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ふどうさんサムライ

不動産業界に切り込むWEBメディア「ふどうさんサムライ」が不動産の裏側に切り込んでいておもしろい!その2

「不動産の裏側」の記事を紹介しつつも、たまにつっこんでみる

インターネット専業不動産サービスを展開しているイタンジ株式会社が運営している「ふどうさんサムライ」というブログがおもしろいです。というのも、こちらに掲載されている「不動産の裏側」というカテゴリーの記事の多くは、”物件情報の囲い込み”や”釣り物件”などといった、不動産業界内ではよく知られた問題点を指摘しているからです。MAD Cityのような超ローカル不動産サービスだからこそ思うこともあるので、今回もいくつかの記事を紹介しつつ、つっこんでみたいと思います。

「囲い込みチェッカー」は物件の売主の不安を煽っている?

今年4月に大手ニュースサイトで取り上げられて大きな話題となった、売買物件情報の囲い込み問題について取り上げているこちらの記事将来マンションを買う人は要チェック、売買物件の不正な囲い込みとは」と、売買物件情報の囲い込み問題の解決策として提案されている自社サービス紹介記事『僕たちが「囲い込みチェッカー」を出した理由について』から。

まずつっこむ前に、そもそも売買物件情報の囲い込み問題とは何かを確認しておきましょう。通常、個人の売主が物件を売りに出すときには不動産会社に管理や仲介を委託します。委託された不動産会社は自分のお客さんの中から買主を探すのに加え、レインズという不動産物件のデータベースに情報を登録します。このレインズは他社も見ることが可能なので、不動産会社を経由して全てのお客さんが購入を検討することが出来る……ということになっています。

しかし問題なのが、物件売却を委託された不動産会社がまだ売り出し中なのにもかかわらず、他社からの問い合わせに対し「すでに売約済」などと嘘をつき、自社以外が取引しないように”売買物件情報を囲い込む”ことです。売主・買主双方に機会損失が生まれて最適な物件売却・購入が阻害され、結果的に不動産取引の不透明や非効率を助長してしまいます。

売買物件情報の囲い込みで問題なのは、売主は売れていたかもしれない機会を逃していること。買主は希望の物件を買えていたかもしれない機会を逃していること。

売買物件情報の囲い込みで問題なのは、売主は売れていたかもしれない機会を逃していること、買主は希望の物件を買えていたかもしれない機会を逃していること。(画像引用元)

不動産売却を依頼された不動産会社がなぜ囲い込むかといえば、仲介手数料の両手取り(売主・買主双方から仲介手数料を取る)を狙っているからです。両手取り自体は悪いことではないのですが、公正な不動産取引が阻害されることは問題で、宅建業法でもその解消のために専任媒介契約や専属専任媒介契約の場合にレインズへの登録が義務化されているのです。虚偽の回答があれば、これは法の趣旨に反した行為に違いありません。

そこで解決策として提案しているイタンジ社のサービスが「囲い込みチェッカー」です。簡単に言うと、レインズや不動産ポータルサイトに掲載されている売買物件情報が囲い込まれているのかを複数の協力不動産会社が覆面調査してくれるというもの。

囲い込みチェッカーをリリースしたのは、あくまでも不動産の一般消費者の利益を守るため。不動産業界全体の信頼を回復するためにもこれからの展開にも期待していますが。

囲い込みチェッカーは、あくまでも不動産の一般消費者の利益を守るため。産業界全体の信頼を回復するためにも、これからの展開にも期待しています。(画像引用元)

不動産取引を透明化するという理念と、その理念を具体的な行動につなげているのは素晴らしいことです。しかし、当初は無料で運用していましたが”不動産業者、所有者ではない方々からのお問い合わせが発生しているため”、現在は1回3,000円と一律で有料化されています。このサービスは、無料だからこそ不動産取引を透明化するという理念を達成させうる素晴らしいツールでしたが、有料化したことによって、金銭の対価として囲い込みの有無が把握できるという小粒なサービスにとどまり、結果としては売主の不安を煽りながら小銭を稼ぐようなビジネスモデルに見えてしまうような気がします。

有料サービスとするのであれば、囲い込みが発覚した場合は不動産会社に囲い込みを解除させるところまでサービス内容が高度化すれば、売主の不安が解消され、かつ、サービスの展開が業界の囲い込みを減らすことにつながるようになると思います。そうなれば、このサービスは不動産業界の信頼回復と一般消費者の利益を実現し得るサービスになるのではないでしょうか。意欲的な取り組みであるのは間違いなく、今後のさらなる発展を期待したいと思います。

鍵交換代を犠牲にしてまで防犯性を優先させる?

