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松岡さんが外壁にイラストを描いています。

道行く人が古民家アパートに視線を送る理由とは?外壁がイラストレーター・松岡マサタカのキャンバスに。

大家さん協力のもと始まった想定外のプロジェクト

MAD City不動産では、賃貸なのに改装可能・現状回復不要という変わったお部屋を取り扱っています。そんなMAD City不動産の「古民家アパート」は古民家なのに賃貸アパートという異色の物件です。この古民家アパートは現在、イラストレーターの松岡マサタカさんがアトリエとして入居されています。そして、今年7月ごろから大家さん発案のもと、外壁に松岡さんがイラストを描くというプロジェクトがスタートしています。

改装可能物件の外壁に絵を描く拡張型のDIYリノベ

前回は、改装可能物件である古民家アパートの外壁を真っ白に塗る作業を行いました(前回の様子はこちら)。今回はその白い外壁に、実際にイラストを描いていきました。下書きをしてから、色を塗っていきます。オーナーさんと住民が協働してのDIYリノベとも言えそうです。

古民家アパートの外壁をキャンバスに見立て絵を描くイラストレーター・松岡マサタカさん。

古民家アパートの外壁をキャンバスに見立て絵を描く松岡さん。(松岡さんのウェブサイトはこちら

ジェームス・ジャービス、雲、ヒゲ

松岡さんというと、「オレ・ゴーレム」といったゆるかわいいキャラクターのイラストが特徴的です。こういったゆるふわな画風のルーツには、コカコーラやナイキ、ソニーといったクライアントワークで知られるイギリスのイラストレーター「ジェームス・ジャービス」の影響があるそうです。そして、「雲」や「ヒゲ」が憧れだそうで、松岡さんのイラストにはジェームス・ジャービスの丸みを帯びたタッチがルーツにあったり、雲やヒゲがよく出てきたりします。

松岡マサタカさんのブログはこちら
松岡マサタカさんのTwitterはこちら

松岡さんのイラストには「雲」や「ヒゲ」がモチーフとしてよく使われます。

松岡さんのイラストには「雲」や「ヒゲ」がモチーフとしてよく使われます。(画像引用元)

9月に入ってから雨が続いていましたが久し振りに晴れたこの日のうちに、外壁のイラストが完成していました。丸みを帯びたタッチで、やはり雲とヒゲが使われています。

鮮やかな色使いが特徴的です。

松岡さんの描くイラストは青や赤など、鮮やかな色使いが特徴的です。

外装が変わると道行く人がこぞって見て通る

今回は、前回白く塗った3つある外壁のうち1つにイラストを描きました。松岡さんがイラスト作業中、筆者は傍でお話を聞いたり写真を撮ったりしていたのですが、道行く人たちが歩きながらや自転車に乗りながら、こぞって外壁イラストを見て通られていたのが印象的でした。年配の方から子供まで皆、つい視線が集まってしまっているように思えました。

内装から外装への展開は物件から文化を発信するか

そんな光景を眺めて筆者が思ったのは、松岡マサタカさんの外壁イラストが描かれたこの場所から、文化が発信されていくようなことがあり得るのかもな、ということ。松岡さんは各地で個展を開いたり、缶バッジやシールなどのグッズも販売されていて、そのゆるかわいいイラストのファンが多々いらっしゃいます。

評論家の宇野常寛さんは、「地理が文化を生むのではなく、文化が地理を決定する」と指摘します。これはつまり、1990年代の裏原ブームあたりを最後に「地理が文化を決定する」関係は逆転し、今はインターネットやSNSの発達に伴い、地理とは関係なくインターネット上にコミュニティが発生し、そこから生み出された「文化が地理を決定する」という構図が増えてきていることを言い表しています。

情報化はボトムアップの文化を生む場をストリートからソーシャルメディアに移動させたのだ。その結果、地理が文化を生むのではなく、文化が地理を決定するようになったのだ。

1993年のニュータイプ──サブカルチャーの思春期とその終わりについて(宇野常寛)

何気なく見過ごされている築古の物件なんて掃いて捨てるほどあります。それでも、今回のように外壁まで変わったことで、この古民家アパートが、ちょっとした名所として人を惹きつける場所になるかもしれない。そうなれば、それは新しい変化の一歩と呼べるのかもしれません。

最後にサイン入れをして完成!

最後にサイン入れをして完成!

松岡さんの興味関心を聞いてみた

さて松岡さんは最近、「トマソン」に興味を持っているようです。トマソンとは前衛芸術家の故・赤瀬川原平さんなどが発見、定義した概念で、不動産に付属しまるで展示するかのように美しく保存されている無用の長物(Wikipediaより)とのことです。古民家アパートの近くにも「無用扉」など、トマソンがいくつかありました。松戸にあるトマソンマップを作ってみると面白そうですね。松岡さん主催でトークイベントを行ったり……構想は広がります。

存在がまるで芸術のようでありながら、その役にたたなさ・非実用において芸術よりももっと芸術らしい物を「超芸術」と呼び、その中でも不動産に属するものをトマソンと呼びます。

存在がまるで芸術のようでありながら、その役にたたなさ・非実用において芸術よりももっと芸術らしい物を「超芸術」と呼び、その中でも不動産に属するものをトマソンと呼びます。(Wikipediaより)

MAD Cityが取り組む暮らしのサポート

MAD Cityでは、本コラムのような「変わった物件」など、改装可能な賃貸物件を独自のラインナップで提供しています。また、入居者がライフステージに応じて自ら「更新し続けられる部屋づくり」を目指したワークショップや事例見学会といったDIYリノベーション支援、MAD Cityの住民主催による企画やMAD Cityエリアを中心としたイベント情報を提供するなど、さまざまな住民向けのサポートを行っています。ぜひご覧になってください。

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著者プロフィール

funahashi taku

funahashi taku

空き家を魅力的な「まちのコンテンツ」に生まれ変わらせたり、社会的課題解決のツールとして活用したい、そんな観点から書いているブログ「空き家グッド」を運営しています。2015年6月からはMAD Cityのウェブメディア「madcity.jp」に記事をちょくちょく寄稿しています。
http://akiya123.hatenablog.com/

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