ2011」に出品することになり、キュレーターの飯田高誉さんから、特にこの雨の作品を出して欲しいと言って頂きました。7メートルくらいある天井の高いエントランスに展示することになったんですけれど、そのための準備が大変で。というのも、水を下からポンプで汲み上げるのですが、実際に近い条件で作ってみないことには、水滴の落ち方の細かな調整ができないんですね。なので、同じような高さから雨を降らせる実験をするために、ガレージの屋根の上に2階を自作することにしました。

寺井:帰りに、あの、外に出たら分かるんですけれど、ガレージに単管で組んだ2階が出来てるんです。入居者が中をいじることは、ふつう不動産的にはNGなんです。僕らが不動産サービスをスタートさせるにあたって、改造可能な物件を揃えて、むしろいじってもらって良くなるみたいなことを夢見て始めたんですけれど、まさか2階を作るという人がいるとは思ってなかった(笑)。

池田:「アートラインプロジェクト」の時には、雨の作品は、奥まったスペースにひとつの循環的な閉鎖系を作る、というコンセプトで、タイトルにも「無人島」という言葉が入っていました。そうして空間の内部に雨を作っていたものを、もう一度外に開いていくような感覚で堂島での作品に取り組みました。ガレージの外に二階を作っていくような経験も、そういう「外」の感覚と繋がっているし、実際に会場で作品の設置されるエントランスも、まったくの屋外ではないのですが、ホールの内部空間と、外とのちょうど中間にあるようなガラス張りの空間でした。

池田剛介「Exform」ミクストメディア・6000×2000×7000mm・2011年・photo : Kozo Takayama

 

水の循環する仕組みは、先ほど説明した松戸での作品とほぼ同じです。松戸では実験的につくってみた、という段階だったのを、さらに作品としての完成度を高めるかたちで展開しました。そうやって松戸から始めたプロジェクトが現在までつながってきています。

寺井:ありがとうございます。では大山さん、お願いします。

大山:ちょうど1年くらい前に「松戸アートラインプロジェクト2010」というアートプロジェクトが松戸であって、僕と池田さんも参加しました。池田さんはさきほどのお話にもあったように、そこで発表された作品をさらに展開しています。僕はその半年ほど前、2010年の3月に松戸市の根本3丁目で壁画を描きました。それが松戸に関わった最初のきっかけですね。その時はオランダからゼッツ(ZEDZ)というストリートアーティストが来日していて、僕とゼッツと、もうひとり日本人のアーティストの3人で描きました。その時は地元のいろいろな方に大変お世話になりまして。今日そちらに座っていらっしゃる城塚さんには夕飯まで御馳走になって、感謝しています。それが僕のなかで松戸に対する第一印象としてあって、なんて素敵な街なんだろうと思いました。それはいま松戸にいる動機のひとつでもありますね。

それで、この壁画はコラボレーションということもあって普段の自分の作風とは違うものになったのがひとつ面白かったのですが、それ以上に、サイズが非常に大きかったんです。バイパスの側壁なので右肩あがりのやや変則的な形をしているのですが、とにかく横に長い。幅70メートルくらいあるかと思います。このサイズを描かなければならないということで、初めてスプレー塗料を中心に使ったのですが、結果的に自分のなかで表現的にも技術的にも可能性が広がりました。あと、屋外で壁画をかくということの楽しさを改めて感じたんですね。その後、2010年の秋に「あいちトリエンナーレ2010」という国際展に参加したのですが、その時も松戸の経験を活かして、縦横ともに10メートル以上はある巨大な壁画をかきました。

大山エンリコイサム「長者町 壁画プロジェクト」(あいちトリエンナーレ2010) コンクリート壁面にスプレー塗料、ラッカー塗料・13×15m・2010年

 

