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MADマンションの屋上ビアガーデンの様子。

「Sunday Beer Garden vol.3」が開催!マンションの屋上でイベントをするために必要な3つのポイント|公共空間を大いに使う!(準公共空間・屋上編)

マンションの屋上を大いに使う

公園や道路、河川敷、ビルやマンションの屋上など個人に属さない公の空間、つまり公共空間を大いに使うことで、逆説的ですが私的空間(自分のための空間)を良くしたり、楽しくすることができるはずです。

MAD Cityでは、商店街の道路を封鎖して路上で各店おすすめメニューやお酒を楽しむ路上宴会江戸川の河川敷でバーベキューど、公共空間を使ったイベントを多数仕掛けてきました。今回は賃貸マンションの屋上という、準公共空間の活用の取り組みについてまとめます。

公共空間を大いに使う!(河川敷編)はこちら
公共空間を大いに使う!(公園編)はこちら
公共空間を大いに使う!(ホットスポット編)はこちら

屋上使用の可能性

屋上というと、普段は施錠されていたり、空調や給水といった建物全体のインフラ設備がたくさん置いてあったりで、必ずしも身近な場所ではないかもしれません。そもそも高いところなので転落や落下の危険性があるし、重要な設備類がたくさん置いてあるわけで、建物管理者からすると、無闇に誰でも入れるようにはしたくないと考えるのも無理はありません。

いきなり悲しいお知らせになりますが、一般的には「立ち入り」すら禁じている場合がほとんどのようです。
入居する際の契約書にきっちりと書かれているとのこと。
屋上の用途については何か法律できっちり決まっているというわけではなく、マンションやビルのオーナー/管理会社が各々判断して決めていきます。
その各々判断の大部分が「立入禁止」というジャッジになっているのが現状のようです。
主な理由は下記2点。

  • 落下の危険性がある
  • 水道/電気系の重要な設備に触れてほしくない

……超正論。
管理している側からするとリスクしかないですね。

不動産営業に聞いた!マンションの屋上って使っちゃダメですか?

マンションオーナーや不動産管理会社にとって屋上使用はリスク以外の何者でもないのが一般的な理解です。

マンションオーナーや不動産管理会社にとって屋上使用はリスク以外の何者でもないのが一般的な理解。あるのに「ない」扱いの空間と言えます。(画像引用元)

でも屋上って、開放感があって眺めが良いなど、魅力的な空間でもあります。

屋上利用の可能性は広がります。画像はシンガポールにあるホテル「 Marina Bay Sands」の屋上にあるプール。

屋上利用の可能性は広がります。画像はシンガポールにあるホテル「 Marina Bay Sands」の屋上にあるプール。実在します。(画像引用元)

みんなで花火を見たり、ヨガをやったり、音楽ライブをやったり…。屋上を自由に使えたらと思うと色々なアイデアが湧いてきて、なんだかワクワクしてこないでしょうか。

ビートルズ最後のライブコンサートはアップル社の屋上で行われました。(画像引用元)

ビートルズ最後のライブコンサートはアップル社の屋上で行われたとのこと。ちなみに画像を見るに柵は単管で腰の高さ、この屋上でのイベント開催はかなり危険だったはずです。(画像引用元)

MADマンションの屋上でビアガーデン「Sunday Beer Garden vol.3」を開催

MAD Cityの運営施設(拠点)の一つであるMADマンションで今夏、入居者でフードコーディネーターの古平賢志さん主催による屋上ビアガーデン「Sunday Beer Garden vol.3」が開催されました。MADマンションではこれまでにもクリーン・デイなどといった住民主体のコミュニティイベントが盛んで、今回開かれた屋上ビアガーデンもその一つです。

Sunday Beer Garden Will Be Back.coming soon!

