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ヴァスコ・ムラオが描いた「松戸感覚」

松戸のまちが一枚の線画に!松戸市民が一番好きな場所を探してみましょう「ヴァスコ・ムラオ作品展示&滞在報告会レポート」(後編)

前編はこちらをご覧ください。

ヴァスコ・ムラオの線画を読み解く

黒いペン、紙、時間だけを使って、都市の街並や建築物を描くポルトガル出身のアーティスト、ヴァスコ・ムラオさんが、松戸のアーティスト・イン・レジデンス「PARADISE AIR」での3ヶ月間の滞在制作の集大成として完成させたのがこちらの線画。松戸で出会った92人へ「一番好きな松戸」をインタビューしたり、ムラオさん自身が松戸のまちを歩いて、見て、感じたことが詰まった作品です。

松戸で出会った92人へのインタビューで聞いた「一番好きな松戸」に、ムラオさんが実際に見渡したり、見上げたり見下ろしたりしながら「松戸で感じたさまざまなもの、その時々感じた”松戸”が緻密に描かれています。

松戸で出会った92人へのインタビューで聞いた「一番好きな松戸」に、ムラオさんが実際に見渡したり、見上げたり見下ろしたりしながら「松戸で感じたさまざまなもの、その時々感じた”松戸”が緻密に描かれています。

作品左側の巨大な余白は江戸川(江戸川の形にカーブしています)、右側の不規則な余白は、松戸のまちの境界線が無く、どこまでもつづいていくイメージを表しているそうです。今回はこちらの線画を部分的に切り取って、現実の松戸の街並と建築物とを照らし合わせてみます。

松戸橋上駅舎

まずは松戸駅の橋上駅舎です。左側が西口、右側が東口、中央の白い線は常磐線の線路を表しています。東西両方にあるペデストリアンデッキや西口のアトレ、東口のイトーヨーカドーなど、駅周辺にあるビル群がはっきりと描かれています。西口は江戸川や松戸神社の他、かつて宿場町として栄えた歴史ある街並や建築物が今も残っています。一方、東口にも大きなビルや住宅街、細い路地などが混合しており多彩なまちの表情を持っています。

こちらの線画で唯一、白い線にまたがっているのが松戸駅舎です。常磐線で隔てられた西側と東側とをつなぐ上で重要な場所です。

こちらの線画で唯一、白い線にまたがっているのが松戸駅舎です。常磐線で隔てられた西側と東側とをつなぐ上で重要な場所です。

松戸駅西口の様子です。ペデストリアンデッキの下はバスロータリーです。

松戸駅西口の様子です。ペデストリアンデッキの下はバスロータリーです。

松戸駅東口の様子です。こちらもペデストリアンデッキが広がります。

松戸駅東口の様子です。こちらもペデストリアンデッキが広がります。

PARADISE AIR

ムラオさんが3ヶ月間、滞在制作の拠点としたPARADISE AIR(アーティスト滞在施設)です。元カップルホテルで、現在はパチンコ店として営業している「楽園」というビルの4階にPARADISE AIRはあります。PARADISE AIRの他にも同じ4階に音楽家、劇団、クラフト作家など音量を気にせず活動したい入居者が集まっています(PARADISE STUDIO)。

元カップルホテルだったこちらのビル。浜友観光が購入し、2005年からパチンコ店「楽園」として営業しています。PARADISE AIRという名称はこの「楽園」にちなんでいます。「楽園」の文字しかり、円形の窓など細部まで描かれています。

元カップルホテルだったこちらのビル。浜友観光が購入し、2005年からパチンコ店「楽園」として営業しています。PARADISE AIRという名称はこの「楽園」にちなんでいます。「楽園」の文字しかり、円形の窓など細部まで描かれています。

実際の「楽園」は、オレンジと黄緑が目を引くビルです。松戸駅から徒歩2分という好立地です。

実際の「楽園」は、オレンジと黄緑が目を引くビルです。松戸駅から徒歩2分という好立地です。

古民家スタジオ旧・原田米店

MAD Cityの代表的物件である古民家スタジオ旧・原田米店は、「楽園」のビルのちょうど左上に描かれています。ムラオさんがインタビューした松戸で出会った92人中、なんと20人近くの方々が古民家スタジオ旧・原田米店が「一番好きな松戸」と答えています。江戸時代の宿場町の面影を今に残す築100年超の古民家は、ムラオさんの目にはどう映ったのでしょうか。

大きなビルから、古民家スタジオ旧・原田米店といった古民家まで、多様な建物があるのが松戸のまちの特徴です。

大きなビルから、古民家スタジオ旧・原田米店といった古民家まで、多様な建物があるのが松戸のまちの特徴です。

築100年超の古民家。現在は建築家の工房があり、工作などDIY作業の拠点にもなっています。

築100年超の古民家。現在は建築家の工房があり、工作などDIY作業の拠点にもなっています。

相模屋豆腐店

松戸駅西口にある創業80年の老舗お豆腐屋さんである相模屋。四方をビルや高層マンションに囲まれながらも、昔ながらの店構えが際立っています。この建物は他と比べても特に縮尺が大きく描かれていますが、ムラオさんが報告会で語ったところでは、「自分の感覚が縮尺に反映されている」とのことで、非常に印象深い建物だったようです。旧・原田米店しかり、西口にはこういった歴史的な建物が今も残っています。また、絵の中に存在する空白はさまざまな「境界」を表現しているそうです。