話が前後しますが、作品のことをもう少し言うと、僕は「Quick Turn Structure(急旋回構造)」というモチーフを軸にして、主にペインティングやドローイング、壁画を制作しています。もともとはグラフィティから影響を受けたもので、その後ライブ・ペインティングなどの活動を続けていくなかで独自のものになっていきました。クイック・ターンというのはグラフィティに特徴的な線の運動を指す言葉です。基本的にグラフィティはレタリング(文字)であるため、このクイック・ターンの運動を文字組のなかにおさめていってしまう。そうではなく、要素としての線の運動だけを抽出し、抽象的な連続体に再構築したのがQTSです。
一方で、立体作品では実験的なこともやっています。「松戸アートラインプロジェクト2010」でも展示しましたが、建築材のスタイロフォームを使った「Cross Section」というシリーズは、ペインティングや壁画の作品とは一見するとだいぶ異なります。ただ、まったく別ものということではなくて、平面作品でやっていることや考えていることを、違う条件や素材のもとに展開しているような感覚が強いですね。それと、10月に東京芸術大学での展覧会に出品する予定の作品は、大和田俊さんとのコラボレーションで音を使ったかなり実験性の高いものになります。こういう実験的な試みは、やはり松戸にスタジオを構えてから特に積極的に行なっている感触があります。

大山エンリコイサム「Cross Section / Fossil」スタイロフォーム、鉄、ステンレス・2500×2000×1500mm・2010年

2:スタジオの実験性/拡張性

池田:大山さんの話を聞いていて共通する部分かもしれませんが、僕としては、これまでやってきた制作から一歩踏み出してみる、そういう機会として松戸での活動を捉えています。制作活動のなかで、自分の問題意識や技術も含め余分なものを削ぎ落としていく段階も必要なんだけれど、同時にそうして積み重ねてきたものを一歩超えて違うことをやってみる契機というものも時には必要で、僕や大山さんも松戸をそうした実験的なことが可能な場所として捉えているのかなという気がします。

大山:そうですね。ひとつには、やはり松戸のスタジオは空間が広いですよね。以前、池田さんと別の場所でスタジオをシェアしていましたが、空間がせまかった。そうなると、単純にいって実験的なことがしづらいんです。というのも、スタジオの構造や配置、例えばどこに作業デスクをおいてどのあたりに工具を並べておくのかというようなことは、作品の制作プロセスと密接に結びついている。普段から制作がしやすいようにスタジオの中身もアレンジしておくわけですね。そのようにして、ある程度まで固定した制作手順と固定したスタジオのアレンジメントがセットになって機能する。ところが、実験的なプロセスというのは固定化できずに、いろいろと試しながら普段と違うことをやらないといけないですよね。そうなると、スタジオのアレンジメント、あるいは下部構造と言ってもよいけど、それを大がかりに、また短いスパンで変更していかなければならないことが多いんです。その時に、スタジオ全体の空間がせまいと、非常にやりづらい。例えば、床にキャンバスを置いて上から垂らしてかいてみたいとして、スペース確保のために普段使っている作業デスクを動かそうとしても、そのためには周りの他のものもすべて動かさなければいけないとなると、効率悪いですよね。スタジオが広ければ、あるいは厳密に言うと、スタジオにブランク・スペースがあればそのような煩わしさは少ないわけです。実験というのはやってみないとどうなるかわからないから実験なのであって、思い立った時にぱっとやれてしまったほうがよいのですね。

大山さんのスタジオスペース風景

 

池田:広さもそうなんですが、僕としては空間自体を作りこんでいける素材的な可能性を楽しんでいます。建築物というよりも、彫刻の素材のように場所のことを考えたい。しかも半ばそこに住まう空間でもあるわけなので、ちょっと大げさに言うと、ある空間を造形しながら、そうして生み出された環境によって、僕のこの身体が生かされていくような彫刻なわけですね。

その時に、あらかじめこういう制作場所にしたいというプランを持って改装するのではなく、かといって、もともとあったガレージという空間そのままにする、というのでもなくて、周辺環境の条件をふまえながら、どのように自分が生きる場所を作っていけるかを考える実験の場所になればいいと思っています。例えば、ここの敷地は周りをマンションに囲まれていて、とても風が強い。そういう条件を利用した風力発電なんかがやってみたいとも思っています。できればそうしてここで生み出された電力で制作もしたいな、とか。制作に必要なエネルギーも制作する。特に震災以後は、そうしたエネルギーやインフラへの意識が高まっています。

