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「古い椅子に新しい生命を」ヨーロッパの伝統技術を用いる女性職人――遠藤友嘉里さん(はり屋)

旧・原田米店の一角に、ヨーロッパの伝統的な技術を用いて椅子の張替えを行う若い職人の工房があります。遠藤さんは航空会社に勤務後、イタリア、次いでイギリスに渡り、憧れていたものづくりの世界へ飛び込みました。遠藤さんに、椅子張りについてその熱い想いと共にお話をうかがいました。(文・写真/吉野元春)



伝統的な椅子張りでは自然素材が使われたり、張替えも手作業で行われています。例えば、最近では椅子の中身はウレタンなどが主流になっていますが、伝統的な椅子張りでは馬毛やヤシの実の繊維など自然の素材が使われていたり、椅子にも手縫いでステッチを入れるそうです。ヨーロッパでは専門の職人たちがその技術を日々守り、高めています。

旧・原田米店内にある遠藤さんの工房



■自然の素材を扱う「椅子張り」は理屈抜きで楽しい
――「椅子張り」と初めに聞いて、何をするのかすぐに思いつかなかったんです。珍しいお仕事ですよね。

そうですね。長く使った椅子の骨組みを残して、座面や背もたれなどのうち古くなって使えない部分を新しい素材で作りなおすのが椅子張りという仕事です。そうすることで座り心地も戻りますし、見た目にも生まれ変わります。

伝統的な技法で作られた椅子には、100年持つと言われるものもありますから、張替えをして、それこそ親子に渡って受け継ぐ、そういうふうに使うことができるんです。

――特に楽しい工程はありますか?

なんだろう。すべての工程がわくわくするんです。自然の素材を扱っているので、さわっていて気持ちがいいし……セラピーを受けているみたいなんです(笑) 心が洗われるようなところがある。理屈抜きで、楽しいですね。

「はがし」と呼ばれる道具で釘を外し、古い座面を剥がす作業。話をしながらも、手は動きつづけます。



■生業を持ってこの場所に長く住んできた人との出会い
――この旧・原田米店に工房を構えることになったきっかけは何ですか?
2011年の夏ごろに物件を探す中で、脱東京不動産のウェブサイトを見て、この場所のことを知りました。椅子張りは、けっこうホコリが出たり汚れたりするし、音も立つので、ぴったりでした。

――この場所って、人も魅力の一つだと思うんです。

そうそう、この旧・原田米店の周りにも素敵な方がたくさんいるんですよ。ついこのあいだ知り合った近所のミシン屋さんがすごくて。修理もできる職人さんで、情熱も腕もある人なんです。いま色々教えてもらっていて、行きつけになりそう。

――この界隈で生業を持って長く住んできた人と、遠藤さんみたいにこの場所で新しく何か始めようという人が出会う。これからに向けて、とても楽しみなことですね。

そうですね。いろいろ学ばせてもらっています。あの、椅子の中身がどうなってるか、知っている人ってほとんどいないと思うんです。

■自然の素材を使った椅子は座り心地も違う
――ええ、恥ずかしながら遠藤さんにお会いする前には想像したこともありませんでした。

そうだと思います。私もそうでしたから。
でも、自然の素材を使った椅子とそうでない椅子とは、もちろん長く使えるかどうかということも違いますし、座り心地も違うんです。そういうことをもっと多くの方に知っていただき、私の張り替えた椅子に座ってもらえたらうれしいな、と思います。

――松戸に新しく来た人も長く暮らしている人も、遠藤さんの椅子に座ってほっと一息つく、そんなふうになっていったらと想像します。ほんとうに、お話をうかがえて良かったです。ありがとうございました。

遠藤さんが張替えた椅子はMAD City Galleryで販売をしています。ぜひ一度、遊びに来てみて下さい。



■お仕事のご依頼はこちらから 
MAD WORKS
http://madcity.jp/main/2012/01/hariya/

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