Posted by MAD Mansion on 2015年8月3日


2014年の夏と秋に引き続き、今回が3回目の開催になります。今回は、食べ物や飲み物は全て持ち寄り、入場料は無料、参加者はMADマンションの住民とその友人などの事前予約制でした。これまでに開かれたビアガーデンの様子や、そもそも屋上でビアガーデンをやろうと思った経緯などは、次の記事が詳しいです。

閉じられた空間をオープンな場へ!「SUNDAY BEER GARDEN」仕掛人に聞く「集合住宅の屋上でビアガーデンを開くための5つのステップ

MADマンションの屋上ビアガーデンの様子。

MADマンションや他のMAD City物件の住民、MAD Cityスタッフなど約40人が参加しました。

魅力的な屋上使用のために万全の危機管理対策が必須

屋上を使ったイベントの開催には人の転落や物の落下、建物全体のインフラ設備との接触などの不測の事故、近隣からの苦情など、様々なリスクが想定されます。屋上という、これまであまり当たり前に使用されてこなかった場所を創造的な空間へと変えるために、まず主催者にはイベントの企画力が求められます。そして建物のオーナーや不動産管理会社には、屋上使用にあたり想定されるリスクを最大限無くす危機管理・マネジメント力が必要になります。

MAD Cityの運営元のまちづクリエイティブでは、屋上使用のルールを盛り込んだ「屋上使用に関する使用規則」という自主規定を定めています。施設管理者と住民、双方の責任者の設置と権限の明確化、事前準備のポイント、安全/クレーム対策などが盛り込まれています。しかし、こうした明文化されたルールがあっても、実際に運用されなければ絵に描いた餅になってしまいます。今回はこういった自主規定の制定や運用など、どのように安全・安心な屋上ビアガーデンを実現させようと取り組んでいるのか、3つのポイントに整理してお伝えします。

中央の5階建て賃貸マンションがMADマンションです。全20戸中11室をMAD Cityが借り上げて運営しています。

中央の5階建て賃貸マンションがMADマンション。全20戸中15戸(記事掲載時点)をMAD Cityが借り上げて運営しています。

1 屋上使用のルールの明文化と、注意事項の周知徹底

マンションの屋上は公園や道路と違って完全な公共空間ではありません。かといって個人住宅のような完全な私有空間でもありません。つまりマンションの屋上は、入居者の共用スペースという「準公共空間」とでも呼ぶべき、特殊な場所です。そんな場所の利活用に当たっては前例が少ないので、イベントの企画はもとより危機管理、マネジメントが特に重要であることは既述しました。

そこでまずは事前準備や安全/クレーム対策、トイレや電源などのルールを明文化します。また、屋上使用で知っておくべき注意事項を主催側だけでなく、参加者にも周知徹底することが重要になります。屋上使用のイベントは一歩間違えば大事故に発展しかねません。もし事故が起きれば多大なコストが発生しますし、もちろん二度と同じようなイベントはできなくなってしまうでしょう。今回のビアガーデンでは次のような項目を事前から確認していました。

  • 屋上の柵に乗り出したり、食器を置くなど落下の可能性のある行為の禁止
  • 食中毒などに対する自己責任
  • 近隣の迷惑になるような騒音の禁止
  • ごみなど廃棄場所の指定
  • 事前予約制の徹底

その他、マンションの住所をSNSなどにアップしないこと、トイレや体調不良時の休憩場所(このイベントでは主催者の自宅部屋)、喫煙スペースなどについても指定が行われ、参加者全員に受付で事前説明し、内容を理解してもらった上で署名いただきました。

屋上使用のルールは細かいですが、事故を未然に防止するためにはとても重要なことです。

イベント参加者は注意事項を読んで署名する仕組みです。リスクが大きい屋上使用のルールは細かいですが、事故を未然に防止するためには、周知が欠かせません。

2 人の転落・物の落下防止のための会場設営と動線設計

参加者の事前説明を徹底したとしても、事故を予防するためには物理的な対応が欠かせません。会場の設営や動線の設計を工夫することで、転落・落下事故を予防することが重要です。具体的には、屋上の中央にテーブルを設置する、風で吹き飛びそうな物は排除する、屋上の縁に物理的に入りづらいように什器などを配置する、転落・落下防止を促す張り紙を貼る、などです。理想としては、屋上使用に関する注意事項を理解していない人であっても安全に過ごせるような、ユーザーインターフェイスに優れた会場設営と動線設計が求められます。

