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廃ホテルがフェスティバル会場に !?『NEW MAD PARADISE』レポート
「ニュー・シネマ・パラダイス」という映画をご存知でしょうか?
映画座「パラダイス」を舞台に少年が成長していく姿を描いた感動的なこの作品は、お気に入り映画の一つであるという方も少なくないのではないかと思います。
映画の中の「パラダイス」はシチリアの小さな村にある唯一の映画館。
「パラダイス」は現代の私たちが知っている映画館以上の役割を持っており、流行の映画を流すほかに、遠く離れた場所のニュース映像を見たり、人々の社交の場としての機能を持っています。映画の登場人物たちは主人公だけでなく、主人公の母親や神父、名もなき人々まで個性豊かに生き生きと描かれていて、ひとつの場所に集う楽しみを感じさせてくれます。
この映画にタイトルを借りた「NEW MAD PARADISE」のレポートをお送りします。
松戸駅前のスタジオ「PARADISE STUDIO」
MAD Cityの「パラダイス」=「PARADISE」はカップルホテル跡地を使用したスタジオです。
普段は、松戸まちづくり会議が運営するアーティスト滞在施設「PARADISE AIR」のほか、音楽家、建築事務所、クラフト作家など5組の多様なジャンルのアーティスト、クリエイターが制作活動を行う場となっています。元ホテルの特性であるユニークな内装や防音性の高さは、この物件にしかない魅力。作品作りに集中できる環境で、日夜それぞれの活動に取り組んでいただいています。
そんなMAD Cityの「PARADISE」ががらりと姿を変えたのが「NEW MAD PARADISE」と称された2日間。
廃ホテルがフェスティバル会場に
イベント「NEW MAD PARADISE」開催のきっかけをくださったのは、ビルオーナーの浜友観光株式会社です。
浜友観光株式会社は松戸駅前のこのビルを所有し、低層階ではアミューズメント施設を運営しています。以前から社会/文化貢献への取り組みとしてご支援をいただいており、「PARADISE」はまちのアーティスト・イン・レジデンスという役割も担っています。
レジデンスの運営をしているのは松戸駅周辺の町会から発足した、松戸まちづくり会議。地域の人々が主体となったこの団体は、松戸駅前が江戸時代に宿場町だったことをヒントに「一宿一芸」をキーワードとし、国内外のアーティストが松戸に立ち寄るトランジットポイントを生み出しているのです。2015年冬はポーランドからアレクサンドラ・ヴァワシェク、ロサンジェルスからマット・シェリダンという、2人のアーティストをこのまちに招きました。
2人のアーティストは、松戸まちづくり会議のコーディネイトによって、インタビューや町歩き、地域のイベントへの参加をしていく中で多くの人々と触れ合い、作品制作をしていました。そんな2人がMAD Cityにいる間に、滞在場所である「PARADISE」をまちに開くイベントを行えたら、というビルオーナーの意向もあってこのイベントが企画されました。

もともと「PARADISE」に入居している入居者とレジデンスアーティストに加えて、外部からも出展者を募り、イベントをより盛り上げるために、「太陽と星空のサーカス」「一番星ヴィレッジ」などで知られる太陽と星空LLPをお呼びし、まちづクリエイティブと共同で企画運営を行いました。
松戸発、新たな世界に出会える2日間
イベント当日は普段閉じられているドアが開かれ、ボクシングの選手を描いた大きな絵画が来場者を迎えました。この絵はこのビルの使われていなかった部屋に仕舞われていたものです。
外観からでは中がどのような構造になっているのかまったく予想がつかないため、会場に着くまでのエントランスや階段も面白かったという感想も多くありました。実は階段に飾られていた絵も、エントランス同様にこのビルの使われていなかった部屋に仕舞われていたものです。
階段を上りきると、赤い絨毯が敷き詰められたフロアに、たくさんの人が行き交い、思い思いに会場を巡っています。
この時公開されたのは、4Fと5Fにある全11スペース。出店者は両日合わせて17組に及びました。
各部屋は内装がホテル当時のまま残されており、ドアを開けるたびに新鮮な驚きがあります。
インスタレーションの公開制作や
アーティストの居室での映像作品の投影、
雑貨やアクセサリーのWSなどなど。どのスペースも多世代の来場者が混じり合って楽しんでいる様子が印象的でした。
このイベントの特徴は多世代の方がいることのほかに、一人一人の方の滞在時間がとても長かったことがあげられると思います。
会期中ずっと音楽を演奏している(7時間×2日間!)アーティストの演奏に加わったり、
ラウンジで一息ついたり、
ステージではライブパフォーマンスを楽んだりと、会場自体の広さはそれほどありませんが、多くの方がいくつのもスペースを巡り、自分なりの楽しみ方を見つけてくれていたようでした。
つづいていく「PARADISE」
「松戸発、新たな世界に出会える2日間」というキャッチコピーがついたこのイベント、人々が出会えた新たな世界とはどんなものだったのでしょうか?それは、これまで触れたことのないアート体験や、WSで作ったハンドメイドアクセサリーを身に着けるうれしさ、ナゾの建物の階段を上っていくわくわく感など、それぞれの心に起きた小さな変化だったのではないでしょうか。
この小さな変化は来場者だけでなく、出展したアーティストやクリエイターの中でも起きていたようで、後日行われた反省会の中では「次回は新作を発表したい」「来た人にファンになって欲しい」「今回試した手法をほかの場所でもやってみたい」「日々の取り組みを発表する場として捉えていきたい」と、これからに向けての思いが語られました。
なお「NEW MAD PARADISE」は、継続的なイベントを目指して今後を検討中です。今回来られなかったという方、ぜひ次回はご来場ください。そして、このイベントに出展者として参加したいという方もMAD Cityは歓迎しています。現在「PARADISE STUDIO」は満室ですが、今後、部屋数が増え、新たな入居者を迎える予定です。
みんなで共有し合い、一緒に時を過ごせる場所、いくつもの機能を持った「PARADISE」にどうぞご注目ください。
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