自分がある場所で時間を過ごすことと作ることとは、僕にとっては切り離せない。雨の作品の場合、一つの実験的生態系のようなシステムを作品として考えています。それと同じように、周りの環境を造形しながら自分が生きることを実験したいと思っていて、それは制作と直結すると思っています。

大山:僕はまだ、そこまでスタジオという空間に思想を持っていないので、その話はすごく面白いなと思いますね。池田さんはスタジオで原稿もかかれていますが、僕はあまりないんですね。むしろカフェのような少しうるさいくらいの場所のほうが逆に集中できたりする。あと、注文したらアイスコーヒーがくるからという即物的な理由もあります。スタジオにいると缶コーヒー買いに行くのが面倒くさいという、身も蓋もない話ですけれど(笑)

池田:話を聞いていると大山さんの場合、あらかじめ一つの空間があって、空間内での配置やアレンジメントを考えている気がする。僕はわりと空間自体を造形物にしたいという気持ちがあるんですね。どうやって内側の空間を効率よく仕切っていくかとか、そういうのにはあまり関心がない(笑)。むしろ外との関係において内側がどのように拡張したり変容したりするのか、ということの方が重要だと思ってます。自由に組み替え可能な抽象的な空間というよりは、場所そのものが一つの生き物になるというか、エネルギーをそこで生み出したり消費したりしながら周辺環境と関わっていく生命体のように場所を考えてみたいわけです。

池田さんのスタジオスペース風景

 

大山:拡張という言葉が出ましたが、むやみやたらとガジェットが付け足されていくのではなく、ある種の必然性を伴いながら拡張していくということかと思いますが。

池田:生命体ということで言えば、周辺環境の固有性を踏まえた上で、そこに相応しい存在であるべきだと思っています。そもそも生物には無駄なものがゴチャゴチャくっついていたりしない。アフリカのシロアリなんかはとても複雑な巣を作り上げることで知られていますが、一日の気温差や土の質などを利用して巣の中の空気の循環を作り出したりしている。動物の非合理的な野生とか、そういう話では全然なくて、むしろ様々な環境の条件のなかで極めて合理的に、ある意味人間なんかよりよほどシステマティックに生きている。シロアリの巣なんかが理想のスタジオですね(笑)。

大山:なるほど。他方で、池田さんのスタジオは庭にあるから孤立していて、すぐ隣に他の空間があるわけではない。だから敷地の問題がないですよね。僕のところはすでに区分けされた部屋のレイアウトがあり、隣の空間を他の人が使っていたりする。つまり、ゾーニングされている。だから空間をむやみに拡張することはできなくて、有限性のなかでアレンジメントのバリエーションを探っていくしかないんです。その差は大きいのかなと思います。どちらかというと、そもそも古民家のつくり自体が畳の寸法を基準にして部屋割りをしているので、あらかじめフレーム感が強い。それをどうやってアレンジ、再配置していくかということに意識がいってしまうのは確かです。池田さんのガレージ(スタジオ)とは条件が根本的に違うなと思いますね。

 

