ホーム > 連載・コラム > 社会問題との繋がりを河川敷のバーベキューをキッカケに考える|公共空間を大いに使う!(ホットスポット編)
- MAD City 地域情報
- クラウドファンド
- ローカルと起業
- 公共空間
社会問題との繋がりを河川敷のバーベキューをキッカケに考える|公共空間を大いに使う!(ホットスポット編)
MAD Cityでは2015年8月31日まで、 みんなで江戸川河川敷BBQをしましょう!MAD City FUNDING のクラウドファンディングを実施中です。今回は、このファンディングを通じて意見をいただいたこともあり、江戸川河川敷の放射能汚染を考えます。公共空間、つまり「みんなの場所」においては、小さな一地点をめぐる議論が、実は大きなテーマとつながっているということがあります。
クラウドファンディングの趣旨は放射能汚染とイコールではありません。しかし、バーべキューを通じて河川敷に多くの人の関心が集まり、使われていくキッカケにしたいという本来の趣旨から、そういった問題は将来的に避けて通れないものだと思われます。そこで今回は、広く公共空間における大きな社会問題に、一人ひとりがどう向き合うかを考える問題提起にもなるのではないかと考え、この記事を書くことにしました。
河川敷の実態を把握する
まず2011年の大震災、そしてその地震と関連して引き起こされた福島第一原発事故による放射能汚染が、江戸川の河川敷にどのような爪痕を残しているか、簡単に確認しておきたく思います。行政関係の情報は、今や紙媒体だけでなくウェブサイトでも公開が奨められていますので、ネット経由でも概ね把握できます。具体的には 江戸川河川事務所管内における放射性物質測定結果について | 江戸川河川事務所 | 国土交通省 関東地方整備局 が公開されています。
放射性物質汚染対処特措法に基づく基本方針では、長期的な放射線量目標を追加被ばく線量が年間1mSv(ミリシーベルト)以下としています。この1mSvとは、国がICRP(国際放射線防護委員会)の勧告を基に、追加被ばく線量を勧告の下限レベルである「年間1mSv以下」になることを長期的な目標とした数値です。また、年間の追加被ばく放射線量1mSvは、1時間当たりに換算すると0.23μSv(マイクロシーベルト)になります。
江戸川河川事務所管内における放射性物質測定結果について | 江戸川河川事務所 | 国土交通省 関東地方整備局
こちらに記載されている0.23μSvという数値が、よく知られているように行政が除染を行う基準となっています。
現在、江戸川や中川等における放射性物質の測定については、環境省及び沿川自治体で実施しているところです。今回、江戸川河川事務所管内で測定された結果(平成25年4月30日現在)を整理し、事務所ホームページで公表いたします。(測定結果については、環境省HP、沿川自治体HPでもご覧いただけます。)
また、河川における放射性物質の測定は、環境省が情報集約機関として今後も引き続き実施していくこととしています。※1 江戸川河川事務所では引き続き環境省や沿川自治体による測定結果、また除染等の情報共有に努めてまいります。
江戸川河川事務所管内における放射性物質測定結果について | 江戸川河川事務所 | 国土交通省 関東地方整備局
上記の測定結果のなかで、今回のバーベキュー会場に最も近い江戸川河川敷の調査地点は「江戸川左岸河川敷緑地(古ヶ崎地先)」。こちらの詳細は松戸市のウェブサイトに掲載されています。
江戸川左岸河川敷緑地(古ヶ崎)放射線量測定値推移表|松戸市公式ホームページ
こちらを見ると、1年強ごとに線量調査が行われ、震災の年にはかなりの高線量であったが、行政による除染を経て徐々に線量が下がっていることがわかります。しかし、このデータで河川敷が安全であると理解してはいけません。
なぜなら、これらの測定が行われているのは、河川敷のなかの、ごく一部の範囲でしかないからです。
公共空間の管理者はたくさんいる
これらのデータが掲載されているページを見ると、すべて松戸市の公園であることに気がつきます。市立公園は市が管理者となり、線量調査に基づいた除染の責務を負っています。しかし市の管理する土地でなければ、逆に松戸市は除染することができません。
今回のバーベキュー会場付近は松戸市の土地ではなく、国の土地です。測定結果の地点は上記に示されていますが、調査は市の管理する土地については当該自治体が調査します。しかし国の土地については環境省が調査を行っています。地図上ではたくさんの調査地点があるように思われますが、江戸川、そして源流となる利根川の流域は広大で、除染の予算が簡単に確保できるとは思えません。また公園になっていない土地は普段から人が利用しない場所になっており、優先順位も低くならざるを得ません。これはあくまで執筆者の推測であることを前提に書きますが、今回の会場は、おそらく調査地点でもなく、よって震災以来ずっと除染が行われていません。
公共空間の社会問題をどう考えるか
