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「台湾×松戸インバウンドシンポジウム」開催。台湾のプレイヤーは松戸をどうみたか

千葉県松戸市は、宿場町として古くから栄えた町。そんな当所にも、インバウンドの波がやってきている。ここで日々、商売をし生活している人たちは、そんな状況をどう考えているのか。

松戸商工会議所の平成30年度千葉県小規模事業者支援提案型事業の「まち創生インバウンドへの取組」として、シリーズ2回目となる今回は、前回の座談会を踏まえて出来上がったミニツアーを近年注目を集める台湾東部・南部からお招きしたゲストお二人に体験してもらった。

ツアー体験をしていただいたのは、建築家で台湾元智大学アーツ&デザイン学科学部長を務める陳冠華(チン・カンカ)氏、キュレーターの頼依欣(ライ・イーシン)氏の2名。お二人ともアートやクリエイティブを活用した、実践的なまちづくりのプレイヤーとしても知られている専門家だ。

その後のシンポジウムでは、彼らが実際に行っているアートとクリエイティブを活用した事例をもとに、議論が行われた。親日国としても知られ、近年相互に観光客が増えている台湾のプレイヤーに松戸駅前エリアはどのように写ったのか。

Text / Edit:Shun TAKEDA
Photo:Yutaro YAMAGUCHI
通訳:池田リリィ茜藍

【本事業は千葉県小規模事業者支援提案型事業により実施しています】

台湾からのゲストに体験してもらったミニ「MAD宿ツアー」

 

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松戸駅周辺に集積しつつあるクリエイター人材や地元店舗とともに、台湾人旅行客を想定したまち歩き体験ツアー「MAD宿ツアー」。3月の開催を前に、そのダイジェスト版ともいえるミニツアーを体験してもらった。

今回のツアーはダイジェスト版とはいえ、松戸駅前エリアの要所を巡ることができるもの。アーティストたちの地域拠点でもある原田米店やPARADISEの見学、呉服店・葛西屋でのお茶体験、職人による手作りの提灯などを扱う八嶋商店での提灯づくり、酒処ひよしでの試飲会を楽しんでもらった。写真とともに、当日の様子を振り返ってみよう。

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葛西屋では日本庭園とお茶の体験

葛西屋では日本庭園とお茶の体験

 

ホテルを改装したアーティスト・イン・レジデンス「PARADISE」も視察

ホテルを改装したアーティスト・イン・レジデンス「PARADISE」も視察

 

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八嶋商店では文字入れにも挑戦

八嶋商店では文字入れにも挑戦

 

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酒処ひよしでは、熱燗を試飲

酒処ひよしでは、熱燗を試飲

熱気高まる会場で台湾×松戸インバウンドシンポジウムがスタート

 

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ツアー終了後は、まちづクリエイティブのオフィス1FのMAD City Galleryにて「台湾×松戸インバウンドシンポジウム」が開催された。会場に出向くと、開演前にも関わらず早くも大賑わい。なんとか一席を確保してもらったところで、松戸商工会議所からの主旨説明につづき、台北駐日経済文化代表処台湾文化センターの郭兪廷さんの挨拶からシンポジウムの幕が開けた。

まずは、陳さんから自己紹介をかねたセッションがスタートした。彼が用意してきたスライドはなんと100枚超!柔和な笑みをたたえつつも「全てを紹介するのは厳しいので、スピーディーに行きましょう」という彼の言葉に、来場者たちの間にキリッとしたムードが立ち上がる。

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建築を専門とする陳さんは、自身の建築家としての制作と平行しながら教鞭をとって30年。世界各国を旅することが好きで、日本文化と近現代の小説家の作品にも関心があり、大江健三郎や村上春樹、芥川龍之介や川端康成を好んでいるという。特に川端の後期を彩る名作『古都』は、年を追うごとに惹かれていった大切な作品。この日も前乗りしていた京都から松戸に移動されたそう。

