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教科書を読みすぎちゃう人のための起業入門4

—架空の自治エリア「MAD City」を現実にすべく活動している、まちづクリエイティブ代表の寺井が、過去の自分のような無謀な20代に向けて送る起業入門のコラム。寺井本人が起業後に「教科書に書いてないこと」の存在を多々感じたところもあり、そういう視点からアドバイスを送ります。—

前回はいちいち数字がでてきて理屈っぽかったんですが、今回ももう一回だけ、似たような話です。何かというと「売上」。前回は勝手に売上が決まってましたが、実際のところ起業しようなんて思ったら売上が分かんないわけですね。売上がわからないと、実際は経費だって想定できない。事業計画を立てる時って、基本的には売上をある程度想定するしかないんです。

それで売上なんですけど…これは計算式が基本的に決まってます。「商品の価格」×「販売数」=売上です。ラーメン屋さんだったら、ラーメン1杯700円、1日の販売数が200杯、そうなると掛けて1日の売上14万円、てなわけです。さてそこまでは良いんですが、これがまた商品の価格って、決まってないです。自分が起業する側だと、自分が価格を決めなきゃいけない。実はこれが、けっこう難しいです。

お客だったら「安ければ安いほど良い、タダにしてよ」で済んじゃうんですけど、急に困っちゃった、みたいな話をよく聞きます。タダじゃ続けられないですからね。それで価格をどうするか悩んだ時は、とりあえず2つの数字を意識したら参考になります。

  • 原価:実際に1商品につき絶対にかかる経費の額。ラーメンなら麺や具の原材料費の合計。
  • 比較価格:他で売ってる似たような商品の金額。ラーメンなら普通は1杯700円ぐらいですよね。

鉄則としては、商品価格を決めるときは高く決めたほうがいいんです。理由は、安くするのは簡単だけど、値上げは難しいから。お客さんにとっても、自社にとってもです。特にソーシャルビジネスとか、そういう関心から起業するときって、とにかく商品価格を安くしたくなるんです。そのほうがお客さんには喜んでもらいやすいと思っちゃう。でも、それは安易です。できるだけ高い価格で、お客さんに満足してもらえるように努力しないと、ビジネスとしてはうまくいきません。それが難しい時に、はじめて価格を下げて落ち着きどころを探す。

それで、実際に価格を考えるときは、まずは比較価格を考えるんですね。どんなに付加価値をつけてるかわからなけれど、1杯3000円のラーメンはなかなか売れません(実際にやってるところはありますが)。なんでかって言うと、他のラーメン屋さんで1杯700円とかで売ってるからですね。そういう認識のもとで、できるだけ高い価格をはじいてみる。

一方で原価はどういうときに使うかというと、例えばある雑貨を500円で売ろうという結論になってたとする。そのとき原価が501円なら、これは売れば売るほど損します。そんなことそうそうないよ、と言われるかもしれないけれど、実は結構あります。

例えば若手デザイナーを支援する目的で、コラボのオリジナルTシャツを作って売ろうと思う。比較価格としてユニクロを考えたら、1枚1200円になったりします。ところがTシャツって、生地が1枚あたり400円ぐらい、プリント代が1枚あたり600円とかです。そして全体にデザイン料と、版下代(版をつくるお金)がかかる。デザイン料を3万円だとして、版下代が1万円ぐらい。これで1デザイン100枚のTシャツを作るとかって思ったら、原価は1400円。つまり原価のほうが高くなる。おまけに、3万円という金額で若手デザイナー支援になってるかは大変疑問。

これ、そうなる理由は、簡単にいえば異常にユニクロの価格が安いんです。1デザイン数万枚のロットで彼らは作るし、それを売るだけの販売力&店舗数があるから、普通じゃないぐらい安価の生地代やプリント代で成り立つんですね。じゃあどうするかっていうと、その事業を辞めるか、けっきょくユニクロより高い金額で売るしか無いです。で、ユニクロより高く売るってことは、それ以上の付加価値を商品に込めるしか無いですね。

ビジネスとしては、比較価格より高い値段で、それでもお客に喜んで買ってもらえる商品を開発するのが理想です。つまり他の類似商品にはない付加価値を創りだすってことが必要です。しかし事業によると、それは難しいってこともある。前述したソーシャルビジネス系だと、そういうことが多いです。そうだとすれば、原価のほうを工夫して下げないとならない。そのどちらかが必要だってことは、否が応でも覚悟しておかないといけないと思います。

販売数について書いてなかったですね。これはこれでけっこう難しいんですけれど、例えば飲食店なら席数以上には一度にお客は入らないですね。その席数がランチとディナーで何回転するか、といった計算をすることが多いようです。10席がランチで2回転なら販売数は20になるわけですね。もちろんランチとディナーで販売価格は違うでしょうから、これまた場合分けして計算しないといけないです。販売数ばかりは、どんな商品かで想定する計算式が変わりますから、これはそれぞれ工夫してください。

というわけでまとめると、

  • 売上は要するに販売価格と販売数をかけたら出るよ
  • 販売価格は自分で決めるのって結構大変だよ、比較価格と比べてできるだけ高くする、原価を下げる努力が必要だ
  • 販売数は商品次第で計算式を考えよう

まあこんな感じですね。前回の利益のときに経費の計算をしてましたけど、例えば店舗の家賃はラーメンが何杯売れても変わらないですけれど、ラーメンの原価は比例して変わります。利益が大事だって言いましたけど、経費と売上どちらも分かって、やっと利益がわかるってわけです。

寺井元一
寺井元一|motokazu TERAI
株式会社まちづクリエイティブ代表取締役。
NPO法人KOMPOSITION代表理事。
1977年、兵庫県生まれ。2001年、早稲田大学政経学部卒業。
2002年にNPO法人KOMPOSITIONを設立。
渋谷を拠点に若いアーティストやアスリートのため、活動の場や機会を提供する活動を始める。
2010年、株式会社まちづクリエイティブを設立。クリエイター層の誘致などソフト面からのまちづくり事業を行っている。

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