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インターネットとテクノロジーの力で不動産業をアップデートする!「不動産テック」サービスまとめ4選
「不動産テック」続々
不動産というと、とかく地域密着なイメージがありますよね。しかし昨今、不動産の仲介などをインターネット上で完結させる新しい種類のサービスが相次いで登場しています。
共通しているのは、不動産取引のビジネスとIT(インフォメーション・テクノロジー)をかけ算したような斬新なサービスであること。彼らは自らを「不動産テック」企業と名乗る。物件の売却や購入、賃貸、リノベーション、住宅ローンなど、内容は多岐にわたる。
今回はそんな「不動産テック」なサービスを4つご紹介します。
1 Nomad.(ノマド)
賃貸住宅の借り手向けに特化した物件検索・仲介サービス「お部屋探しサービスNomad.(ノマド)」は、物件検索、見学の予約、契約時の審査などをすべてネットで完結させられます。大きな特徴としては2014年2月から、取り扱っている全ての物件の仲介手数料が無料であることです。物件を決めて仲介手数料をいただくのではなく、物件を探すサービスに利用料(800円/月)をいただくビジネスモデルです。最初の2週間は無料で利用出来ます。メールアドレスを入力するだけで登録可能です。なお、物件見学は有料です(600円/1回)。
ノマドの売りは仲介手数料を無料にして、必要な期間だけ月額契約する形をとる。料金は月額800円(税別)で、物件を見学すると1回あたり600円がかかる。一般的な不動産賃貸仲介では、物件の家賃の1カ月分を仲介手数料として支払うケースが多い。利用者の平均利用期間は2.8カ月で、大半が2000円前後の出費で済む点が評判を呼んでいる。
使い方は簡単で、賃料やエリア、間取りなどの希望条件を入力しておけば、その条件に合う物件がノマドから勝手に提案されてきます。現在の対象地域は東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県で、8万5000人の登録会員、毎月150~200件が成約しているといいます。
2 マンションマーケット
「マンションマーケット」はマンションを保有し住み替えで売却を希望する売主を対象とするマンション売却仲介専門のネット不動産サービスです。既存のマンション取引の仲介手数料は多くの場合「物件価格の3%+6万円(税別)」ですが、マンションマーケットの場合は物件価格を問わず一律49万8,000円です。およそ1,400万円以上の物件ならば、おおむねマンションマーケットの方が仲介手数料が安くなります。
マンションマーケットは「マンションスコア」と呼ぶ、独自に算出した相場情報のデータベースを開発。利用者が自宅マンションの階数や広さ、方位などを入力すると、売却価格を試算してくれる。現在は東京23区、1万3000棟のマンションを対象に同スコアを算出できる。今後はほかのエリアも対象に加える方針だ。
日本の全住宅流通に占める中古住宅のシェアは約14.7%(2013年)に留まっています。近年シェアは高まりつつありますが、欧米諸国の6分の1程度です。マンションマーケットはこれから、日本の中古住宅流通促進に大きなインパクトを与えるのではないでしょうか。
3 ietty(イエッティ)
お部屋探されサイト「ietty(イエッティ)」もノマドと似ていて、希望条件を書き込んでおけば、その条件にあった物件を紹介してくれます。お部屋探しではなく、お部屋”探され”がコンセプトで、借り手が希望条件を登録しておくだけで、不動産営業マンが最適の物件を探して向こうから提案してくれます。ノマドが仲介手数料を無料にしてロボット的に情報を提供してくれるのに対して、実際の不動産屋さんの営業マンがデータベースの中から物件をキュレーションして紹介してくれる点が特徴で、良く言えばより人間味がある、悪く言えば雑多な情報も混じりがちと言えるでしょう。どちらのサービスが馴染むかは、人によって違いそうです。
iettyは引っ越しを考えるユーザが転居希望地域や家賃価格、内見希望日などを書き込むだけで、同社が提携する約100社の不動産仲介業者からユーザの条件に合った物件を次々に提案してくれる仕組みだ。
4 ヤフーとソニー不動産の業務・資本提携「不動産売買プラットフォーム」
最後はビッグネーム同士の業務・資本提携。今年7月に、日本最大級のインターネット・メディア企業のヤフーと不動産の売買仲介、賃貸管理などの業務を行うソニー不動産が組むことを発表しました。ヤフーのプレスリリースによると、「日本国内の中古住宅流通市場とリフォーム・リノベーション市場の活性化に向けて業務提携契約を締結」と書いてあります。そしてその最初の取り組みが現在、共同開発中で2015年中に公開予定の「不動産売買プラットフォーム」です。
この新規不動産売買プラットフォームを通じて、不動産所有者は<自分のマンションを、自分が決めた価格で、自分で売り出す>ことができるようになるため、不動産売却方法の選択肢が新たに広がります。
ただし、「不動産売買プラットフォーム」がソニー不動産以外の事業者にも開放されるかどうかや、現行法上では不動産取引のほとんどは宅建業法に基づく不動産事業者が仲介するので個人間で不動産売買がどこまで可能なのか、などという点が今後の課題だと思います。
不動産事業とインターネットの未来
不動産業界の大きな問題として、一般ユーザーと不動産事業者との間の情報の非対称性・格差がたびたび挙げられます。今回ご紹介した4つのサービスは、広い範囲のなかで、インターネットやテクノロジーの力で限りなく情報の非対称性・格差を解消しようとしているように思えます。一般ユーザーが今よりも物件情報に詳しくなれば(またはアクセスしやすくなれば)、不動産事業のあり方も変化していかざるを得ないでしょう。
一方でインターネットとの親和性を高め、特色ある事業を展開していく可能性は、地域密着した不動産事業者にも開かれています。各地の個性を踏まえた独特な物件情報や、独特な周辺情報をインターネットを活用して提供するといった不動産サービスももっと生まれてくるに違いありません。その一例には「エリアをつくる新しい不動産屋」などが挙げられるでしょう。
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独特な周辺情報をインターネットを通じて提供しようとすれば、自然とオウンドメディアの運営にも行き着きます。これは今回ご紹介した不動産テックのサービスも取り組んでいて、一言で言えば「今までどの不動産屋でも提供してきたサービスを、より効率的で安価に提供するサービス」と、「今まで外部から見えづらかった濃密な情報を、より触れやすくする、今まで以上に地元密着のサービス」と、大きく2つのインターネットの活用可能性があるのかもしれません。
なおMAD Cityでもこういったインターネットを通じた取り組みにはいつも興味関心を向けています。こうしたMAD Cityの取組について、取材や視察でご説明させていただいています。ご希望される方または団体はこちらまで是非ご連絡ください。
著者プロフィール
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funahashi taku
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空き家を魅力的な「まちのコンテンツ」に生まれ変わらせたり、社会的課題解決のツールとして活用したい、そんな観点から書いているブログ「空き家グッド」を運営しています。2015年6月からはMAD Cityのウェブメディア「madcity.jp」に記事をちょくちょく寄稿しています。
http://akiya123.hatenablog.com/
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