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アトリエミルクルの記憶 前編
※このコラムはMAD Cityの元入居者に寄稿いただいています。古民家スタジオ 旧・原田米店にて2014年の3月までアート教室アトリエミルクルを開校されていた、代表・鈴木美穂さんが、MAD Cityでの記憶を写真と共に振り返ります
古民家スタジオ 旧・原田米店との出会い
アトリエミルクルが入居していた古民家スタジオ 旧・原田米店の路面側の扉は5〜6歳児の背丈ほどしかない小さな扉がありました。通称“アリスの扉”。童話「不思議の国のアリス」で主人公アリスが異次元の国に迷い込む小さな扉のようだったからです。大人は勿論、子ども達も身を縮めながら扉を潜り入室している程で、そこをくぐるとタイムスリップをしたような不思議な空間が広がります。
部屋に入り奥に進むと廊下やたくさんの部屋、そして2階に続く階段。玄関をでるとさらに奥まで続く通路、ガレージに離れ…さらに奥にいくと広い庭。外観からは想像できない程広い敷地で、そこは小さな扉から広がる迷路のような、忍者屋敷のような空間でした。古民家スタジオ 旧・原田米店は子ども達にとって秘密基地のようなちょっぴり不思議で特別な場所だったのではないかと感じます。
古民家スタジオ 旧・原田米店との出会いは2011年の夏でした。入居する前は数ヶ月間、松戸駅近くのビル内にある学童ルームのスペースを借りて、週に2日だけ開講していました。ところがそのビルが諸事情により取り壊されるため、退去せざるを得なくなり新物件を探さなければいけない状況となりました。松戸駅周辺の物件を何件か見て回った末、なんとか条件に見合った物件に決めようとしていました。
その頃、スタッフと気になるイベントの張り紙を見つけ、訪ねていったところがMAD City Galleryでした。代表の寺井さんとお話をさせていただくうちに、不動産業も運営されていることが分かり早速案内していただいた所、これは現実なのだろうかと疑うくらいにとても心惹かれたことを今でも強く覚えています。築100年以上の貴重な古民家であることは理由の一つでしたが、有能なアーティストが多数入居しているシェアアトリエということを知り、ますます胸が高鳴り即入居を決意しました。右も左も分からず、手探りで教室をスタートし不安でいっぱいでしたが、入居アーティストの方々や地域の方々に温かく迎えていただきとても心強かったことが印象に残っています。
MAD Cityではアート教室の運営だけでなく、地域の方々も交えた企画イベントや展示、マーケットなども開催しました。その中でも特に思いで深いものを紹介させていただきます。
green drinks松戸「オトナヒミツキチ計画」
「秘密基地」という印象を強く抱いていた旧・原田米店で、大人も子どもも参加できる“ヒミツキチ”をつくるイベントを開催したいと考えたのは入居して間もなくでした。その時ちょうど声を掛けてくれたのがグリーンやサステナビリティをテーマにした飲み会green drinks松戸で主催を務める殿塚君でした。
「オトナヒミツキチ計画」と題し個人商店や大型スーパーを周り、商品ディスプレイや不要になった提灯、スーツケースやちゃぶ台など一風変わった廃材をご提供いただき、参加者はその廃材を自由に組み立て、飾り、ペイントし丸一日掛けてヒミツキチを完成させました。薄暗くなってきた頃裸電球を基地内に灯し完成を共に喜びあったことが印象的でした。
松戸アートラインプロジェクト2011
2011年11月、松戸市内の空き店舗や公共空間を会場としアート作品の展示やパフォーマンスを披露する松戸アートラインプロジェクト(現 暮らしの芸術都市事業)に参加しました。
アトリエミルクルは廃材の芯を使用し「芯のある街」という作品を制作しました。 芯の回収を呼びかけたところ、トイレットペーパーやサランラップ、セロハンテープ、そして呉服屋さんからは反物の芯、工場からフィルムが巻かれていた2mを超える芯など様々な芯をご提供いただき、アトリエミルクルに在籍している子ども達、そして地域の方々やご来場いただいたお客様にもワークショップに参加していただき、一ヶ月かけて「芯のある街」を参加者とつくりあげていきました。
芯には信念という意味も込められており、同じ年に起きた東日本大震災の「街の復興」、さらには持続可能な暮らしを実現させる「エネルギーの再生」をキーワードにモノ、コトの中心となる芯について改めて考えるきっかけとなればと考えテーマを掲げました。一つひとつの作品に込められた一人ひとりの芯が集まり、色とりどりの鮮やかで豊かな「芯のある街」が完成しました。
後編へつづく
著者プロフィール
プロフィール
鈴木美穂
- こどもアート教室アトリエミルクル代表。2011年7月〜2014年3月に旧・原田米店商家をアトリエにアート教室を開設。現在は市川市を拠点に活動中。“ひとりひとりのカラーを鮮やかに!”をモットーに子ども達の持っている才能を最大限に引き出す自由な表現の場をつくることを目指している。http://atelier-mirukuru.com/
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