MAD Cityでは、震災直後の2011年5月、独自に放射線量を測っています。 【MAD WALK 】 シーベルト探検編 | MAD City:松戸よりDIYと暮らし、物件情報を発信 に掲載しているとおり、江戸川河川敷(今回のバーベキュー会場の地点です)は地表:0.48μSv/h/空中:0.38μSv/hという線量でした。実際には、地表のうち屋根の下の茂みなどは、これよりさらに高い線量であったという記憶があります。
【MAD WALK 】 シーベルト探検編
- MAD City に眠る「まち歩き」のさまざまな名所、ホット(ディープ?)スポットを 発掘しては紹介するのがこの「MAD Walk」プロジェクト。 MAD City Galleryに拠点を構えるメンバーが特派員となり、新...more
松戸宿の人々が生活の一部として大切にしてきた江戸川河川敷。その一角をこれからも改めて活用するため、使えるようにするために、今回のクラウドファンディングにおいては改めてガイガーカウンターによる独自の線量調査を行いたいと思います。それは、高い線量にただ怒るためではなく、現実を見据えて、その上でどのように使うか、何に注意するかを考えるためです。
松戸が震災後、ホットスポットとして知られる場所になってから4年以上が経過し、少し風化している感もあります。しかし今でも水の溜まる日陰の茂みなどはおそらく一定の線量を示しているはずです。いわば、松戸市全体が「ホットスポット」というネーミングで呼ばれていた時期を過ぎ、実際に松戸のなかに小さなホットスポットが点在しているのだと思います。そういったスポットを把握し、立ち入らないように気をつけたりマスクをするなどの工夫は、一人ひとりが学び、環境に対処していく必要があるでしょう。
公共空間はごく平板に「みんなのもの」だと見なされていますが、それゆえに問題が起きたとき、活用されていない空間は長い間放置されてしまうのです。そのことを広く行政の責任だと語る人もいるでしょう。しかし、その一方で、行政に何もかも押し付けても成り立たない社会情勢であることが明らかないま、他ならぬ私たちがその場所を大切にしてこなかった、つまり使ってこなかったことに責任の一端があることに向き合う必要もあるのではないでしょうか。今回のバーベキューが、そういった現実に向き合うキッカケになればと思います。
今回のクラウドファンディングについて
この記事に掲載した考えに則って、MAD Cityでは今回のクラウドファンディングが達成された際には、バーベキュー実施時にガイガーカウンターを用意して線量測定を行い、支援者・参加者にそのデータを事前公表します。また測定結果に基づきつつ、継続的に河川敷の活用を目指して、次なるクラウドファンディングの企画においては専門家の知見を伺うことや、自分たちができる範囲で独自に除染/ホットスポット対策を盛り込んでいきたく思っています。そのキッカケとなる今回のファンディング、改めてぜひご支援いただければ幸いです。
関連記事
みんなで江戸川河川敷BBQをできるのか雑記
- このコラムでは、MAD Cityが開設したクラウドファンディングの初プロジェクト「みんなで江戸川河川敷BBQをしましょう!」 を、インターン・湯浅が、松戸で暮らす若者の目線で、語っていきます。なぜこのプロジェクトが始動し...more
想像したものは作れる!メイカーズムーブメントの現場「工作室アルタイル」
- メイカーズムーブメント 近年、メイカーズムーブメントの波が日本にもやって来ています。よく引き合いに出されるのが3Dプリンター(立体物を表すデータをもとに樹脂などを加工して造形する装置のひとつ)ですが、3Dプリンターもメイ...more
空き家活用プロジェクト「どうすれば松戸でいいお店が生まれるのか」
- 空き家活用プロジェクト 先日、「空き家をつかったみんなの居場所づくり展」というイベントが開催されました。舞台となった空き家は、オーナーさんの「そのまま空き家にしておくのは勿体ない」「地域のために活用してもらいたい」という...more
駅近・路面・角地の店舗物件「ナナメにかまえる。」で1日限定の「OKAYU SHOP」がオープン
- MAD Cityの店舗物件が1日限定オープン 現在、入居者募集中の店舗物件「ナナメにかまえる。」で今年1月の寒空の中、1日限定のフードイベント「TAIWAN OKAYU SHOP」が開催されました。台湾の屋台をテーマにし...more
自分で作る自分の靴の「ももはら靴工房」がオープン
- 革靴と革小物の「ももはら靴工房」 MAD Cityで取り扱っている物件は居住用以外にもアトリエやオフィス、店舗など多様な用途を取り揃えております。このたび、新たに「ももはら靴工房」がオープンしました!ももはら靴工房では、...more
公共空間を大いに使う!(河川敷編)
- 公共空間を大いに使う 「公共空間」と聞いて何を思い浮かべるでしょうか?なんとなく堅苦しく考えてしまうかもしれませんが公園や道路、河川敷、ビルやマンションの屋上など個人に属さない公の空間のことです。とかくこれらの公共空間は...more