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MAD City People #02|現代美術家 西岳拡貴 (前編)

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千葉県松戸市の松戸駅前で行われている、まちづくりプロジェクト「MAD City」。2010年のプロジェクト開始以来、半径500メートルのエリアの中で、150人以上のクリエイティブ層がショップやアトリエなど独自の活動を展開している。

そんなエリアで活動する人々を紹介する本企画。第2回目に登場するのは、現代美術家の西岳拡貴さん。アトリエの中に、セルフビルドの小屋を建ててしまった彼の日々の生活と、あいちトリエンナーレにも出品した彫刻作品の背景について話を聞いた。

text:AKIRA KUROKI
photo:SHIN HAMADA

Profile

名前:西岳拡貴(にしたけ ひろき)
職業:現代美術家
年齢:32

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ーまず、この小屋の中を見せてもらってもいいですか?
はい、どうぞ。左の扉は服とか本とかが入っている収納で、入り口は右側です。

ーうわ、すごい。失礼ですが、意外と綺麗ですね(笑)。全部西岳さんが作ったんですか?
はい、全部作りました。小屋の中は涼しいですよね。

ーたしかに。冷房も付いてて快適ですね。風呂もあるんですか?
風呂もあります、シャワーだけですけど。

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ーじゃあこの部屋はシャワー以外は、全部DIYで作られた、と。
そうですね、壁の石工ボードも自分で貼って。生活スペースは小屋の中。水道は隣の部屋と共有なんですけど。もともと隣はクラボの橋本くんが使っていて。

ーあぁ、そんなご縁があったんですね。
そうなんですよ。ここは収納も何も無かったので、とりあえず部屋の中にテントを張って、この小屋を作って。最近は小屋の反対側に棚を作ってる途中なんです。道具とかミシンとかを入れるように。

ーこの物件はいつから借りているんですか?
この前の更新が2回目だったから、4年前からですね。

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部屋の中に小屋をつくり、アトリエに住むという暮らし

ーそもそもなんで部屋の中に小屋をつくることにしたんでしょう?
一番は空調を考えた時に、空間を狭くしなきゃと思ったことと、物が多いから、ここの天井の高さを活かせるようにと思って。

ーたしかに天井高いですね。
当時、何もないところに住みたくて。それで東京藝術大学時代の同級生の森くん(森純平。MAD Cityにあるアーティストインレジデンス・PARADISE AIRのディレクター)が、まちづクリエイティブと関わっていたから「倉庫ない?」って相談したら、ちょうどここが空いていたんです。

ー最初から住居兼アトリエとして活用しようと思っていたんですか?
そうですね。住むところとアトリエをいっしょにしようと思って。

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ー藝大では何を専攻されていたんですか?
彫刻です。出身は長崎で、学部は愛知県芸に通って、そのあと大学院で藝大に。松戸にきたのは本当にたまたまです。大学院から通うと、取手キャンパスと上野キャンパス、どちらで作業できるかわからないことが多いので、とりあえず中間地点の松戸でみたいな感じで。

ーいま制作はほとんどここで?
そうですね。でも彫刻の作品と言っても、立体作品を構成して展示するだけじゃなく、屋外でのプロジェクト全体を記録した映像作品などをつくることも多いです。

ー作品について伺えますか?
作品の素材としてはラテックスという天然ゴムを使っています。映像作品があるので見ましょうか。

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これは2009年にフランスのナントに交換留学で行ったときの『ROAD OF THE SEX』というプロジェクトです。道にラテックスで線を塗って、乾いたら剥がして巻き取っていくという。「皮膚」をテーマにしていて、大地の皮膚を剥がし、それを集積させて彫刻にするという感じでしょうか。このときは本当に手探りでやっていました。

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『ROAD OF THE SEX』(2009) ©︎Hiroki Nishitake 2017

ー映像作品『ROAD OF THE SEX』(2009) より ©︎Hiroki Nishitake 2017

ー途中で切れないものなんですね。
わりと強いですね。まぁ当然途中で切れたりもしますが。この時は滞在しているところから、設定したゴール地点まで、路上に落ちているものを巻き取って、地面の模様とか汚れを転写しながら、少しづつ進んで行って。そうすると途中で話しかけてくる人が結構いたり。そこにいる人たちも巻き取っていって、というような。

ー巻き取ったものが彫刻作品になるというより、行為や記録の映像も含めて作品ということですね。
そうですね。行為の方がわりと先立っていますね。最近は、こういったステンシルを使っています。壁に塗って剥がすと、このかたちで汚れが取れるんですね。それを集積させて彫刻を作ろうかなと思ってます。実験している途中ですけど。

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ーそれは街中でゲリラ的にやるんですか?
そうです。松戸の街中にも、このかたちでポッカリと抜かれているところが何箇所かありますよ。

ーもはやグラフィティですね
そうなんです、その要素は結構あって。グラフィティの話を聞いていると、共感するところがあるんです。目に見える「画像」としてだけでなく、「描くという行為」の感覚が作品に含まれているというか。ただラテックスの違うところは、完全に剥がれて「掃除してるんです」って言えちゃうところ(笑)。手法としては高圧洗浄器のリバースグラフィティというのがあって。

ー昔、エミネムがやってましたよね。高圧洗浄機を使って壁を掃除した軌跡をグラフィティにするっていう。
そうそう、でも高圧洗浄器だと水に流れてしまうから、写真など、その画像しか残らない。ぼくはそこでの行為を画像だけじゃなくて、立体的なかたちにしたいなと思っていて。いま作ろうと思っているのは行為の蓄積なんです。なおかつ、パフォーマンスをしたところ、アクションが起こったところにマーキングされている。

©︎Hiroki Nishitake 2017

©︎Hiroki Nishitake 2017

©︎Hiroki Nishitake 2017

©︎Hiroki Nishitake 2017

ーラテックスで剥がすと、結構はっきり跡が残るんですね
残りますね。場所によるんですけど、排気ガスで汚れたところが一番わかりやすく残ります。最初にフランスでやった後は、松戸から上野まで巻き取って、ひとつの大きい球体にして。その後、愛知県美術館で個展をやったときは、東京から愛知まで200箇所くらいの場所で、半年くらいかけて巻き取りをしました。

ーそれってどれくらいの距離になるんでしょう…。
どれくらいだったかな。かなりの距離なので、映像が1時間半くらいの長さになっちゃって、誰も見ない(笑)。最後は350キロくらいの塊になりましたね。道中で不思議な人にも出会いましたよ。あるおじさんは「この道は自分の散歩道だからダメ。反対側でやれ」とか(笑)。公共の場って、そこに住む人の生活圏内とも関わっているんですよね。

(後編に続きます)
※本記事はmadcity.jp および M.E.A.R.L の共通記事となります

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