3:制作に対する意識

寺井:しばらくお二人の話を伺っていて、実は自分の作品のことを話していたと言うより、その周辺のこと、例えば自分のスタジオの話だったりしたんですよね。一見、ズレ気味な話にも思われるかもなんだけど、実はより本質が現れていたかなと思って、すごく面白かった。つまり、そのスタジオ話の中にお二人の本質みたいなものが出ていた気がしたんです。
個人的な経験則から思うのは、アーティストさんがどういう人かって、本人がどう説明するか以前に、作品を見れば分かるなと思うんです。例えば大山さんの作品ってけっこう尖ってますよね、見た目と言うか造形と言うか。これが大山さんなんだ、って思ったらね、ご本人は一見大人しそうに見えてるけど内面はこんな感じなんだ、捻じ曲がってたりゴツい感じだなとか、僕は思うんです(笑)。
今日のお話では、その作品がそもそも生まれる、スタジオの話が出ました。僕は、大山さんのスタジオに行ったときにいつも思っているのは、ここ工場だな、と。めちゃめちゃ工場っぽい。一方で池田さんのスタジオは巨大な繭のような感じで。作品もそんな感じがします。作品はもちろんですが、そもそもの制作場所、スタジオに作家の本質が表れるのかな、なんてことを思いました。もしかしたら作品を見るよりスタジオを見るほうが、その作家のことを知るには効果的かもしれませんね。この旧・原田米店にお二人のスタジオがあるわけで、興味ある方は後でついて行って見せてもらったら楽しいだろうな、なんて思いました。
それでそろそろアーティストお二人に質問しようと思うんですが、まず僕から。お二人が、何を考えて作品制作をなさってるのか、言いたいこと、趣旨みたいなところを教えてもらえないでしょうか?

大山:僕の場合は、8年ほど「Quick Turn Structure」というモチーフをしつこくかき続けています。そのなかで大きな変化は、2007年に東京芸術大学の大学院にはいった時、それまで知らなかった現代美術の世界に触れたことでしょうか。自分の視野が狭かったな、表現の可能性はもっと広いんだな、と思いました。ただ、今までやってきたことが白紙に戻ったというわけではなくて、QTSは今後もかき続けていくつもりだし、いまだにそれが制作のメインモチーフですけれど、時に自分の作品を遠くへ投げて、まったく別のことをやってみるわけです。その遠くでやってみたことが、また制作の中心に返ってきたりする。そしてまた投げてみる。そうやって、少しずつ作品の振れ幅が増していくんです。その往復運動について考えながら、制作をしていますね。

池田:僕はもともと学部生の頃にはデザイン科にいて、広告などを専門にするようなコースでした。でも広告やデザインにはクライアントがいて、その先には消費者がいて、そうした消費者にアピールするだろうという前提のもとに、自分が作るものの必然性を説明をしなくちゃいけないんですね。僕は根本的に、こうすれば消費者にウケます、みたいな前提を設定するのが嫌なんですね。というのは自分が感じることと他の人が感じることは根本的に別ものであり、簡単に共有などできないと考えているから。アートが面白いのは、そういう既存の感覚の地平を想定することなしに作品をつくることができるところです。もちろん、一般化された基準をあてにできないからこそ独自の価値規準をつくる必要があって、そこが勝負になるわけですが。

 

4:来場者からの質問

寺井:それでは来場者の方からも、質問をどうぞ。

質問者1:ニューヨークでのスタジオは、どういうふうにしようとしていますか。
大山:具体的な空間やスタジオのスペックについては、実際に行ってみないとわかりませんが、僕の参加するレジデンシー・プログラムはPointBというところで、15年ほど前にブルックリンで始まりました。なぜPointBかというと、PointAに対するPointB、つまり自分のホームの場所に対する第2の居場所、という意味があるそうです。世界中からアーティストが集まってくるのですが、みなそれぞれ母国にPointAがあり、そしてニューヨークにPointBがあるという考え方です。そして、機会があれば何度でも戻ってこれる。この発想は、先ほど述べたような制作における往復運動にも通じるところがあるなと思っていて。何かしら、そういう体験につながるスタジオになればと思っています。

 

質問者2:お二人のいまのお話の中で、主に作品が自己の中でどうあるかという話だと思うんですけれど、メインになった話は。ではそれが外へ出た時に、どういうふうにそれを感じるのか、作品を作った後の話、それが人に見られてどう思うのかというのは、それぞれ人によって違うとは思うんですけど、お二人としては外に出るっていうことはどう捉えているのか。作品が外に出た時にはその作品をどう捉えるのかな、というのを教えてください。