「僕のような旅と日本文化が好きな人を、どうやって松戸に連れてこられるかを今日は考えてみたいと思っています」という言葉とともに、台湾北部に位置する都市・基隆(キールン)市で行われたプロジェクトの紹介がはじまった。

アーティストと住民の理想的な連携が生んだ基隆市でのプロジェクト

 

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基隆市は、その地形を活かし商業港、漁港として栄えてきた町。多彩なランドスケープから観光客にも人気のエリアだが、そんな町でアーティストと連携したインバウンド向けの観光プロジェクトが行われた。

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風光明媚な基隆の町

風光明媚な基隆の町

海へと向かう高低差のある立地を活かした遊歩道やピロティなどを設計し、その場所を活用したイベント、歩きながら町の歴史に触れることのできるツアー、アーティストと地元民からなるフリーマーケットなどの企画は、一見すると地味にも思われるが、どれも自然とこの地域ならではの文脈に接続されている。

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日本からのピースボート寄港時に開催されたこのツアーは、募集開始半日で定員に達する人気ぶりで、99%の満足度も記録したという。

「最も重要だったのが、地域の人々との連携を高めることでした。実際にアーティストと地域の方とで何度もワークショップを行ったんです。直接的にアートとは関係のないことでも対話を続けること。ここから生まれる信頼性が、観光には必ず必要となるんです」

そう語る陳さんが考える松戸の課題は、観光資源に恵まれているとはいい難いこの土地が持つ「ならではの価値」をどこに置くかだ。陳さん自身はそれをアーティストやクリエイターの持つMADな魅力だと説く。

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「アートやクリエイティブに関心のある人を受け入れてくれるような土壌が、MAD Cityにはあると感じました。そういう場所は、僕のような変人も居心地がいいんです(笑)。そんなMADな魅力とこの地域の人々をうまく結びつけられれば、松戸は名実ともにMAD Cityになれるんじゃないでしょうか」

歴史ある京都、観光資源とエンターテインメントにあふれる東京。そんな都市と比べるのではなく、松戸だからこそ体験できる魅力的なプランを、地域住民と一緒につくっていくことの重要さ。自らの体験を通じた文化的なアプローチの仕方を、時にジョークを交えて和やかに語られる陳さんのセッションに、聞き入ってしまった。

コーヒーショップの2Fから生まれた頼さんのプロジェクト

 

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続いては頼依欣さんのセッションだ。
イギリス・ウエストミンスター大学視覚文化研究所で現代アートとメディアについて研究していた頼さんが、台湾に帰国したのは2011年。その時期から暮らしているというのが、現在ではオルタナティブスペースとアーティストたちの活躍で話題となっている台南だ。

しかし頼さんが帰国した当初はまだその動きはない。台南はもともと観光都市と知られており、台湾における京都のような存在だったという。帰国当時、観光客で賑わうもハイスピードで短期的な消費で終わってしまう彼らの都市体験の現状を垣間見た頼さんは、アーティストの力を使ったプロジェクトを立ち上げる。

提灯職人の技術をたずねる頼さん

提灯職人の技術をたずねる頼さん

「アートの力を使ってその土地の持つ力を見直し届けよう、と思ったんです。その点ではMAD Cityに通じるところがありますね」と語る彼女が、最初に置いた拠点はコーヒーショップの2F。その理由は「アート業界に向けるのではなく、一般の地域住民とのふれあいの中からアクションしたかった」からだ。

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そんな場所から、様々なアートプロジェクトが生まれていった。グルメシティといわれる台南の文脈を使った人々の「記憶の味」を辿る作品や、心理地理学的な手法を用いた地域住民による「記憶だけで描いた地図」をもとに作成した平面作品。さらにそれを、台湾の路上で古くから親しまれてきた子どもの遊びとかけわせて生まれた立体作品。どれも、ローカル性と記憶にまつわる魅力的な作品たちだ。