屋上の縁の部分にコップや皿など落下の危険性がある物は置かないように注意を促します。

屋上の縁の部分にも張り紙を貼り、コップや皿など落下の危険性がある物は置かないように注意を促しているところ。

また、救急病院の連絡先を控えておくなど、体調を崩した方や急病の方が出てもすぐに対応できるようにしておくことも重要です。そのため階段や廊下、エントランスなどは常に通れるようにしておきます。これは他の入居者の通行を妨げないという意味でも必要なことです。そして最終的には主催者(住民)が会場を片付け・清掃した上で施設管理者(MAD City)に写真付きで報告することとなりました。

3 音・光・振動など近隣住民への配慮とクレームの予防

最後に重要なのが近隣住民への配慮の問題です。イベントは8月の日曜日の夕方から夜にかけて行われましたが、近隣の高層マンションには多くの人が住んでいるため、特に騒音には細心の注意を払う必要がありました。イベントを盛り上げるためにギターなどの楽器演奏も行いましたが、重低音が強いジャンベなどの打楽器系の楽器は禁止にしたほか、現場で施設管理者が随時対応する場面も出てきます。

楽器演奏は騒音として認識されない音量、時間帯であれば可能としました。

楽器演奏は騒音として認識されない音量、時間帯であれば可能としました。

特に騒音については、高音・重低音によっても音の広がり方が違うこと、道路や鉄道など周辺の交通量などによっても周辺住民の許容範囲が異なること、季節によっても(夏だと網戸になさっている方が多いため)苦情の可能性が変わることなどを考慮する必要があります。現在はスマートフォンのアプリにも無料のデシベル計ソフトがありますから、そういった道具を主催者や施設管理者が利用し、音が出ていない時の周辺の騒音状況を測り、それを大きく上回る音が出ないように配慮するなどが望ましいでしょう。

ただし音は風向きによっても聞こえ方が変わることもあり、個々人によって聞こえ方も違いますから、苦情の可能性をゼロにすることは簡単ではありません。その際、すぐに音を小さくするためには、主催者と施設管理者が事前から責任と権限を確認して、施設管理者が強制的に音を下げることができるような体制が必要です。こちらのビアガーデンでは、これまで一件も苦情は出ていませんが、日本の過密な住宅事情の中で屋上を使ったイベントを行うには音はもとより、光や振動、臭いなどといったことに配慮し続けることが重要です。

公共空間だけでなく、準公共空間も利活用する

MAD Cityのエリア内では、今回の屋上ビアガーデンのような住民主体のイベントやプロジェクトが自然発生的に生まれています。それぞれの住民が持つ専門的な能力や柔軟な発想力、果敢な行動力などがこれらの取り組みの源泉となっています。リスクが高く、これまであまり使われてこなかった屋上という準公共空間を使いこなすことができれば、さらに暮らしの豊かさは格段に向上するはずです。MAD Cityではアソシエーションデザインクリエイティブシティといった理念や概念を研究しつつ、「やれることが増える」まちづくりを実践しています。こうしたMAD Cityのまちづくりの取組について、取材や視察でご説明させていただいています。ご希望される方または団体はこちらまで是非ご連絡ください。

取材・講演依頼などのご相談はこちら

著者プロフィール

funahashi taku

funahashi taku

空き家を魅力的な「まちのコンテンツ」に生まれ変わらせたり、社会的課題解決のツールとして活用したい、そんな観点から書いているブログ「空き家グッド」を運営しています。2015年6月からはMAD Cityのウェブメディア「madcity.jp」に記事をちょくちょく寄稿しています。
http://akiya123.hatenablog.com/

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