大山:作品をつくること自体、おそらくひとつの外在化ではないかと思います。自分のなかのイメージやアイデアを、作品として外に出しているわけですから。ただ、おっしゃっているのは、作品が社会のなかを流通する時にどのように見られるか、ということでしょうか。難しいところですが、そこは作家にとって干渉できないところではないかと思います。鑑賞体験は十人十色なので。

質問者2:そこからまた新しい発見があるかもしれないじゃないですか。ぶっちゃけた話で言うと、何か言われて、ああそういうところがあったんだ、と自分の中で反芻してみる機会があるとか、そこからまた変わっていく。

大山:それはもちろんありますし、積極的に受け入れていきたいと思っています。

池田:制作は、自分の感覚に一つの場を与えるようなものだと思います。ぼくはスタジオでエビを飼っているんですけど、よく脱皮をしていて、2,3cmの小さなエビですが脱皮の後の殻がヒゲの先まですごくきれいに残っているんですね。それはエビのかつての姿であるんだけれど、殻を残しながら新たに生まれなおしている。作品ってそういうものなのかなという感じがします。

制作を通じて「自分のようなもの」が作品として残るんだけれど、あわよくば、それを外に出すことによって自分がもう一回生まれなおす経験を得たいと思っているんですね。毎回うまくいくわけではないですが。そういう意味で、他人からなにかを指摘してもらうまでもなく、すでに自分の作品はどこか自分から離れたものとして感じられます。かといってそれは作品を客観視しているということでもない。自分なんだけれど、どこか自分ではないもの、という感じです。だから作品が外に出ることで客観的な距離を得るというよりは、自分自身がそこから抜け出しながら自己が再組織化されるような、そういう経験になれば脱皮成功でしょう。


トーク後には懇親会が旧・原田米店の中庭で行われました

 


プロフィール:
池田剛介(いけだ・こうすけ)
1980年福岡県生まれ。2005年、東京藝術大学大学院先端芸術表現専攻修士課程修了。
自然現象やマテリアルへの関心を通じて、インスタレーションや絵画作品を展開する。
主な個展に「Plastic Flux」(Lower Akihabara, 2009)。
主なグループ展に「東京藝術発電所」(東京藝術大学, 2011)、「堂島リバービエンナーレ」(堂島リバーフォーラム, 2011)、「松戸アートラインプロジェクト」(松戸市一帯, 2010)、「Vivid Material」(東京藝術大学, 2008)など。
http://kosukeikeda.net/

大山エンリコイサム(おおやま・えんりこいさむ)
1983年、東京生まれ。美術家。「Quick Turn Structure(急旋回構造)」という独特のモチーフを軸に、ペインティングやインスタレーション、壁画などの作品を制作、発表している。おもな展示に「あいちトリエンナーレ2010」(名古屋市長者町、2010)、「Padiglione Italia nel mondo : Biennale di Venezia 2011」(イタリア文化会館東京, 2011)など。共著=『アーキテクチャとクラウド──情報による空間の変容』(millegraph、2010)。論文=「バンクシーズ・リテラシー──監視の視線から見晴らしのよい視野にむかって」(『ユリイカ』2011年8月号、青土社)ほか。
http://enricoletter.net/

寺井元一(てらい・もとかず)
株式会社まちづクリエイティブ代表取締役。 NPO法人KOMPOSITION代表理事。 1977年、兵庫県生まれ。2001年、早稲田大学政経学部卒業のあと、同大学大学院に進学(のち中退)。2002年にNPO法人KOMPOSITIONを設立。 渋谷を拠点に若いアーティストやアスリートのため、活動の場や機会を提供する活動を始める。横浜・桜木町の壁画プロジェクト「桜木町 ON THE WALL」や、渋谷・代々木公園でのストリートボール大会「ALLDAY」などのイベントを企画運営してきた。 2010年、株式会社まちづクリエイティブを設立し、クリエイター層の誘致により松戸駅前エリアの活性化を目指す「MAD Cityプロジェクト」を開始。 多目的スペース「MAD City Gallery」開設、「松戸アートラインプロジェクト」の運営にも携わる。

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