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教科書を読みすぎちゃう人のための起業入門5

—架空の自治エリア「MAD City」を現実にすべく活動している、まちづクリエイティブ代表の寺井が、過去の自分のような無謀な20代に向けて送る起業入門のコラム。寺井本人が起業後に「教科書に書いてないこと」の存在を多々感じたところもあり、そういう視点からアドバイスを送ります。—

今回は教科書に載っていない度合いでいえば、たぶん一番載っていないと思います。なにかというと、「暴君のススメ」。人事的な内容です。世に多くある経営の教科書的なものを読めば、真逆のことが書いてあります。経営者たるもの、マネージャー役としてスタッフが働きやすい環境を作って、彼らの創意工夫を伸ばそう、権限は委譲しよう、といった趣旨です。もちろん最終的には仰るとおりなんですが、過去の僕にとっては間違いでしたし、いま20代の方にとっても真逆の発想が必要なんじゃないかと思うんです。

さてまず最初に、人事のこと、つまり一緒に仕事をする社員やボランティアのことですが、こればっかりはあまり理屈だけではどうにもなりません。なにせ人間の感情そのものですから。その代わり、経験則がモノをいいます。それで例えば、ボランティアの方々のモチベーションってどうやったら高まると思いますか?僕の答えとして、重要なのは「3ヶ月」という期間です。

なにかというと、ボランティアの方っていずれにせよ好き好んで関わり始めてくれる要素もあるので、最初はとにかくモチベーション高いんですね。でも、給与がまともにあるわけでもないし、フルタイムでもないから会社やNPOの側も重要業務を預けることはできない、そんな状況にもなりやすい。本人だって新しい職場や、新しいやり甲斐を、別に見つけることだってある。それで、とにかく3ヶ月はモチベーションが持つけれど、それ以上は普通にやると持たない。これ、全く僕の経験則です。

もちろんいろんな条件を見直すとか、事業の趣旨や理念に強く賛同してくれていれば、ボランティアスタッフが4ヶ月以降もモチベーション高く関わってくださることはあります。でも、それは人それぞれです。そのボランティアに抜けられたら致命的、そんな状況を作ってしまうようでは経営サイドとして失格です。極論、いつでも気持ちよく辞めてOK、というのがボランティアの特権でもあるのですから。

だからそもそも、3ヶ月間を超えた期待をボランティアにすべきではない、と僕は思います。つまりボランティアのモチベーションは高くなりません。ボランティアスタッフを交えて事業をする場合、最長でも3ヶ月までのプロジェクト形式にしておかないとダメです。そんなことを書くと、ボランティアスタッフを使い捨てにしている、なんて批判や疑問を受けるかもしれません。全くその通りで、お互いにそういった割り切りを前提にして関わるのが、僕は健全だと思っています。そのうえで、結果として何年も一緒に活動できることが理想的なわけです。

それはつまり、ボランティアスタッフが参画するプロジェクトが困難を乗り越えて成果を上げたとき、結果として3ヶ月の壁を超えてボランティアスタッフと引き続き一緒に活動できる可能性がある、ということです。プロジェクトが困難であることで、そのスタッフの価値が会社やNPO側にも把握できるし、成果が上がることでスタッフに成功体験が蓄積され引き続き関わる理由ができると思います。とにかく堂々と「使い捨てである」「3ヶ月やってみよう」と伝えないといけません。これが暴君のススメの1つ目です。そして3ヶ月に1つは、ボランティアに経験なり具体的なスキルなり、お金でない何かでお返しをする意識が必要です。僕の会社やNPOでは、そうやって関わるうちにボランティアスタッフだった人が一緒に長く働く社員になった例がたくさんあります。

そして人事的にはもっと大切なのが、社員との関わりですが、これまた、理想的な職場としてフラットな関係性とか、創造性を発揮してもらうとか、そういうことがよく言われます。本当にそう思っているなら、文字通りにそんな関係性を作ったり、創造性を期待しちゃダメだというのが僕の持論です。フラットというのは単なる無秩序になり、創造性というのはダラダラ無意味な議論をしているだけの結果になります。つまり、社員は社長の言うことを聞くものだという大前提のもと、指示命令を上からガツガツ押し付けるべきだし、社員からの提案なんて全部は聞かなくて良いんです。これが暴君のススメその2です。

