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【代表寺井のまちづくり的感想文 】我孫子の名店コ・ビアンと、商店街のダメダメ店舗と
先日、日本テレビ「ぶらり途中下車の旅」でMAD City不動産を取り上げていただいたのですが、同じく放送されていた我孫子「コ・ビアン」に行って来ました。こちらのお店、我孫子駅前の商店街にある超格安レストラン。どんなお店なのかはこちらのレビューでだいたい分かります。
目玉メニューのチキンカツ定食290円は「開店40周年記念メニュー」で今だけかなと思ったのですが、実は2013年で開店47年目らしく、開店40周年記念メニューが8年間続いて常態化しているようです……。凄すぎます。
そういうわけでコ・ビアン、こんなお店があれば商店街も捨てたものじゃない、と思わせてくれるお店でした。松屋や吉野家みたいなチェーン店と戦っても、コ・ビアンなら間違いなく勝てます。それって奇跡みたいですよね。商店街といえば多くの方も想像できるように、開いているのか閉まっているのか分からないような、いわゆるダメな店ばかりだと思われているはずです。ところが、コ・ビアンとダメなお店、まるで天と地ほどに違うお店に見えるけれど、表裏一体みたいな存在なんですね。
なぜか?商店街のダメな個店のことをちょっと考えてみて欲しいんです。店頭のシャッターは開いているけれど、店内にはホコリが溜まった商品とも在庫ともつかないモノが棚に並んでいて、値札もボロボロ、店番もいない。そういうお店って成り立ってるのか、不思議に思う人が多いはず。成り立つ理由のポイントは、高齢になった店主がお店の裏か2階に住んでいることです。開店しているように見えるけれど、外出するためや、窓をあける延長で、シャッターが上がっているに過ぎなかったりする。
大雑把なカラクリは何かというと、おそらくこういうお店、店主が物件オーナーなのでまず家賃がかかっていません。ついでに高齢なので、年金生活になっていて生活費もかかっていない。在庫というかゴミに近い商品も、捨てればむしろ処分費がかかるからそのまま棚に置いておくほうが合理的です。つまりお店を開店維持するだけなら、ほとんどお金がかからない。だから今でもそういうお店が商店街にあるわけですが、逆にいうと彼らは超リスクヘッジされた事業者でもあるわけです。
料理のクオリティではチェーン店より上、価格はチェーン店より安い、奇跡的なコ・ビアンですが、店の裏に回ってチェックしてみると、店主が上に住んでいました。駅前ながら、土地から建物まで店主がオーナーのはずです。そして開店47年だから店主は高齢者。つまり超リスクヘッジされている商店街の個店が本気を出して価格競争しているのがコ・ビアン。商店街のローカル個店でも、全国屈指のチェーン店より安くて美味い人気店になれるってことをコ・ビアンは示しているように思います。
ウチの街にコ・ビアンを誘致したい、なんて意見がありそうですが、それは無理というもの。なぜなら、コ・ビアンの店主が高齢者でオーナーであることが強みの本質なのですから。しかし、ダメだダメだと言われている商店街だって、何かのキッカケで超名店の集積地になる可能性はあるわけです。高齢の商店主が目覚めて自ら動き出すというのはこれまた難しいでしょうが……。けっきょく僕が考えるのは松戸駅前、MAD Cityで何をどうしたらいいんだろうってことですが、そんなことを考えながらMAD Cityの飲食店のことを思い浮かべたりしました。
https://madcity.jp/2012/12/madcitylunch/
寺井元一
てらい・もとかず●まちづクリエイティブ代表。千葉・松戸での「MAD Cityプロジェクト」にてクリエイティブなまちづくりを提唱している。
個性派物件を提供してコミュニティをデザインする「MAD City不動産」、地元コミュニティを活性化する「松戸まちづくり会議」支援などの事業を運営中。https://madcity.jp/
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