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「こけし荘」解体ワークショップレポート|空き家活用を通じて地域を活性化する
M.E.A.R.Lの運営元・株式会社まちづクリエイティブが新たに「MAD City」内で、「こけし荘」なる空き家の活用プロジェクトをスタートさせた。
現在、空き家数の増加は社会問題化しており、2013年に総務省が行った「住宅・土地統計調査」によると、日本全国の空き家の数は820万戸にも上り、その空き家率は総住宅戸数の実に13.5%を占めるとされる。
今後も少子高齢化が進むにつれて空き家数は増加すると見られ、放置された空き家による治安の悪化や倒壊による近隣住民への影響などが危惧される。2015年には政府が「空き家対策特別措置法」を施行するなど、少しずつ動きを見せているが、空き家の所有者も自治体もどう対応すればいいのか苦慮しているのが現状だ。
今回、編集部は2018年1月24日に行われた空き家の解体ワークショップの現場にて取材を敢行。千葉大学の学生も多数参加した工事の様子から、今後の空き家活用方法までレポートする。
text:Yosuke NOJI
photo:Akira KUROKI
Edit:Shun TAKEDA
千葉大生の大半が知っている「こけし荘」の解体
千葉大学の通用門のすぐわき。そこでひときわ存在感を放っているのが、今回活用されることになった空き家「こけし荘」だ。
この日、解体ワークショップに参加したのは、地元工務店と株式会社まちづクリエイティブのメンバーほか、緑地環境管理学を専門とする千葉大学園芸学部の秋田典子研究室のゼミ生や、オリンピックに向けて活動している学生団体おりがみの学生など総勢15名ほど。
大学のすぐ近くということもあり、「松戸キャンパスに通う千葉大学生なら知らない人はいないと思います」と、秋田典子研究室所属の大学院生・宮野さんが語るように、この物件に対する千葉大学生の注目度は高く、話を聞いてみると、今回の解体ワークショップにも自主的に参加している人が多いようだ。
まちづクリエイティブが「 GON’ZO Kitchen(旧・浮ケ谷邸)」という物件を拠点に、千葉大関係者と連携してきた、食べられる植物のプランターを地域の道沿いなどに設置する「エディブル・ウェイ(⾷べられる道)」のプロジェクトにも参加している園芸学部の江花さんは、「この場所が、今後気軽に地域の人たちと学生が交流できる空間になったら嬉しい」と期待を寄せる。
地域住民の⾃宅前や通りの空き地などに設置されているプランター
今回の解体ワークショップでは、手始めに1階部分の内装を中心に工事を行う。講師の指示のもと、学生たちが最初はおそるおそるであったが、次第にコツをつかみながら作業を進めているのが印象的だ。
千葉市と協力し、2016年から「パラスポーツフェスタ千葉」を企画・実行している学生団体おりがみの学生たちは、こういった本格的な施工は初めて。どうして解体工事に参加することになったのか?
「僕は西千葉キャンパスなので、『こけし荘』のことは詳しく知らなかったんです。でも、まちづクリエイティブの方に『おもしろい建物が近くにあるんだよ』と教えてもらって、今回は参加することにしました。まだどうなるかわかりませんが、この場所を僕らの団体でも使わせてもらうことも考えています」と語る代表の都築さんも、この場所の活用に興味津々だ。
学生団体「おりがみ」のメンバー
ネガティブな印象があるほど「空き家」は活用しやすい?
実は、今回の解体ワークショップに先んじる形で、秋田典子准教授の講義内で松戸市とまちづクリエイティブが共同でワークショップを開催している。当日は、空き家再生のテーマとして「地域コミュニティ」「国際交流」「社会人と学生」を設定し、各自アイディアを出し合った。日替わりで留学生などが店に立つ「KOKESHIカフェ」や朝必ず起こしてもらえる「宿泊所」など、多彩なアイディアが学生から寄せられた。
株式会社まちづクリエイティブ代表取締役・寺井元一
提案されたアイディアの一例
とはいえ、「こけし荘」が注目を集めているのは、それだけ今までネガティブな意味で目立ってしまっていたから、という側面もある。その点、活用する上で障害になることはないのだろうか。
「むしろ、ネガティブな側面というのはうまく転換できればその分プラスに変えられるとも考えられます」と語るのは、まちづクリエイティブの斉藤だ。
「たとえば、MAD Cityで扱っている物件に、築50年以上の『古民家アパート』という木造物件があります。古いと外壁にも傷みが出て、オーナー様が補強する必要があるんです。それだけだとただの修繕なんですが、入居者がイラストレーターでオーナー様との交流を促したところ、どうせ修繕費用をかけるならとオーナー様からの支援もいただき、修繕のたびに新しい壁がキャンバスになって入居者がイラストを描き、周囲ぐるりが壁画で彩られた物件に変わってきたんです。周辺ではちょっとした名物のようになりつつありますが、この例は物件のネガティブな側面があったからこそ起きたんですね。」
壁画が描かれた「古民家アパート」の外観
ほかにも、「傾きハウス」「古民家スタジオ 旧・原田米店」など、まちづクリエイティブは過去にも“難あり”物件を再生させてきた実績がある。それだけに、今度はどのように活用されるのか、非常に楽しみだ。
「早ければ、春先にはイベントやワークショップなど、小さいことからでも活用していきたい」と言うように、今後は2月いっぱいを目処に工事を終え、その後はいよいよ希望者を募り、活用を本格化していく予定だ。
全国的に問題となっている空き家だが、うまく活用することができれば、地域交流の場として再び機能する可能性を秘めている。単に「空き家」を負債と見なすのではなく、改めて資産としてその物件の持つ魅力を見直してみてはいかがだろうか。
※本記事はmadcity.jp および M.E.A.R.L の共通記事となります
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