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屋外イベントを開催するときは地元自治体の火災予防条例をチェックしましょう
福知山花火大会露店爆発事故
2013年8月15日、真夏の夜に起きた福知山花火大会での露店屋台の爆発事故では死者3名、負傷者59名を出す事態となりました。福知山のローカルメディアでは第一報を次のように伝えています。
15日午後7時30分から福知山花火大会が予定されていた福知山市音無瀬橋下流の由良川河川敷で、開会直前に露店屋台が爆発。子どもを含む大勢の重軽傷者が出た。花火大会は中止になった。午後10時45分現在、58人が病院で治療を受けている。
会場一帯には約300の露店が出店。特に音無瀬橋の下には多数の露店屋台が並び、そのうちの一つのプロパンガスボンベが爆発した。2回の爆発音が確認されており、一時は大きな火柱が上がっていた。
福知山花火大会で屋台爆発 子ども含む58人重軽傷(両丹日日新聞)
当初は「プロパンガスが爆発」とされていましたが、その後の検証によると「屋台の店主である男性がガソリン携行缶から発電機に給油しようとしたところ、気化したガソリンに引火して爆発」したことがわかりました。
総務省消防庁がまとめた「屋外イベント会場等火災対策報告書(p.3)」によると、”多数の観客に近接した場所に自家発電機等の火気器具及びガソリン携行缶等の危険物があったこと”、”圧力を減じる操作をせずにガソリン携行缶の蓋を開けたことにより、ガソリンが周囲に飛散する状態となったこと”、”屋台のガスコンロ等の火気が引火したこと”などが被害拡大に大きな影響を及ぼしたとしています。
炎天下に3時間以上置かれていた携行缶のふたを減圧作業をせずに開けたことでガソリンが霧状に噴出し、付近で座っていた大勢の観客にかかってしまったようです。この事故後、福知山花火大会を主催した福知山商工会議所は2014年に引き続き、今年も花火大会を行わないことを決めています。
これまで屋外イベント会場における火災予防に関する体系的な規制はなかった
当時の屋外イベント会場における火災予防対策については、屋外イベントを運営する体制はイベントごとに異なり、火災予防の体制も明確ではなく個々の露店主に委ねている場合もあるようでした。 屋内に関しては消防法に基づく防火管理者の選任や消防計画の作成などが義務づけられていますが、屋外についてはそういったきっちりとした規制がなかったのです。
今後の屋外イベントの火災対策のあり方
そこで屋外イベント会場等火災対策検討部会では課題を踏まえた必要な火災対策が出されます。主催者は防火担当者を選任することや露店における火気器具や危険物の使用を把握することや消火器の準備といった火災対策が義務づけられます。
消防法施行令の一部改正
そして具体的に消防法施行令の一部改正へとつながります(消防法施行令の一部を改正する政令・平成25年政令第368号)。具体的には、多数の人が参加するイベントには消火器の準備が必須となります。
1.消防法施行令の一部を改正する政令について
【内容】 (1)火気器具等の取扱いの条例制定基準の見直し(第5条の2関係)
火を使用する器具等の取扱いに関する消防法第9条の規定に基づく市町村条例の制定基準として、対象火気器具等を、祭礼、縁日、展示会、花火大会その他の多数の者の集合する催しに際して使用する場合にあっては、消火器の準備をした上で使用することを定める。
消防法施行令の一部を改正する政令等について
各自治体で「火災予防条例」の一部改正につながる
そしてさらに、各自治体において「火災予防条例」の一部改正へとつながっていきます。
福知山市は25日、多数の死傷者を出した昨夏の福知山花火大会事故を受け、屋外イベントの防火管理基準を盛り込んだ「市火災予防条例」の一部改正案を発表した。3月4日に再開される3月定例議会に上程する。
屋外イベントに消火器義務化 福知山市が条例で
MAD Cityがある松戸市ではどうなっているでしょうか。松戸市消防局のウェブサイトを見てみると載っていました。
具体的には次の3点が火災対策として追加されました。
1. イベントでの消火器の準備
まずは縁日や花火大会、町会などが行う祭りといった「多数の者の集合する催し」でコンロや自家発電機などを使用する場合は消火器の準備が義務付けられます。しかも消火器といっても 「消火器の技術上の基準を定める省令」第1条の2第1号に定める消火器が対象になります。
2. コンロや自家発電機を使用する露店の開設届出
次はコンロや自家発電機といった「対象火気器具等」を使用する露店を開設する場合は消防署へ開設届出を出す必要があります。
「対象火気器具等」とは、コンロ、ストーブ等火を使用する器具及びその使用に際し、火災の発生のおそれのある下記の器具をいいます。
ア 気体燃料を使用する器具(ガスコンロ、ガスストーブなど)
イ 液体燃料を使用する器具(発電機、石油ストーブなど)
ウ 固体燃料を使用する器具(火鉢、バーベキューコンロなど)
エ 電気を熱源とする器具(電気コンロ、IH調理器具,かき氷機、わたあめ機など)
松戸市火災予防条例の一部を改正しました
3. 大規模な屋外イベントには防火担当者の選任や防火計画の作成が義務づけ
最後は消防長が大規模なイベントだと要件に該当した場合、主催者は防火担当者を定めること、「火災予防上必要な業務に関する計画」の作成とその計画の遂行、イベント開催の14日前までに「火災予防上必要な業務に関する計画」を消防機関に提出すること、などが義務付けられます。
屋外イベントを企画する際は地元自治体の火災予防条例を確認しましょう
花火大会やバーベキューなど火を使う屋外イベントでは火災予防対策が必須になります。福知山花火大会の事故がきっかけとなって、屋外イベントの火災予防対策が各自治体の火災予防条例に盛り込まれるようになりました。一方で、河川敷といった公共空間はまだまだ可能性を秘めた場所です。適切な対策を取って、楽しく自由に使いこなしましょう!
みんなで江戸川河川敷BBQをしましょう!
屋外イベント実施にあたっては(「多数の多数の者の集合する催し」とは何か、という解釈の余地はあるものの)、届出や、家庭用ではない消火器の用意が必要になることはご覧になっていただいたとおりです。しかしかと言って、新たに消火器を買わないといけない…となれば、屋外イベントのカジュアルな良さが失われてしまうようにも思われます。そこでMAD Cityでは、一言でいうと「消火器を買ってシェアする」ためのクラウドファンドを募集しているところです。ぜひ応援いただき、みんなで江戸川河川敷BBQをしましょう!
著者プロフィール
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funahashi taku
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空き家を魅力的な「まちのコンテンツ」に生まれ変わらせたり、社会的課題解決のツールとして活用したい、そんな観点から書いているブログ「空き家グッド」を運営しています。2015年6月からはMAD Cityのウェブメディア「madcity.jp」に記事をちょくちょく寄稿しています。
http://akiya123.hatenablog.com/
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