こんなことを書くと、さらに呆れられるかもしれません。ところが、そもそも経営者と社員は社内地位だけじゃなくて役割分担としても全く別物です。社員的に正しい姿と、社長の正しい姿って全く違いますよね。社員が取引先の頼みを勝手にどんどんOKしてたりしたらマズいという一方で、いろいろ問題を抱えた時にトップ同士で無理難題をお互い了解しあうなんてこともあります。つまり、良き経営者になろうと思ったら、文字通りのフラットなんてダメです。「自分の代わりにあれこれと働いてもらうために雇ってるんだ」ぐらいの関係性でまずは繋がっていたほうがいい。

それから創造性云々ですが、社員スタッフにただ好きに考えさせても、たいして良いアイデアは出ません。むしろ良いアイデアが出るのは、社員が社長を批判する時です。上司として一番良いと思う案を、上から押し付けてみたら、社員から「もっとこうやったほうが良い」と批判されることがあります。その批判を聞いてみて、自分より良かったら、素直に採用する。それが社員の創造性を引き出す、ということだと僕は思います。辛いのは、そうやって行けば行くほど「社長」の権威はガタ落ちです。

どこかで経営者って、偉い偉いと尊敬されたい自尊心があったりしますが、そんなもの何の役にも立ちません。偉そうにして、むしろ社員に馬鹿にされるぐらいがちょうど良い。つまり経営者というのはピエロです。フラットというのは、実際にアイデアが飛び交う段になったら社員が思ったことを上司にぶつけることのできる風通しの良さのことであり、創造力は上司への反発のことです。それをニコニコして見ていられるか。これを僕は勝手に「作用反作用の経営」と呼んでいます。反作用を活かすつもりで、社員に馬鹿にされるぐらいで経営してみるとちょうどいいんじゃないかと思います。

あと、社員については「1年」というのが重要な時間になります。これも全くもって根拠はなくて、僕の経験則です。ベンチャー企業やそれに準じるNPOって、最初が未熟な分だけ、成長が激しい。ところがベンチャーには社員教育という機能がたいしてないですし、そもそも社員という立場は、本人がよほど意識しないと成長し続けません。人間だから、どこかで前と同じようにやっていたいっていう気持ちもある。そうすると、1年ごとぐらいに危機が訪れます。

簡単にいえば、組織が求める能力に、社員がついていけなくなる。そのとき、解決策は2つあります。その社員に辞めてもらって新しい人材を求めるか、その社員が組織の成長を超えるべく改めて成長するか。どちらにせよ辛い選択肢がそこにあることは覚悟しておくべきです。

さてなんでこんな「暴君のススメ」なんてものが出てくるのか。僕なりに一つの答えがあります。それは、今の20代30代に特有の現象として、「良い人」が多いんだろうということです。今の60代とか70代を眺めてください。とんでもなく強烈な(偉そうだったり強引だったりエゴに正直な)オッちゃんオバちゃんが実際にたくさんいます。漫画の「ドラえもん」を思い返して下さい。現代に、出来杉くんやスネオみたいな若者はいるかもしれないけれど、20代でジャイアンみたいな若者ってすごく少ないんじゃないでしょうか。

たぶん、昔は文字通りのジャイアンみたいなエゴ剥き出しの人ってたくさんいたんだと思います。だから、経営の教科書には暴君になるなってことが書いてある。でも今、みんな草食(笑)気味になったこの時代に必要なのは、ある種の先祖帰りで、むしろ「暴君になれ」ってことじゃないか。僕はそう思っています。

寺井元一
寺井元一|motokazu TERAI
株式会社まちづクリエイティブ代表取締役。
NPO法人KOMPOSITION代表理事。
1977年、兵庫県生まれ。2001年、早稲田大学政経学部卒業。
2002年にNPO法人KOMPOSITIONを設立。
渋谷を拠点に若いアーティストやアスリートのため、活動の場や機会を提供する活動を始める。
2010年、株式会社まちづクリエイティブを設立。クリエイター層の誘致などソフト面からのまちづくり事業を行っている。

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