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いつかまた、街歩きを楽しめる日のための「MATSUDO CITY CARD」
古くは宿場町として栄え、現在は首都圏のベッドタウンとして若い世代や子育て世代から支持されている松戸市。一方で「オシャレな街」というイメージを抱かれているとは言い難い。
そんな状況を踏まえて、都市をそこに集う人々にとって魅力的なものにするため何が必要かを調査・研究模索するのが、松戸市と株式会社まちづクリエイティブが連携して進めているラボ型リサーチプロジェクト「MAD STUDIES」だ。毎回様々なジャンルから視野を広げてくれるゲストを招いて、イノベーティブな「まちづくり」はどうあるべきか、知見を伺っていく。
第3回目となる今回では、これまでのSIDE COREと中山英之さんから得たアイディアを元に、実際に松戸の河川敷や道路上で開催した実証実験イベントの模様をレポートする──予定だったが、コロナ禍の影響でイベントは中止となった。
しかし、当然ながら街はそこから姿を消したわけではない。
そこで今回、ユーザーが自由に気になる店舗のカードを組み合わせて使えるリーフレットを企画することとなった。その名も「MATSUDO CITY CARD」。
人々がこれまでのように、街を自由に歩き、人とふれあい楽しめる日のために。
text,edit:Shun Takeda
photo:M.E.A.R.L.
コロナの影響で実装できなかったアイディアたち
松戸市と株式会社まちづクリエイティブが連携して進めているラボ型リサーチプロジェクト「MAD STUDIES」。シリーズ最終回となる本記事では、これまでにゲストとしてお招きしてきたSIDECORE、中山英之さんとのリサーチツアーと対話から得たヒントを実際に松戸の街に実装する実証実験イベント「江戸川チルアウトクラブ」「チャリの駅」を開催し、そのレポートを掲載することで2019年度を締めくくる予定だった。
しかし、新型コロナウィルス感染症拡大の影響からイベントは急遽中止に。残念な出来事だったが、これまでに得られた交流や知見が、実際に街に落とし込まれずに終わってしまうわけにはいかない。では、これからの動きに繋げるために何か形に出来ないものか……。
そんな思いから、この「MAD STUDIES」を一緒に形にしていった松戸のローカルプレイヤーたちを紹介する冊子を制作することにした。タイトルは「MATSUDO CITY CARD」。
読者がアッセンブルすることで完成する「MATSUDO CITY CARD」
街の見どころや楽しみ方を紹介するべくつくられた、この「MATSUDO CITY CARD」。1番の特徴は、読者自身が気に入った場所の記載されたカードを自分でアッセンブルすることで、オリジナルのリーフレットができるという仕組みだ。街に点在する情報を読者自身が編集することで、「MATSUDO CITY CARD」は完成する。
冊子内に登場するのは、この「MAD STUDIES」をともにつくりあげてきた個性的なお店や、アーティストたちだ。
独自の仕入れと調理法で人気を集める立ち飲みカウンターバル「Tiny kitchen and counter」、床屋の2FをDIYで改装しベーグル・本・レコードを販売する「OLD FIGARO PEOPLES+BEBOP BAGEL」、創業74年の老舗スポーツ店にしてストリートカルチャーの発信地でもある「FUJIKURA SPORTS」、明治時代からのルーツを持ち改装後は感度の高い若年層にも親しまれている「山田家の家庭用品」、そしてグラフィティやカリグラフィのエッセンスを用いるアーティストのHOLHYさん。
町の歴史や背景をひもときながら、独自の試みを続けている松戸を代表するローカルプレイヤーである彼らの魅力を閉じ込めた。
またカードの一部には今回中止となってしまったイベントで、実際にまちなかで実装・開催予定だったアイディアも掲載した。
自転車の多い松戸をより楽しい街へという視点から、車道を自転車置場に、歩道に自転車のメンテナンスブースや、ドリンクなどを販売するポップアップストアを設置するという「チャリの駅」。原生林のような自然が広がる江戸川河川敷を活用した音楽とアウトドアからなるイベント「江戸川チルアウトクラブ」。
残念ながら今回実現させることが叶わなかったが、現在の状況が収束した頃には、また新たなアクションが始まることだろう。
松戸を魅力的な街にするには、何が必要なのだろう
ゲストとの街歩き、そしてトークセッションから松戸が魅力的な街となるために必要なもの、そのアイディアを探ってきた「MAD STUDIES」。冊子に登場してもらったメンバーにも、改めて考えてもらった。
「空き地や空き家の有効利用ができるといいですよね。そういう場所が、ビジネスやアートシーンで活用できるある種の自由特区のようになったらおもしろそう」と語ってくれたのは「Tiny kitchen and counter」の古平賢志さん。
「OLD FIGARO PEOPLES+BEBOP BAGE」の吉井昭雄さんは、「個性的なパン屋やコーヒーショップ、レコード店のようなお店が集まった”路地裏”のようなスペースがあったらいいですね」と夢を膨らませる。確かに文化的なお店は集まるほどに、価値観をともにしたお客さんが”路地裏”全体のファンとなってくれそうだ。
「FUJIKURA SPORTS」の藤倉久也さんは「これまで行政の方々と地域の事業者がダイレクトに意見交換できる場がなかったので、今回を機にもっと増やしていければ」と対話の重要性に改めて気づいたという。
「今回のイベント中止は残念でしたが、このように大規模なだけでなく、例えば歩行者天国のように小規模で持続可能なイベントができるようになったらいいですよね」と今後のイメージを語ってくれたのは「山田家の家庭用品」の栗原渉さん。
唯一店舗経営者ではなくアーティストの立場から参加してくれたHOLHYさんは、「旬なグルメなど街の様々な魅力を伝えるローカルメディアがあるといいですよね」とただ魅力を作り出すだけでなく、その伝え方に目を向けていた。
そして、複数のメンバーから同時に上がったのが、文化的な香りのするスポットやイベントがあること。そして、個性的な店が並び楽しく街歩きができることだった。
個性的で発信力のある店舗が集まり、そこである種の連帯が生まれること。自分たちの活動と事業によって松戸をおもしろくさせたいという集団の存在は、単純にそこに住まう人々を楽しませるだけでなく、「松戸に住んでいてよかった」というシビックプライドすら育んでくれるだろう。
ある目的のために集った人々の集まりを、アソシエーションと呼ぶ。この「MAD STUDIES」からは、今の時代にあった魅力あふれる松戸の姿を想像しつくりあげようとする新しいアソシエーションの萌芽が感じられた。
※本記事はmadcity.jp および M.E.A.R.L の共通記事となります
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