古い映画館の看板を子どもが描き、大きな話題に

 

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中でも特に頼さんが紹介したいというのが、台南のある古い映画館を使って行った企画。その映画館では、職人が魅力的なイラストで上映作品を紹介する手書き看板で有名だったが、残念ながら近年では廃れてしまったという。

そんな文化と魅力を復興させようと、お絵かきコンテンストで選ばれた子どもの作品を、看板職人の力と技術を借りて大型看板に描いたのだ。これが様々なメディアで取り上げられ、台中を越えて台湾中で話題となった。創作欲を刺激された看板職人は、その後に個展を開くまでとなり、こちらも多くのメディアが取材に訪れたという。

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その他にも、麻豆という地域で開催されているトリエンナーレを紹介してくれた。もともと製糖業で栄えていたこの地域のリサーチの必要性から、3年に1度の開催としている芸術祭で、オーラルヒストリーの聞き取り調査も行っているという。

そこで得られた成果は芸術祭だけでなく、連携している10の小学校での地域の歴史教育にも生かされているそうだ。

地域名産のサトウキビを使ったお酒の商品開発を行ったり、SNSの利用率の高い台湾の国民性を活かしたローカルスタンプラリーのような企画を考案したり、アートとローカル、そしてテクノロジーを循環的に活用した多様な展開は、聞いているだけで魅力的だった。

松戸の持つインバウンドの可能性

それぞれのセッションの後には、コーディネーターをつとめるまちづクリエイティブ代表の寺井元一さんを交えたフリートークに。まず話題にのぼったのが、陳さん頼さんがともに重要視している地域コミュニティとの連携についてだ。

まちづクリエイティブ代表の寺井

まちづクリエイティブ代表の寺井さん

「どのような点に注意すれば、アーティストと地域コミュニティをつなげられるのでしょうか?」という寺井さんの問いに、「アーティストをコントロールするのはそもそも難しいよね(笑)。私も今日しゃべりすぎていますし」と笑いを交えて陳さんが答えてくれたのは、まず地域住民が嫌な思いをしないことが何よりも先決だ、ということ。

「その上で大切なのは、その土地のありのままの姿を伝えること。過剰なリップサービスは観光客のおかしな期待を育むばかりです。そうではなく、その場所の持つ魅力も課題も誠実なまま伝え、歓迎の意を届けることなんです」

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つい地域課題をお客さんに伏せてしまいがちな観光業において、シンプルだからこそ重要な視点といえるだろう。

話題はしだいに、この松戸をどう海外の人に魅力的に届けられるかという本質的な議論に向かっていく。春節の時期によく家族で日本旅行を楽しむという頼さんは、宿場町というフレーズに反応していたのも印象的。

「今回の旅ではじめて出会った言葉で、その意味や歴史的背景を知ると、とても興味が湧きました。交通や連絡手段など何もかも便利になった今、宿場町という古来の文脈で松戸を知り歩くというのは、すごくロマンチックだと思ったんです」と語る。

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また、MAD Cityというネーミングには、二人とも興味と関心を持ったようだ。

「MADとつけたのがやっぱりいいですよね。本当の名称として使ってもいいくらい。そのセンスを活かすためにも、さらに尖ったアートを楽しめる企画があってもいいんじゃないでしょうか」

と陳さんが語ると提灯体験を例に出して

「職人の技術に実際に触れてそのレベルの高さに驚きました。同時に、ひょっとすると彼らにも作りたい作品があるかもしれない、とも思ったんです。職人とアーティストが協同することで、眠れる可能性を探り当てられるかもしれません」

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と頼さんが答える。

地域の歴史や文脈に根ざし、住民と協同しながらよりMADに! という台湾からのゲストお二人の指摘が、今後どのようにこのプロジェクトに実装されていくのだろうか。先の展開がより楽しみになってきた。

 

※本記事はmadcity.jp および M.E.A.R.L の共通記事となります

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