想い出BOX

人は、毎日毎日色々なことを経験して生きていきますよね。楽しいことも、嬉しいことも、辛いことも、悲しい事も色々ありますが、振り返ればすべてが想い出になります。それはつまり、長く生きていればいるほど、想い出がたくさん増えていくということじゃないでしょうか。急に何かと思われるかもしれませんが、今回ご紹介する物件は、そんな地元に長く住まわれている方々の想い出に囲まれたテナントなんです。

例えば物件と同じビルに店舗を構える塩谷刃物店さんから感じられるのは刃物にまつわる想い出。

店頭に貼り出された手書きの張り紙にご注目頂くと、ここには「街中では安価な包丁が多く出回っていますが、長く使えて、使えば使う程、味が出る一品物こそ高品質で経済的です」との内容が綴られています。

これはオーナーさんが、ひたむきに刃物に向き合ってきた末に生まれたメッセージ。そんなメッセージからは良質な刃物を提供しお客様に喜ばれ続けてきた、オーナーさんの仕事が想像できます。今回の物件はそんな刃物屋さんの隣にあります。

物件はこれぞスケルトンというコンクリートむき出しの路面テナント。今はすっかり空っぽですが、そこにも物件に詰め込まれてきた想い出を嗅ぎとることができます。

ダイヤモンドのようにカクカクしたショーウィンドウや、半月のような形の取っ手には建築当時のこだわりが見え隠れしますし、中にわずかに残っている鉄線と電線の骨組には、美容室時代に使われたパーマをあてる機械の面影が残ります。

かつては喫茶店、美容室と受け継がれてきたこのテナント。オーナーさん曰く、代々この辺りの繁盛店となって賑わっていたそうですよ。

目の前にある高架はMAD City 随一のアートスポット。そしてここも住民の想い出の場所となっています。物件の中からウインドウ越しに見える南面の高架にはMHAK、ZEDZ、大山エンリコイサムによって描かれた「MAD WALL」、そして北側には松戸アートラインプロジェクト2011の際に、HITOTZUKIによって描かれた鮮やかなブルーの壁画を見ることができます。

ここ数年で突如アート性をもったこの高架に、地元の自治会の方々も感慨ひとしお。名も無いただの高架沿いが、住民によって「根本壁画通り」と命名され、壁画の隣には公式に看板が取り付けられています！近々、ゼンリンの地図に掲載されるのではないか……という話を聞いています。

さらにさらに、物件を出ればすぐに見えてくる松戸西口公園は松戸のサブカルチャーの発信基地。昼間からお酒をたしなみながら将棋をしている地元のおじ樣方を横目に、買い物帰りの親子が遊んでいるミスマッチ感をいつでも見ることができ、最新機器のipodと古民具の南部鉄器が並んで売られるような謎だらけのフリーマーケットも開催されています。ここにも、地元に根ざした住民の愛着と、MAD Cityらしいなんとも言えない哀愁を感じることができます。

駅から徒歩3 分と便利な環境が揃っているにも関わらず、駅前の賑やかさとはちょっと異なり、愛情と哀愁の想いが交差するこのエリア。今は空っぽでスケルトンのBOXに、次なる想い出を刻む、そんなお店を出店してくださる方をお待ちしています。