次はこちらの記事「賃貸入居時の鍵交換代について解説!交換する理由は?金額の相場は?」から。

希望の賃貸物件を見つけていざ契約したときに発生する初期費用。基本費用としては敷金、礼金、仲介手数料、火災保険料などがありますが、言われるがままに契約してしまうことのがほとんどだと思います。しかし、多額の費用を内容も把握しないまま支払うのは良くないことで、少しでも初期費用を安くすることを推奨し、その費用がなぜ、なんのために使われているのかを説明してくれるこの記事は消費者にとって非常に有意義な記事だと思います。
ただ、こちらの記事では鍵交換代にメスを入れていますが、ここに一つつっこみを入れたいと思います。と言うのも、もちろん入居者本人の選択は自由であるものの、契約後は貸主となり、入居者の動向に密着しているMAD Cityの実感としては、この提言はさすがに無責任ではないか、と思うからです。

鍵交換代は賃貸物件契約の初期費用として必須です。防犯性を確保する上でとても重要です。

鍵交換代は賃貸物件契約の初期費用として必須です。防犯性を確保する上でとても重要です。(画像引用元)

鍵交換はもちろん出費ですが、後々のトラブル可能性などを考えると必須の取り組みと考えます。自分のお部屋の鍵をこれまで一切コピーしたことがない人も、また鍵をどこかで落としてしまったことが一切ない人も、なかなか居ないでしょう。悪意がなくても既存の鍵が流出している可能性がありますし、現在は部屋荒らし、ストーキング、など鍵交換を行っていれば多少なりとも防げる事件も多い時代です。起きてしまってからでは、入居者の方も悔やみきれないですし、不動産業者も責任を取りようがありません。

鍵交換が「物件を管理している会社や大家さんの方針による」というのはその通りで、確かに何かあった時は管理会社や大家さんも困ってしまいます。しかし、根本的に鍵交換は入居される方の安全を守るための取り組みです。一時的な節約よりも、ぜひそこで始まる生活の安心を優先させて下さい。
ということでMAD Cityでは鍵交換は入居時に必須とさせていただいています。これがまかり通るのは単なる仲介の立場ではない、転貸事業者だからということなのですが、セキュリティについては重視させていただいています。なお最近ではスマートロックの技術も一般化しているので、今後鍵がスマートロックに置き換わっていけば、鍵交換が真に必要なくなる時代がくるかもしれません。

これから求めれられるインターネットを通じた地元密着不動産サービス

今回も「不動産の裏側」の記事を2つ見てきました。1つ目は売買物件情報の囲い込み、2つ目は鍵交換代と、非常にニッチなテーマです。不動産取引の透明化や効率化を実現するためにはインターネットやテクノロジーの力が重要であることは言わずもがなです。しかし、住居や店舗といった、非常に人間くさい不動産というサービスを巡っては、顔の見える関係性もまた必要であり重要だと思います。

今後はIT活用と並行して、地元に密着して濃密な地域情報や付加価値を提供していく不動産屋もますます求められていくはずです。MAD Cityではこうしたインターネットを通じた地元密着不動産サービスの追求に興味関心を向けています。こうしたMAD Cityの取組について、取材や視察でご説明させていただいています。ご希望される方または団体はこちらまで是非ご連絡ください。

取材・講演依頼などのご相談はこちら

著者プロフィール

funahashi taku

funahashi taku

空き家を魅力的な「まちのコンテンツ」に生まれ変わらせたり、社会的課題解決のツールとして活用したい、そんな観点から書いているブログ「空き家グッド」を運営しています。2015年6月からはMAD Cityのウェブメディア「madcity.jp」に記事をちょくちょく寄稿しています。
http://akiya123.hatenablog.com/

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