「とうふ」という看板がしっかり描かれています。

「とうふ」という看板がしっかり描かれています。

相模屋豆腐店は営業時間9時〜18時、定休日は日曜日です。松戸の地元の方々に愛される老舗の一つです。

相模屋豆腐店は営業時間9時〜18時、定休日は日曜日です。松戸の地元の方々に愛される老舗の一つです。

松戸神社

寛永3年(1626年)創建とされる松戸神社。まさに松戸の歴史そのものと言えます。昨年10月18日には、6年ぶりに神幸祭が開催され稚児行列四神像、手古舞、獅子頭を載せた山車、宮神輿など、総勢600名が松戸のまちを巡行しました。

立派な社が描かれています。松戸神社は松戸市の総鎮守とされています。

立派な社が描かれています。松戸神社は松戸市の総鎮守とされています。

松戸の土地と文化のエッセンスと言える松戸神社。

松戸の土地と文化のエッセンスと言える松戸神社。

松戸ビル

1974年に完成した20階建ての松戸ビル。松戸のランドマークとして長く松戸の地元の方々に親しまれています。2003年まではホテルニューオータニ松戸が14〜20階まで入居していました。最上階には回転式レストランが入っていましたがニューオータニが撤退してからは貸しビル状態です。最上階からの眺望は圧巻です。というのも、ムラオさんの滞在報告会の会場は松戸ビル20階で行われました。スカイリーと富士山と江戸川を同時に眺められる景色は格別です。

松戸ビルの最上階(20階)の展望室は、もともとは回転レストランとして賑わっていました。現在はイベント会場などとして活用されています。

松戸ビルの最上階(20階)の展望室は、もともとは回転レストランとして賑わっていました。現在はイベント会場などとして活用されています。

長らく松戸のまちのランドマークとして存在感を放ってきた松戸ビル。最上階の展望室はもっと有効活用できないだろうかと思います。

長らく松戸のまちのランドマークとして存在感を放ってきた松戸ビル。最上階の展望室はもっと有効活用できないだろうかと思います。

戸定邸

水戸藩最後(11代)の藩主・徳川昭武(あきたけ)が建てた別邸である戸定邸。明治17年(1884年)落成、木造平屋一部2階建、延床面積725平方メートル、9棟の建物に23の部屋があります。2006年7月に国の重要文化財に指定されました。また、建物の南側、西側にある庭園には綺麗な芝生が広がります。この庭園から見える景色もまた格別で、2005年3月には関東の富士見百景に選ばれ、2015年3月には学術的・芸術的価値が評価され、国の名勝に指定されるほどです。

戸定(とじょう)とは、中世の城郭に起源を持つ地名だとか。現在、戸定邸を含む旧松戸徳川家の敷地は戸定が丘歴史公園として整備されています。

戸定(とじょう)とは、中世の城郭に起源を持つ地名だとか。現在、戸定邸を含む旧松戸徳川家の敷地は戸定が丘歴史公園として整備されています。

戸定邸の庭園は通常は公開されていませんが、毎月10日・20日・30日の月3階には戸定邸入館者に開放されています。庭園から写真撮影や写生も楽しめます。

戸定邸の庭園は通常は公開されていませんが、毎月10日・20日・30日の月3階には戸定邸入館者に開放されています。庭園から写真撮影や写生も楽しめます。

松戸市庁舎(新館)

松戸市庁舎(新館)も描かれています。松戸市は東京のベッドタウンとして発展してきました。千葉県内では千葉市、船橋市に次いで居住人口は第3位です。松本清が市長時代(1969年)には日本初の即応部門「すぐやる課」を設置するなど、全国的に注目されました。日本各地の市区町村で、「すぐやる課」という同名部署や同じ役割の部課が続々とでき、1975年には全国315の自治体で採用された歴史があります。

松戸市庁舎(新館)は12階建ての大きなビルです。

松戸市庁舎(新館)は12階建ての大きなビルです。

規則的に窓ガラスが並んでいる松戸市庁舎(新館)。

規則的に窓ガラスが並んでいる松戸市庁舎(新館)。(画像引用元)

常盤平団地

常盤平にある大規模UR賃貸住宅である常盤平団地。高齢化が顕著となっていて、2000年代前半には団地住民の孤独死が相次ぐなど、NHKスペシャルでも取り上げられたりしました。そんな社会問題が先鋭化している常盤平団地は知る人ぞ知るスターハウス(星形住宅)で有名です。上空から見るとY字型をしています。

「スターハウス」として人気の常盤平団地。

「スターハウス」として人気の常盤平団地。

実際はY字型なので厳密には星形ではないのですが、スターハウスというネーミングがしっくりくるあたりがなんとも不思議です。

実際はY字型なので厳密には星形ではないのですが、スターハウスというネーミングがしっくりくるあたりがなんとも不思議です。(画像引用元)

松戸のアーティスト・イン・レジデンス「PARADISE AIR」

ムラオさんは報告会の中で、「松戸は高い建物と低い建物が並び、角を曲がると全く別の光景が広がるところが面白く、今では生まれ育った街のよう。松戸で得たインスピレーションは、別の街で創作する時に反映される」と話していました(参照記事)。今回のムラオさんのようにアーティストを松戸のまちに招き、滞在して制作に当たってもらうという仕組みが、アーティスト・イン・レジデンス「PARADISE AIR」です。PARADISE AIRでは、これまでにも40名近いアーティストが創作活動を展開していきました。今後も続々と滞在予定のアーティストがいます。ぜひご注目ください!

PARADISE AIR(ウェブサイト)
MAD Cityの地域情報はこちらから

(2016/02/19)

著者プロフィール

funahashi taku

funahashi taku

空き家を魅力的な「まちのコンテンツ」に生まれ変わらせたり、社会的課題解決のツールとして活用したい、そんな観点から書いているブログ「空き家グッド」を運営しています。2015年6月からはMAD Cityのウェブメディア「madcity.jp」に記事をちょくちょく寄稿しています。
http://akiya123.hatenablog.com/

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